踊る元帥

 ダヴーと言えば戦っている時以外は部下に小言を言っているかスパイをつるし上げている、というイメージが個人的にはある。もちろん、実際にはそんなことはない。彼も一応、社会生活を営む普通の人間だし、階級の高さもあって社交界で活動すべき局面もあった。そして、舞踏会で踊ることもあったんだそうだ。ザクセンの軍人だったフェルディナント・フォン=フンクの回想録には、ワルシャワにザクセン国王一家が訪れたときの話が紹介されている。

「そして数分後、[ダヴー]元帥は[ザクセン]王女を席から導いた。そしてフランス帝国元帥がザクセン王女のパートナーを務め、カドリールを踊った」
"In the Wake of Napoleon" p230

 ダヴーが王女を誘ったのはあくまで社交辞令だったようだが、それでも王女は2度か3度ほど踊り、席に戻った時にはとても楽しそうだったという。肖像画に見られるあの仏頂面の禿げがきちんと踊るのも驚きだが、相手を満足させているのはさらにビックリ。さすがは不敗の男。

 冗談はさておき、それにしてもフォン=フンクの本を読んでいるといかに当時のザクセン宮廷が旧弊にまみれ、儀礼的行動に縛られていたかがよく分かる。国王自身ですら、それが宮廷の習慣にかなっているかどうかを確認しなければ自由に行動できなかったようだ。その中でフォン=フンクはひたすら悪戦苦闘を繰り広げている。これを読んでいて思い出すのは「すまじきものは宮仕え」という言葉だ。少なくともこの時代のザクセン宮廷で仕事したいと思う人はあまりいないだろうな。

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