ミニマム・サクセス

 ikarosのセイル展開成功宣言が来た"http://www.jaxa.jp/press/2010/06/20100611_ikaros_j.html"。2つ目の写真が2次展開後のもの。ほぼ真横から見ているため今一つ距離感が掴みにくいが、最も遠い先端マスまでは10メートルの距離があるはずだ。深宇宙で展開に成功したソーラーセイルは多分世界初だろう。さらに薄膜太陽電池による発電も確認し、これでミニマム・サクセス達成だ。Congrats! (実際の成功は6月9日"http://twitpic.com/1vovww")
 ソーラーセイルに関する日本のライバルはNASAではなく、NPOのThe Planetary Societyである。ikarosよりずっと前にこの組織は2回のソーラーセイル打ち上げを試みている。残念ながらどちらもロケットの不具合により失敗に終わっているため、結果的にikarosが先んじることになった。The Planetary Societyでは年内にもライトセイル1号"http://www.jspec.jaxa.jp/ikaros_cam/j/04.html"を打ち上げる予定。
 JAXAに先んじられたからといって、別にThe Planetary Societyがそれを妬んでいる訳ではない。妬むどころか、同組織のサイト"http://www.planetary.org/home/"を見ると目立つ場所に馬鹿でかいikarsoの文字が躍っている。The Planetary Societyのblog"http://www.planetary.org/blog/"でもikarosのセイル展開を早々に、かつ熱心に紹介しているほどだ"http://www.planetary.org/blog/article/00002541/"。ikarosとライトセイルは相互応援キャンペーン"http://www.jspec.jaxa.jp/ikaros_cam/j/index.html"も実施している。
 ライトセイルの帆を展開するやり方は正直よく分からないのだが、youtubeではこういう映像"http://www.youtube.com/watch?v=eq2DATxcft0"が見つかる。展開前及び展開後の形状がライトセイルと似ているので、ライトセイルもこの動画のように一気に展開するのかもしれない。2段階の展開手順を踏むikarosよりはシンプルだが、ikarosなみのサイズになるとこういうやり方が通用するのかどうか、少し疑問も感じる。
 
 ちなみにThe Planetary Societyのblogにはソーラーセイル以外の宇宙関連の情報も載っている。当然はやぶさの記事"http://www.planetary.org/blog/article/00002539/"もあり、NHKがドキュメンタリーを流したことまでが紹介されている。
 だが、はやぶさ関連ではNASAの方が(日本以外では)盛り上がっている。何しろはやぶさの突入にあわせて飛行機を飛ばして観測しようとしているくらいだ"http://airborne.seti.org/hayabusa/NASApr.pdf"。NASAのジェット推進研究所が出しているリリース"http://www.jpl.nasa.gov/news/news.cfm?release=2010-194&cid=release_2010-194"ではさらに熱のこもった書きぶりだ。ネットでは日本語訳"http://moonstation.jp/ja/blog/index.php?itemid=256"も読める。
 あるライターがtwitterで紹介しているインタビュー"http://twitter.com/kitamitsunari"によると、プロジェクトマネジャー曰く「NASAはすごい体制で協力をしてくれている」のだとか。はやぶさをトラッキングしているアンテナはJAXAより多いそうで、突入の瞬間には飛ばした飛行機のカメラを使ったネットでのライブ中継"http://airborne.seti.org/hayabusa/"までやるつもりらしい。当日は日本からのアクセスが集中するかもしれんな。
 
 それにしても、あくまで偶然だとは思うが、宇宙関連のイベントが集中している。おまけに本日6月11日は1年前にかぐやが月に制御落下した日でもある"http://www.kaguya.jaxa.jp/ja/communication/KAGUYA_Lunar_Impact_j.htm"。たった1年の間を置いてikarosのセイル展開成功が発表され、それから2日後にはやぶさが帰還する。SF好きとしては感に堪えない。
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コメント

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tor**ha01
とはいえ、宇宙開発に必要な基礎研究の予算は現政権が大量に仕分けていますから、今後の発展がどこまで望めるかは不透明なのですよね……

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desaixjp
はやぶさ一つとっても分かるように、宇宙開発は計画の初動から終了までかなり長期にわたる事業です。たかが1年程度の予算動向だけでそんなに心配する必要があるのかどうか、私には疑問です。この状態が10年続くとなれば話は別ですが。
あと、念のために言っておくなら日本は民主政の国です。有権者(納税者)が宇宙開発はいらないと判断すればそれまでです。

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tor**ha01
いや、仕分けって事業主体そのものをカットするんじゃありませんでしたっけ? 予算削減も基本的には継続的な措置のはずですが。
科学の分野で基礎研究が1年止まったらかなりのビハインドだと思いますが、それが3年続いたらどんなことになるか……。
それと、納税者は判断しようにも基本的に事業仕分けの詳細自体周知されていませんから。調べる気になってある程度掘り下げないと、仕分けの詳細なんてわかりません。こういう部分をフォローするのが報道の役割だと思うのですが、仕分けパフォーマンスを持ち上げるだけで、その内容を精査して評価した報道は見たことないですね。

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desaixjp
1年で云々というのは言いすぎでしたかね。その部分は取り消します。ただ、郵政民営化がひっくり返されそうになっている現状を見る限り、この国の方向性がそう簡単に変わるとは思えません。4年後に政権が変わればまた話がひっくり返ることがあり得ます。ソ連の衛星打ち上げから50年以上経てなお衛星打ち上げ能力を持つ国数が1桁である点を見ても、4年程度で現状が大きく変わることはなさそうに思えます。
基礎研究の遅れ云々については、専門家なら具体的に評価できるのでしょうが私にはその能力がないので何とも言えません。不安を煽るのも、逆に問題なしと決め付けるのも、私にはできません。
納税者の判断ってのは要するに「文句があるなら選挙で勝て」ってことです。昨年の総選挙は民主支持というより自民批判の結果だと思いますが、民主政なら多数は正義です。事業仕分けが気に食わないなら4年後の捲土重来を期しましょう。
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