ドラフト年次と成績

 日記ならぬ週記である。
 
 Liar Gameでは華々しい裏切りが発生。さらに再投票という、どっかの国の大統領選みたいな展開になってきた。共闘関係がご破算になったことで、改めて三国志的展開に持ち込まれることになるのだろうか。再びガヤの存在がクローズアップされるのかもしれない。
 
 NFLはドラフト前に静かな時期が続いているようだ。というわけでドラフトネタの続きといこう。前回はFootball Outsiders"http://www.footballoutsiders.com/"のスタッツを使って「どのドラフト年次のQBが優秀か」について調べてみた。ただし対象が1993年以降に限られており、例えば有名な1983年組(Kelly、Elway、Marinoという3人の殿堂入り選手を生み出している)がどの程度優秀なのかは調べ切れていなかった。そこで、今回はもう少し伝統的なスタッツを使ってもっと過去に遡った分析をしてみたい。
 使うスタッツはQBレーティング。ただそれだけだと安易なので、サックのデータも含んだ「修正レーティング」を使用する。つまり分母を「パス試投+サック回数」、分子の距離を「パスヤード-サックヤード」に変えるのだ。BradyとCasselのように同じOLの背後にいてもサック数が大きく変わる事例が存在するのを見ても、サックは単にOLの責任ではなくQBによって変化が出るものだと考えられる。つまりサックをかわすのもQBの能力に属するという判断だ。サックはオフェンスがパスプレイをしようとしている時に生じることを考えても、パスの一種として処理すべきだろう。
 この結果、通常のレーティングに比べて修正レーティングは低めの数字になる。例えば2009シーズンのリーグ全体のレーティングは82.97だが、修正レーティングは76.44だ。当然、個別のQBの成績も一般的なレーティングとは違うので注意が必要。
 もう一つ重要なのは、年によってレーティングは大幅に変化していること。サックの個人記録がつけられるようになったのは1969年からなので修正レーティングもそれ以降しか存在しないのだが、最も低かった1977年(52.86)と最近の記録とでは20以上もの差がある。個人のレーティングを出す際に、こうした時代の違いを考慮に入れなければ不公平だろう。
 実際にドラフトQBの年次別成績を出すうえでは(1)まずある年にドラフトされたQBの通算修正レーティングを算出(2)それを当該QBがプレイした時期(ドラフトされた年から最後に現役でプレイした年まで)のリーグ全体の修正レーティングと比較(3)その年次のQB全体について加重平均を算出――というやり方で計算する。QBが現役だった時期のリーグ全体に比べて何%ほど上回る/下回る修正レーティングを残したかで、そのQBの能力を測るわけだ。
 以上の計算方法で1969年から2009年までの41年分について年次別QB能力を算出した。その結果を発表しよう。まずは4位から10位まで。左から年次、リーグ平均を上回った率、そしてその年の代表的なQBの名前だ。
 
1984 6.36% Young, Esiason, Hostetler
1991 6.30% Favre
1979 5.64% Montana, Simms
1973 4.19% Fouts, Jones, Jaworski
2004 3.87% Rivers, Schaub, Roethlisberger
1978 0.48% Kenney, Williams
1999 0.04% McNabb, Culpepper
 
 前回の分析で「平凡な年次」と書いた99年組だが、これを見る限り決して平凡ではない。少なくとも41ある年次の中で10位に入ったのだから、実は優秀な方だったということになるのだろう。もっとも数値自体はほぼリーグ平均並みなので、それだけ見るなら「平凡」という評価も間違いではない。
 78年組というのはおそらく誰にとっても予想外のランク入りだ。というかSuper Bowlで勝ったWilliamsはともかくも、Kenneyって誰? Oh my God! They killed Kenny! You bastard! のケニーでないことは確かだが。真面目に言うと、Bill Kenneyは1980年から88年までKansas CityにいたQBなのだが、年間フルに先発した年は1年しかない選手。だが、なぜか修正レーティングはリーグ平均を6%近く上回っている。
 04年組は想定通り。この年次は今後さらに順位が上昇する可能性も高い。73年組は殿堂入りこそFoutsくらいしか見当たらないが、実はBert Jonesなど隠れた有能QBがいた年だ。MontanaとSimmsが並ぶ79年組、YoungやEsiasonがいる84年組が上位に来るのはまだそれほどの違和感はないが(実は結構おかしな話なのだが)最大の問題は91年組。見れば分かる通り、実際はこれは「組」ではなくFavre1人の成績を映したものである。このあたりの問題については後に述べる。
 続いて3位。
 
1998 8.51% Manning, Hasselbeck, Griese
 
 ManningとはもちろんPeytonのことであり、GrieseはBrianだ。この順位についても違和感を感じておいてほしいところ。そして2位。
 
1983 8.59% Marino, Kelly, Elway, O'Brien, Eason
 
 ここに「花の83年組」がやって来る。3人もの殿堂入り選手を生み出しているのに、彼らはトップではないのだ。ではこの83年組を抑えて「NFLで最も優秀なQBたちがドラフトされた年次」は何年なのか。いよいよトップの発表である(ドラムロール)。
 
2000 9.23% Brady, Pennington, Bulger, Rattay
 
 何じゃこりゃあ、と松田優作ばりに叫んだ人もいるかもしれない。私は叫んだ。確かに00年組にはBradyというかなり優秀なQBと、Penningtonというあまりそういう印象はないが実は結構優秀なQBがいる。でも、彼らが現時点でMarino、Kelly、Elwayを上回る年次だと言われて、はいそうですかと素直に頷けるだろうか。無理だろう。
 なぜこうなるかというと、要するに「平均」を算出しているためである。まず、分母となるQBのプレイ回数が少ないところは、それだけ高い数字が出やすい。典型例が78年組で、WilliamsとKenney以外のQBのプレイ回数がやたらと少なかったため、彼ら2人の成績が大きく反映された。もっと極端なのは91年組。Favreのプレイ回数(パス試投+サック)が1万回強なのに対し、彼以外の8人のQBは皆3桁以下のプレイ回数しかない。91年組ほぼイコールFavreになっているのだ。
 平均で見る場合、突出して有能なQBがいると数字が跳ね上がるという傾向もある。Manningのいる98年組、Montanaの79年組がその代表例で、この2つの年次では彼らの成績が全体を思い切り引っ張り上げている。91年組と同様、実はこれらの年次も「組」と称するのは難しいのが実態だ。QBの実績はパスの効率性を示すレーティングの平均だけでは測れない。長期にわたって先発としてプレイし続けるといった「積み重ね」の部分も見なければならないわけだ。
 積み重ねの一例として、同年次のQBのプレイ回数(パス試投+サック)の累計を見る手もある。するとトップは堂々83年組(29374回)が出てくるではないか。よかったよかった、と言いたいところだが、そうは問屋がおろさない。この順位だと2番手に87年組が入ってきてしまうのだが、この年次で目立つ選手はTestaverde、Gannon、Harbaugh、Beuerleinなど。2番手に入るにはあまりに地味ではないか。レーティング的にはGannon以外は全然たいしたことないし、要するにジャーニーマンが揃っているだけの年次である。他にもBledsoe、Brunell、Trent Greenらの93年組が4位に入ってしまったりする。
 
 というわけであまり上手い「QB年次別ランキング」は思い浮かばなかった。ただ、「累計」と「平均」両方で極めて高い位置にいる83年組がかなり優れた年次であることは間違いない。やはり83年がQB大当たりの年であったことは間違いないようだ。
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