開幕が間近に迫ったNFL。New Englandでは最後のロースターカットでMonty Beisel、Chad Brown、Eric Warfield、Dan Klecko、Guss Scottらが相次いで解雇。Patrick CobbsはPittsburghへトレードされ、逆にOaklandからDoug Gabrielがやって来た。問題となっていたBranchのトレードについては期限までに成立しなかったとチームは発表。Branch側は不満を述べているようだが、現時点で彼は依然New Englandの選手である。
他チームではIndianapolisのVinatierが軸足を骨折していたという話が出ている。彼の母親が明らかにしたようで、Indyにとっては頭の痛い話。某所では「Belichickの部屋にあるヴードゥー教の呪いの人形を探せ」という話題が妙に盛り上がっている。Oaklandは月曜日に雇ったJeff Georgeを土曜日に解雇。予想通りではあるがこれまた一部でお祭り騒ぎになっている。
さて、Pro Football Prospectusについて続きを。今回の記事の中である意味最も面白かったのは、QBについて大学時代の成績から「プロでの成功可能性」を推測するというものだ。QBの指名は難しく、特にドラフト1巡では大当たりもあれば大外れもあるというのが一般的な認識。BaltimoreのBillickもそう言っている。だが、この記事では「むしろQBの方がOLなどより選びやすい」と主張しているのだ。
そのためのやり方として、記事ではまずQBの成功度を測定。具体的には1試合当たりのDPAR("http://www.footballoutsiders.com/methods.php"参照)がどれだけ控え選手レベルを上回っているかで判断している。1997年以降にドラフト上位(1巡と2巡)で指名されたQBを対象にこの成功度を出し、大学通算での様々な記録とどの程度の関連性があるかを調べた。そして出た結論は「先発試合数とパス成功率」。大学時代にこの二つの数値が高いQBほど、NFLで成功しているという。
実際に紹介されている23人のQBについて、成功度との相関関係を調べてみた。まず先発試合数とNFLでの成功度のコリレーションは0.711。確かにかなり高い。次にパス成功率とのコリレーションを見るとこちらは0.537だ。記事ではしばしば大学によって成功率に大きな差があること(ショートパス好きな大学とランオフェンス中心の大学ではQBのパス成功率はかなり違う)を指摘しており、それも含めて考えるなら0.537というコリレーションは結構高い。
他の指標はどうだろう。たとえば平均獲得ヤードだが、実は-0.016しかない。ほぼゼロ、つまり大学でのパス平均獲得ヤードとNFLでの成功との間には何の関係もないのだ。NFLにおいてはBud GoodeのKiller Statsなどで取り上げられるように重用視されている指標だが、大学生の将来を占ううえでは当てにならないスタッツである。記事中では「レシーバーのYAC能力などで左右されるため、QBの実力を図るには適当でない」と指摘している。
では、TD数やint数は? 生の数値で調べるとTD数とのコリレーションは0.635とかなり高い。だが、実はint数も0.529。つまり大学での被インターセプト数とNFLでの成功度の間には正の相関関係があることになる。インターセプトをされればされるほどNFLで成功する、という結論になりかねないのだ。もちろんそんなことがある訳はない。生のTD数とint数は出場試合数が増えれば積み上がる。コリレーションの大半は試合数の多さで説明できてしまうのだ。
従ってTDやintについては数でなく率で調べた方が適当。といっても記事には率が載っていない。ネットで調べようと思っても、大学時代のスタッツは見つけ出すのすら困難なものが多い。仕方ないのでTD数とint数を先発試合数で割って調べてみた。大ざっぱに1試合当たりどの程度のTDとintを記録しているかを見たのだが、それとプロでの成功度との相関関係はTDで-0.023、intで-0.002。どちらもほぼゼロと言っていい。TD数やint数はQBの将来の成功を図る上では何の目安にもならないと考えた方がいいだろう。
以上を前提に、記事ではルーキーや若手QBの将来の成功可能性を推測している。それによるとパッサーとしてもっとも成功すると期待されるのはSan DiegoのPhilip Rivers。大学で51試合に先発し、パス成功率63.5%を記録したのが理由で、Breesを大きく上回る実績を上げるのではないかと見られている。Matt LeinartやJason Campbellに対する評価も高い(ケガする前のPenningtonより少し低い程度)。逆にbustになりそうなのはMarques TuiasosopoとJ.P. Losman。AFC東と西はしばらく地区内に楽なチームを抱えることになる。
面白い評価を下しているのがVince Young。パッサーとしてもそれなりに優秀(Brees並み)だが、むしろランの部分で過去のNFLQBにはない実績を残すのではないかという指摘だ。何しろYoungの大学時代のラン記録は1試合平均85ヤード。Vickが60ヤードだったというから、その実力のすごさはよく分かる。とはいえ、遙か昔のSingle-Wing時代はともかく現代NFLで「走るQB」が成功したという事例は聞かない。Youngが例外になれるのかはこれから見定めなければならないだろう。
ドラフト上位QBの中で、記事中の推計と実績いずれもトップクラス(1ゲームあたり6DPR以上)に達したQBはPeyton Manning、Ben Roethlisberger、ケガする前のChad Penningtonの3人。予想より高い実績をたたき出してトップクラス入りしているのがCarson Palmer、若手の中でトップクラス入りが期待されているのがRivers、Leinart、Campbellだ。Penningtonを除いて中身を見るとAFCに4人、NFCに2人。ドラフト上位以外のQBではTom Bradyの成功度がそこそこ高い(5.58DPR/G)のだが、それを含めてもAFCが5人、NFCが2人。まだまだAFCの方にパワーハウスが集中する傾向は続きそうだ。
また、こういった手掛かりがあるとカレッジフットボールを見る楽しみも増えそう。現在、カレッジのQBで最も注目を集めているのはNotre DameのBrady Quinnだが、彼の大学3年生までの記録を見ると先発試合数は(おそらく)33試合、パス成功率は56.4%。今シーズン、ボウルゲームを含めて12試合先発すれば大学4年で45試合となり、プロQB候補として十分な実績を積んだことになる。問題はパス成功率。もし3年生での累計と同じ水準にとどまった場合、その数値はちと低すぎる。過去の例に従うなら、最悪Cade McNown(43試合、55.5%)、良くてDonovan McNabb(45試合、58.4%)といったレベル。リーグ屈指のQBにはなり得ない。Manning(45試合、62.5%)レベルになるには今年77%のパス成功率を達成する必要があるが、それはさすがに無理だろう。1巡トップで指名するほどのQBではなさそうな気がする。
そのQuinnの今シーズン開幕戦はパス成功率約60%。危うくアップセットを食らうところだったがどうにか逆転勝利した。QuinnにとってManningへの道は遠そうだ。
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