フランス軍が~洞窟に入る~

 Victoires, conquêtes, désastres, revers et guerres civiles des Françaisという長い名前の本がある。その英訳をNafzigerがWars of the French Revolutionという題名で出版している(といっても実際はただのコピー本だが)。
 同書第3巻に、フランス軍によるマーストリヒト要塞攻略の場面がある。その中に、要塞の下を通る洞窟の話が紹介されていた。洞窟自体は自然のものだったようだが、要塞内につながっているということで一時は両軍がその活用を考えたそうだ。そして、要塞を包囲しているフランス軍がそこの探検を試みた。
 
「好奇心と、そして何よりフランス人にとっては自然な感情である冒険を愛する心から、約60人の工兵と志願者がこの未知の洞窟を探検することを決意し、暗闇の中を入り口から150トワーズ[約290メートル]以上奥へと進んだ。洞窟の奥から聞こえてきた大きな騒音を彼らは守備隊のものだと信じ、要塞へと通じる道がまだあると考えた。熱意に燃える彼らは、要塞の中に入らない限り二度と日の目を見ないと決意した。彼らはさらに前へ進んだ。騒音はさらに大きくなり、彼らは銃剣を構えて前進した。だが、敵を発見する代わりに彼らが見つけたのは、驚くべきことに住民が洞窟に隠していた数多くの豚の群れだった。熱意が冷め、笑いが湧き起こった。彼らは家畜を宿営地まで追い立てた。この勇者たちは洞窟の中で、捜し求めた栄光ではなく、探していなかった豊富な食料を発見してしまったのだ」
Wars of the French Revolution, Volume3, p119
 
 この話は工兵のマレスコ将軍が書いた報告書に記されていたそうだ。戦争になると家畜を連れて逃げ出すという話はよく聞くが、逃げる先としては山とか森が一般的。しかし洞窟という選択肢も実はあったことが分かる。したたかに生き延びようとした住民の創意工夫が窺える話だ。
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