しばらく前のFootball Outsidersに興味深い記事が載っていた。こちら"http://www.footballoutsiders.com/2006/08/10/ramblings/stat-analysis/4059/"がそう。簡単に言えば「パントはしない方が有利」という主張だ。
なぜそう言えるのか。基本的に著者は「パントもターンオーバーの一種」という発想を根っこに思考を進めている。その上でまず、パントもターンオーバーと解釈した場合の「修正ターンオーバーレシオ」と勝敗との関連性を調べている。その相関性は0.834。これは確かに高い。あのKiller Statsですら0.7前後なのだから、かなり相関関係は高いと見ていいだろう。
つまり、パントを含めたターンオーバーを減らせば、それだけ勝利に結びつく可能性が高まるということ。とはいえインターセプトやファンブルは意図して減らせるものでもない。それに対し、パントは減らすことができる。極端に言えばゼロにすることだって可能。あらゆるケースにおいて4th dowm gambleをすればいいのだ。
その場合に有利なことが一つある。通常のやり方だと、オフェンスは3rd downで何とかFD更新を図ろうとする。しかし、いつでも4th down gambleをするのなら、3rd downでは無理にFDを狙う必要がなくなるのだ。少しでも距離を進んで4th downを取りやすくするという選択肢も出てくる。そしてオフェンスの選択肢が増えるということはディフェンスにとってそれだけ守りにくくなることも意味する。
もちろん、不利な面もある。ダウン更新に失敗すれば危険な陣地で相手にオフェンスを与えてしまう可能性が出てくる。パントをせず、修正ターンオーバーレシオを下げるメリットを追求するか、それとも陣地の方を重視するか。著者はややこしい計算をしているが、その結果は「パントしない方が有利」というもの。具体的に言えば、普通にパントすると得点と失点の期待値はいずれも21.4952だが、味方だけがパントせず敵がパントした場合は得点が27.0352に対し、失点は25.899になるという。
要するに結論としては「多少陣地で不利に陥るとしても、ドライブが途切れない可能性が高まる方が望ましい」ということだ。似たような結論はこちら"http://www.footballcommentary.com/goforittables.htm"でも指摘している(さすがに全部パントしろとは言っていないが、従来よりももっと大胆に4th down gambleをすべきだとしている)。
おそらく、現実のNFLにおけるパント戦術は、スタッツ分析から導き出される最適な戦術よりも保守的に過ぎるのだろう。とはいえ、それではそう簡単にギャンブルをやれるかというと、おそらくそうは行かない。少なくとも、今シーズンからいきなりパントをしないチームが出てくるようなことはあり得ないだろう。理屈がどうであっても今までのやり方というのはすぐには変わらないものだ。
だが、長い時間では変化があるかもしれない。実は昔のNFLでは今よりも早いタイミングで(つまり4th downより前で)パントを蹴るのが珍しくなかったという。戦前のNFLでは現在よりも陣地を重視する度合いが高かったのだろう。しかし、今では自陣エンドゾーン手前でも3rd downまでは普通にプレイするのが当たり前になっている。時代とともに常識が変化したのだ。従って、遠い将来には4th down gambleが珍しくなくなる可能性はある。
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