働け働け

 以前、QBについて歴史を振り返りながら記してみた。で、今回はRBを見てみよう。できれば普通は取り上げないような指標に注目したい、ということで1試合の平均キャリー数に注目してみた。
 RBが馬車馬のように働かされるようになったのは1970年代以降だ。昔のNFLはそうではなかったことが数値で裏付けられる。1960年代以前のRBのうち、あるシーズンに1試合平均20キャリー以上を記録したことがある選手は延べ11人しかいない。しかもそのうち「延べ6人」分はたった一人のRBが記録している。

1937 Cliff Battles  10 216 21.6 874 Washington Redskins    48.0%
1944 John Grigas   9 185 20.6 610 Chicago-Pittsburgh Carpets 51.4%
1949 Steve Van Buren 12 263 21.9 1146 Philadelphia Eagles    41.6%
1951 Eddie Price   12 271 22.6 971 New York Giants      55.2%
1958 Jim Brown    12 257 21.4 1527 Cleveland Browns      54.1%
1959 Jim Brown    12 290 24.2 1329 Cleveland Browns      63.5%
1961 Jim Brown    14 305 21.8 1408 Cleveland Browns      64.1%
1963 Jim Brown    14 291 20.8 1863 Cleveland Browns      63.3%
1964 Jim Brown    14 280 20.0 1446 Cleveland Browns      64.4%
1965 Jim Brown    14 289 20.6 1544 Cleveland Browns      60.7%
1966 Jim Nance    14 299 21.4 1458 Boston Patriots      63.5%

 データは左から年、RB、出場試合数、キャリー数、1試合平均キャリー数、所属チーム、チームのランプレイに占める当該RBの割合。見ての通り、その過半数はJim Brownの記録である。1試合平均20キャリー以上を複数シーズン続けることができたのは彼だけであり、他の選手は最盛期の1シーズンのみ記録してその後は二度と達成できなくなったことが分かる。
 公式記録のなかった1931年以前については確定的なことは言えないが、分かる範囲で1試合20キャリー以上の選手はいない。32年以降についてもごらんの通り。特に1930年代は今よりもランプレイの多い時代だったが、それを担う選手は一人だけではなかったのだ。
 だが、70年代以降になると平均20キャリーを越える選手が増えてくる。O.J. SimpsonやWalter Paytonといった一流選手たちが複数シーズンで20キャリーを越えるようになり、1シーズンに複数のRBが20キャリーを越えるのも珍しくなくなった。2005年には11人もの選手が20キャリーを越えている。

2005 Edjerrin James   15 360 24.0 1506 Indianapolis Colts  77.4%
2005 Shaun Alexander   16 370 23.1 1880 Seattle Seahawks   71.3%
2005 Tiki Barber     16 357 22.3 1860 New York Giants   76.1%
2005 Clinton Portis   16 352 22.0 1516 Washington Redskins 67.0%
2005 LaDainien Tomlinson 16 339 21.2 1462 San Diego Chargers  72.9%
2005 Rudi Johnson    16 337 21.1 1458 Cincinnati Bengals  73.4%
2005 Larry Johnson    16 336 21.0 1750 Kansas City Chiefs  64.6%
2005 Thomas Jones    15 314 20.9 1335 Chicago Bears    64.3%
2005 Domanick Davis   11 230 20.9 976 Houston Texans    52.6%
2005 Cadillac Williams  14 290 20.7 1178 Tampa Bay Buccaneers 63.5%
2005 Willis McGahee   16 325 20.3 1247 Buffalo Bills    75.9%

 チーム内のランプレイを担う比率も極めて高く、11人中6人は7割以上に達している。60年代以前にはあのJim Brownですらチームのランオフェンスの3分の2までしか担えなかったのに、今では4分の3を担うRBが毎年複数出てくるようになっているのである。それだけランプレイが特定の選手に集中するようになったとも言える。
 トレーニング法やスポーツ医学の発達が理由の一つだろう。以前ならJim Brownのような特別な選手でなければ持ちこたえられなかったような酷使をされても、なお十分にプレイできる選手が増えている。怪我から復帰してきた経験を持つRBも多く、おそらく選手寿命も延びているのだろう。それでも1シーズン370キャリーを越えると危険だということはFootball Outsiders"http://www.footballoutsiders.com/ramblings.php?p=236&cat=11"などで指摘されている。
 もう一つ、昔と今のアメフトの違いも如実に分かる。昔はRBは入れ替えながら使うのが当たり前だった。そもそも専門職的RBのいなかったシングルウイング時代(1940年代以前)も、その後のTフォーメーション時代も同じ。今のようにほぼ毎プレイ、エースRBがバックフィールドで待ち構えているようになったのはそれほど古い時期のことではないのだ。
 個人のスタッツに関心を抱くファンにとってはいい時代と言えるだろう。派手な獲得ヤードをたたき出す選手は毎年のように現れる。ただ、チームスポーツとして考えるとこれがいい結果につながっているかどうかは不明だ。リーディングラッシャーを輩出したチームが、一部の例外を除いて優勝できないという経験則もある。

スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

トラックバック