新型インフルエンザについて感想でも書こうかと思ったが、それより面白いblogを見つけてしまったのでそれを紹介した方がいいかもしれない。こちら"http://d.hatena.ne.jp/Hash/20090430/1241109755"がそう。今回の新型インフルエンザに関する学術的な知見についてこれでもかこれでもかと書いており、人間が持つ底なしの知識欲を感じさせる素晴らしいサイトだ。
例えばそこで紹介されているInfluenza Genome Sequencing Project"http://www3.niaid.nih.gov/LabsAndResources/resources/mscs/Influenza/"。あらゆる生物に感染したあらゆるインフルエンザのゲノム情報をかき集めているサイトだそうで、もちろん今回の新型インフルエンザに関するページ"http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genomes/FLU/SwineFlu.html"もある。どこで採取された検体で、いつどの組織が調べたかも分かる。もちろんatcgという塩基配列も見ることができる。いやーこりゃすごい。
また、blog主は特定されたアミノ酸配列から構造についてまで調べている。どうやら似たアミノ酸配列を探してスペイン・インフルエンザにまでたどり着いたようだ。とにかく嬉々として取り組んでいる様子が伝わる面白い文章なので、是非ごらんいただきたい。
とまあ、ある意味のんきに構えていられるのも、現在伝えられている情報を見る限り新型インフルエンザが弱毒性と思われるからだ。これがインドネシアなどで猛威を振るっているH5N1だったらみんな蒼白になっているところだろうが、どうも今回のH1N1は季節性インフルエンザ並みの致死率ではなかろうかと見られている。
実際、メキシコ以外ではほとんど死者はいない(米国の死者はメキシコから来た4日後に発病しており、感染地はメキシコと思われる)し、感染者もほとんどは軽症。メキシコでも実は新型インフルエンザに感染していたことが確認されている死者はまだ12人"http://en.wikipedia.org/wiki/2009_swine_flu_outbreak"しかいない。他の死者はあくまで「感染が疑われている」事例だ。
もちろん、人類がこれまで感染したことのないインフルエンザであることは確か。いつ変異を起こすかも分からないし、その点でリスクはある。でも少なくとも現時点では高齢者や小さい子供などを除けばそれほど恐れる必要はなさそう。むしろ弱毒性の間に感染してしまった方が、後で変異して毒性を増した場合に抗体ができているというメリットを受けられる、との意見もあるほどだ。
とはいえ、子供のはしかみたいに早く罹った方がいいと断言できるほど情報が集まっている訳でもない。もっと調べて、その結果が見えてきてから対応を練った方がいいだろう。何しろ南半球はともかく、私の住む北半球ではこれからインフルエンザが流行しにくい季節に突入する。改めて致死率を見定め、さらに変異のリスクも考えながら対策を打っていけばいいのではなかろうか。とにかく慌てる必要はない。落ち着いて、冷静に、情報は幅広く公開しながら、そして情報を受け取る側はその情報に対する理解をきちんと深めながら、対応すべきだろう。
問題は、今の政府が妙に慌てているように見えること(担当大臣が慌てているだけかもしれないが)。去年放映されたNHKのパンデミック関連ドラマでは行政担当者が法律に縛られて何もできない様子が描かれていたが、足元の実際の状況を見るとあのドラマよりも数段頼りない対応に見えてしまうのが物悲しいところだ。
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