週記(WBC第二幕・その2)

 日記ならぬ週記である。

 ジャンプ漫画は、やはり一週間近く経過するとほとんど記憶にない。何の前触れもなくQBが交代していたのと、相変わらずワンオンワンをやっていたことだけは微かに憶えているのだが。

 WBC第二ラウンド続き。決勝ラウンドに進んだ4チームの現時点までのSABRmetrics関連指標を書いておこう。まずは攻撃関連で、左から出塁率、長打率、OPS、RC27、BABIPだ。

日本 .366 .385 .750 4.88 .323
韓国 .380 .407 .787 5.06 .276
ベネ .367 .569 .936 7.66 .318
米国 .400 .517 .917 7.46 .324
平均 .378 .473 .852 6.29 .313

 次は投手関連。左からWHIP、DIPS、被BABIPだ。被BABIPについては前回の計算方法は問題があったので修正し、(安打-本塁打)/(投球回*3+安打-本塁打-三振)で計算し直している。

日本 0.95 2.83 .213
韓国 1.25 3.15 .294
ベネ 1.46 4.17 .284
米国 1.73 5.29 .325
平均 1.35 3.87 .282

 日本の選手に注目すると、まず打線では打数の少ない川崎、亀井を除いて、OPSで1超、RC27で10超の選手がいなくなったのが目立つ。城島、中島、村田がそれぞれ成績低下に見舞われた。村田は肉離れで離脱したのでこの時点で成績が確定。OPSが.939、RC27が7.97というのはシーズン成績に比べると今一つだったが、代表内ではなお城島に次ぐトップクラスの成績だし、本塁打2本は日本では最多だ。ほとんど存在しない貴重な大砲がチームを去ることになる。
 シーズン成績と比べてOPSとRC27が上回っている選手は、現時点では城島しかいない。他の選手は軒並みシーズン成績を下回っており、中でもイチローや小笠原は落ち込みが激しい状態だ。特に頭打ちなのが長打率。代表全選手のシーズン長打率は.458だが、WBCではこれが.385にとどまっている。決勝ラウンド4チームの中で日本の打線が最も迫力不足なのは間違いない。ここでも小笠原の不調が目立つほか、福留や、一般には褒められている青木も実は長打では期待を下回っている。
 逆に健闘していると評価できるのは四球を選ぶ部分だ。SABRmetricsファンの間では日本の野球が四球を選ぶことに対して否定的である点に批判が多いし、実際に四球/(打数+四球)の「奪四球率」を調べてみるとNPBは7.8%とMLB(9.6%)を大きく下回っている。日本代表選手たちもシーズン中の奪四球率は8.4%に過ぎない。だがこのWBCで彼らはこの率を10.7%まで高めている。決勝ラウンド4チームの平均(11.8%)には及ばないものの、ベネズエラ代表(7.5%)よりは高いのだ。全体に冴えない攻撃関連指標の中で、出塁率が相対的にマシなのはこれが理由だろう。
 投手力は相変わらず凄い。先発3本柱でシーズン成績より下なのは岩隈のDIPSくらいだが、これも2.71と水準としては極めて高レベル。藤川はまだシーズンを下回った水準にあるものの、それでもWHIPで1.00、DIPSで2.45なんだから気にするほどではないだろう。第二ラウンドで初登板した小松に至ってはWHIPが0.38、DIPSが0.58という凄まじい状態だ。もちろん母数が小さすぎるのでこのまま評価することはできないのだが、シーズン中と比べて日本投手陣が優れた成績を残していることは間違いない。
 ツキも大いに味方している。被BABIPは.213と、代表選手のシーズン水準(.276)を大きく下回っている。WBC全16ヶ国の中でも最低だ。日本と同じく投手力で勝負している韓国がこの部分では今一つなのに比べ、日本はより投手力で勝負しやすい状態にあったと言える。ただし、BABIPは基本的にランダムな数字になりやすいもの。今後も低い被BABIPが続く保証はどこにもない。そこまで含めて日本投手陣の実力だと言ってしまうと、過大評価になるだろう。

 残りは決勝ラウンドの3試合。これまでのダブルエリミネート方式から完全なトーナメント制になる。野球のように偶然の要素が強いゲームでは、実力よりツキで結果が決まる可能性がより高まる訳だ。これ以降はSABRmetricsによる分析にもあまり意味はないだろう。それでも敢えて分析してみるとどうなるだろうか。
 まずは韓国対ベネズエラ。韓国投手陣は日本に次いで高い成績を残しているが、中身を見ると被本塁打、与四球が少ない一方で奪三振は4チーム中3位。一方のベネズエラ打線は四球も三振も少ないが本塁打はトップだ。ベネズエラが攻撃している際には長打、特に本塁打がどれだけ出るかが勝負のキモになるだろう。また三振や四球が少ないため、フェアグラウンドにボールが飛ぶ割合が高くなりそう。BABIPの、即ちツキの影響が大きくなると見られる。
 韓国の攻撃を見ると本塁打は4チームの平均並みで、四球と三振は多い。ベネズエラの投手陣は被本塁打は4チーム平均並みで、与四球は4チーム最多、奪三振は日本に次いで多い。韓国の攻撃時には四球と三振が多く、長打は平均的に出てくることが予想できる。高い出塁率は確保できそうだが、BABIPが及ぼす影響は限定的で得点が大きくぶれる可能性は乏しそうだ。結局、この試合はベネズエラ打線の長打とBABIPによって勝負が決まると思われる。
 次に日本対米国。日本投手陣は被本塁打と与四球は少なく、奪三振は多い。米国打線は本塁打はベネズエラに次いで多く、四球は最多、三振も韓国に次いで多い。この対決では三振が多いことは予想されるが、四球と長打がどうなるかは日本の投手と米国打線の出来次第か。四球が少なくなればBABIPの影響も大きくなり、ツキの要素も高まる。ちなみに日本投手陣と米国打線は、いずれもこれまでかなりツキに恵まれていた。
 米国投手陣は被本塁打は圧倒的に多く、与四球もベネズエラに次いで多い。一方で奪三振は最少と、正直いいところがない。もっともいいところに乏しいのは日本打線も同じで、本塁打は4チーム最少、四球もベネズエラに次いで下から二番目だ。ただ三振はベネズエラの次に少ないため、この対決ではあまり三振は増えないだろう。後は「貧打日本vs長打を許す点では抜群の米国投手」といった情けない対決があるが、正直どう転ぶか分からない。BABIPでは日本打線が幸運なのに対し米国投手陣は不幸だった。
 日本対米国でツキ(BABIP)の要素が大きくなるのは日本が攻撃する時だろう。ただしSABRmetrics的な考えでいけば「投手は水物」。ダメ対決を行う日本打線対米国投手陣より、いいところ対決になる米国打線対日本投手陣の方が勝負の行方を左右するのだとしたら、こちらの方がより一か八かの要素が強くなる。要するに松坂の出来次第ってことだ。国際試合になるとなぜか重要な場面に出くわすことが多いDice-Kの出目に、勝負は左右される。

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