コルベルク

 シェヘラザードさんのサイトでも紹介されているが、戦時中にドイツで撮影されたKolbergというプロパガンダ映画をネット上で見ることができる。例えばYoutubeならこちら"http://www.youtube.com/watch?v=cbr6NYRp9z0"。ドイツで撮影されたカラー映画というだけでなかなかにマニアックだが、見ているとどうしても気になって仕方ない部分がいくつか。ワーテルローなど他の映画でも感じるのと同じ違和感があるのだ。
 もちろん映画はフィクションであり、史実と異なるところがあったとしても別に問題はない。面白ければそれでいい、ということは分かっている。でも気になってしまうのは事実。そして、一度気になり始めると、映画としての出来など視野から消え去ってしまうのが悲しいところだ。特に戦闘シーンで違和感を感じると、この手の映画はそればかりが脳裏を占めてしまう。
 何が気になるのか、箇条書きで紹介しておこう。

1)全力疾走の騎兵突撃
 ワーテルローでもあるが、騎兵が敵と接する遥か前から全力疾走しているシーンがある。そのために隊列はバラバラ。軍隊の突撃ではなく、単なる馬賊の襲撃のような状況になっている。もちろん映像的には全力疾走こそ「絵になる」のは確かであり、映画的には正しい撮影なのだろう。でもこの時代の騎兵突撃について知識のある人間が見ると、なんじゃこりゃということになる。

2)空砲であることが丸分かりな砲撃
 砲列を並べて砲撃するシーンがいくつもあるのだが、大砲の反動がほとんどない。明らかに空砲を撃っている。この件についても前に指摘したことがあるが、当時の大砲には駐退機などという洒落たものはついていない。一発撃てば後ろにすっ飛んでいくのが「正しい姿」だ。まあこれは最近の映像作品でもきちんと再現されていない部分なので、1945年のこの作品で再現されていなくても仕方ないのだが、でも気になるのは確かである。

3)帽子
 軍旗などから推測するに、プロイセン軍が筒型軍帽(シャコー)、フランス軍が二角帽(ビコーン)を被っているようだが、果たしてこれでいいのだろうか。この時期はちょうど歩兵の軍帽としてシャコーが本格的に導入され始めた時期。だが、導入のタイミングはプロイセンよりフランスの方が早かった。Etienne-Alexandre BardinのMémorial de l'officier d'infanterie, Tome Second"http://books.google.com/books?id=qbVQTmxqaNwC"のp715には1806年2月25日の布告が掲載されており、「1807年の更新日から歩兵はシャコーを着用する」とある。
 一方プロイセン軍の帽子は、少なくとも1806年10月のイエナの戦いまでは三角帽だった("http://napoleonistyka.atspace.com/Prussian_infantry.htm#prussianinfantryuniforms"参照)。シャコーの導入はフランス軍がシャコーに変えたのを見た後から("http://www.schlossmuseum.de/objekt/objekt1.html")であり、フランス軍より先に変わった訳ではない。実際、映画でもプロイセン歩兵は当初は三角帽を被っている。だが戦闘シーンになるといきなりシャコーに変わるのだ。これまた、どこまで正確な描写なのか疑問を感じる部分である。

4)隊列
 フランス軍が隊列を組んで前進してくるシーンがあるのだが、この隊列が正面&奥行きそれぞれ10人程度という、実に意味不明な隊形だ。例えば600人程度の大隊縦隊なら正面50人&奥行き12人くらいになるし、横隊なら正面200人&奥行き3人という細長い隊形になる筈。映画に出てくるあの隊形は一体何なのだろうか、気になって夜も眠れない。

5)砲弾
 大砲から撃ち出される砲弾の大半が、着弾して爆発する榴弾ばかり。これまたワーテルローでもよく見られるシーンなのだが、実際にこの時代に最もよく使われたのは榴弾ではなく砲丸、つまり単なる金属の塊だ。もちろん、砲丸は着弾しても爆発することなどあり得ない。猛烈な勢いですっ飛んで進路上にいる兵士たちをなぎ倒す方が描き方としては正しいのだ。もっともこの映画"http://www.youtube.com/watch?v=NRbqzCsPQHo"のようにCGでも使わない限りそんなシーンを描くのは難しい。1945年の映画としてはこれが限界なのだろう。

6)街への砲撃
 砲撃している砲兵がまるで野戦用大砲のように呑気に放列を並べているところも奇妙だ。コルベルクは一応要塞都市なのだから砲撃用の大砲は塹壕に設置されるのが普通だろうに、平行壕も連絡壕も見当たらない。

 とまあ重箱の隅をつついてみた。繰り返すが、こうした疑問点は映画そのものの評価とは無関係の問題だし、Kolbergだけに見られる現象でもない。個人的にはリアリティのあるナポレオン戦争を描いた映画なんてものがあるなら是非とも見てみたいが、おそらく無理だろうな。

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