デュマ将軍を主人公にした小説「黒い悪魔」の一部を少し立ち読みしていたのだが、その中にイタリア遠征時に彼がスパイを捕らえた話が載っていた。スパイから得た情報はほぼ大デュマが書いている通り。当然、例の追伸"
http://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/41322005.html"の話もある。フィクションなので別に問題はないのだが、少し気になったのがその文言だ。正確には憶えていないが、「移動は13日か14日まで始まらない」と書いてあった。
あれ、と思ったのは、この言い回しがデュマ回想録本文ではなくGallaherの"General Alexandre Dumas"に見られるものであること。確かにGallaherは「my movement will not begin until January 13 or 14」(p77)書いているのだが、デュマの原文(Mes Mémoires, 1"
http://books.google.com/books?id=6ycJAAAAQAAJ"のp227)で使われているferai(faire)は英語にすればmakeとかdoに相当する、というのが一般的なネット上の仏英辞書の説明。実際、20世紀初頭に出版された同回想録の英訳本では「the next action I am arranging will take place on the 13th or 14th January」("
http://books.google.com/books?id=y5JcAAAAMAAJ"のp89)となっている。
つまり普通に「○日に行う」とすればいいものを、Gallaherは敢えて「○日まで始まらない」と訳しているのだ、彼の訳し方がかなり変化球であることは間違いないだろう。少なくとも直訳とは言えない。なのになぜか小説「黒い悪魔」ではこのGallaherと同じ文章を載せている。なぜか。以下は私の想像だが、もしかしたら小説の元ネタは大デュマの回想録そのものではなく、このGallaherの本だったのではないだろうか。だからどうしたと言われると困るんだが。
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