Alexandre MikaberitzeのThe Battle of the Berezina"
http://www.amazon.co.jp/dp/1844159205 "を読んでいる真っ最中なのだが、気になる記述を発見した。ヴィスツラ・レギオン所属のブラントが回想録の中でベレジナ河畔に集まった帝国司令部の面々について触れている部分だ。Mikaberitzeの英語を翻訳してみると以下のようになる。
「その赤らんだ容貌(reddish features)と精力的な物腰から簡単に見分けがつくネイは、深緑色の外套を羽織っていた」 p148
featuresは顔立ちとか外観などとも翻訳されるが、このMikaberitzeの英訳を見るとブラントは「ネイの(髪ではなく)顔が赤い」と述べているように見える。実際にブラントがそう言っているとすれば、ネイの「顔の赤さ」を特徴と見ていた兵士が存在していたことになりそうだ。だが、本当にそうか。
ブラントの回想録Souvenirs d'un officier polonaisの原文はこちら"
http://www.archive.org/details/souvenirsdunoff00brangoog "で読むことができる。同書p318にある該当部分を見ると、そこにあるフランス語はfavoris roussâtresというもの。さて、これをMikaberitzeのようにreddish featuresと翻訳していいのだろうか。
いくつかの翻訳サイトではreddish favouritesとかrusset favouritesといった意味不明な翻訳しか出てこないが、google language"
http://translate.google.com/ "を使うと以下のような日本語に直すことができる英語になる。
「赤い頬髯(reddish whiskers)のある明るく精力的な姿で簡単に見分けがつくネイは、深緑色の外套のようなものを羽織っていた」
featuresではなくwhiskers、つまりヒゲだ。他にも同じ翻訳をするサイトはあり、例えばこちら"
http://dictionary.reverso.net/ "でfavorisを英訳すればfavoritesと並んでwhiskersも出てくる。逆にfeaturesという訳語はない。つまりブラントはネイの姿を「赤い顔」ではなく「赤い頬髯」で見分けていたのである。
Mikaberitzeはグルジア出身であり、おそらく英語もフランス語も母語ではない。それにしては上手い英語で文章を書いているのだから凄いものだと感心するが、とはいえ母語でない言語を使っているのだから間違いもあるだろう。とりあえず、ブラントが言及していたのはネイの顔ではなくヒゲだと考えた方が妥当であろう。
スポンサーサイト
コメント