WBC第一幕・その1

 (以下の文章は15日午前中に執筆)

 World Baseball Classic"http://web.worldbaseballclassic.com/index.jsp"は第一ラウンドが終了。日本は2勝1敗で第二ラウンドへの出場を決めた。出場そのものは想定通りなので別に騒ぐことはないだろう。第一ラウンドで全くの予想外はドミニカの敗北くらい。後はメジャーリーガーが多い割りにあっさり2連敗で消えていったカナダがちと想定外だったというところか。
 第二ラウンドのプール1(San Diego)には日本、韓国、キューバ、メキシコ、プール2(Miami)には米国、ベネズエラ、プエルト=リコ、オランダが参戦する。この勝ち残った8チームに、参考データとして第一ラウンドで消え去った8チームも含めたSABRmetricのデータを以下にまとめてみた。まずは打線。左からOPS、RC27、BABIPの数値だ。

CUB 1.296 15.38 .373
MEX 1.155 12.19 .337
VEN 1.073 10.22 .353
USA 0.978  8.39 .309
PUR 0.947  8.45 .359
KOR 0.832  5.79 .276
JPN 0.744  4.81 .286
NED 0.382  1.06 .244
AUS 0.937  8.37 .426
CAN 0.786  5.00 .255
DOM 0.694  3.89 .224
ITA 0.678  3.81 .296
TPE 0.519  1.98 .255
RSA 0.459  1.61 .229
CHN 0.457  1.63 .227
PAN 0.454  1.54 .239
AVR 0.814  5.60 .300

 基本的に打線好調なチームが勝ち上がっていることが分かる。勝ち残った8チームの中には、負けた下半分のどのチームよりもOPSとRC27が高いチームが5つもある。特にOPSで1超、RC27で10超を記録している上位3チーム(キューバ、メキシコ、ベネズエラ)はかなり強力だと言っていいだろう。ただ、特にキューバの対戦相手は投手力の弱いところが多かったことは確かなので、そのあたりは多少割り引いた方がいいかもしれない。
 逆に生き残ったところで打線が弱いのはぶっちぎりのオランダと、日本、韓国。それでも韓国はOPS、RC27で16チーム平均を上回っているからまだマシだが、日本はよくない。確かに日本は3試合のうち2試合が投手力のいい韓国相手だったため成績が低く出るのは仕方ない面もあるが、それにしても敗退チームを含めた全体平均すら下回っているのはやはり拙いだろう。いつものように国際試合になると打てない打線がその実力をいかんなく発揮しているようだ。オランダは論外。
 BABIPは基本的にランダムな数字となる筈だが、見たところ全体としてOPSやRC27と似たような分布傾向を示している。第一ラウンドでは打線好調だったチームが運にも恵まれていた、ということになるようだ。
 長打力で目立つのは3試合で本塁打11本のキューバと、4試合で12本のメキシコ。3試合で7本の米国、4試合で8本のベネズエラも侮れない。日本(3試合3本)は勝ち残りチームの中では下位である。出塁関連で四球(除く故意四球)を見るなら、選球眼がいいのは3試合で19の米国、3試合で18のプエルト=リコ、4試合で23のメキシコ、4試合で22の韓国あたり。これまた日本(3試合で12)は成績が低い。
 SABRmetric以外のデータ、特にスモールボール的なデータはどうなっているのだろうか。残念ながら目立って多いところ、少ないところというのはない。盗塁数(成功、失敗含む)は中国の3試合で4(成功3)が最多。メキシコ(4試合で4、成功3)や日本(3試合で3、成功3)、キューバ(3試合で3、成功1)、米国(3試合で3、成功1)、プエルト=リコ(3試合で3、成功3)などが後に続く。最も少ないのは南アフリカとカナダで、2試合で0だった。犠打は最多のイタリアが3試合で2。他は1回または0回だ。
 全16チームの盗塁成功率を見ると.618(34回中21回成功)となり、正直言って悪い。勝ち残った8チームに限っても.636(22回中14回成功)と大きな違いはなく、今のところスモールボールが短期決戦の勝利に役立っているという証拠にはならないようだ。

 続いて投手力。左からWHIP、DIPS、(安打-本塁打)/(投球回*3-三振-本塁打)で計算した被BABIPだ。BABIPは打者とは計算式が違うのでかなり違った数字になっていることは要注意。

PUR 0.89  2.01 .302
JPN 0.96  3.76 .207
CUB 1.08  3.88 .279
KOR 1.13  3.29 .362
VEN 1.58  4.87 .423
USA 1.59  5.09 .467
NED 1.75  4.67 .376
MEX 2.08  5.76 .846
DOM 0.63  0.93 .286
TPE 1.63  5.39 .471
CHN 1.78  5.63 .364
ITA 1.92  6.76 .500
CAN 1.94  6.08 .500
PAN 1.94  7.83 .484
AUS 1.96  6.85 .643
RSA 2.65 13.14 .500
AVR 1.54  5.02 .427

 こうやって見るとドミニカが負けたのが信じられない。少なくともオランダに負けるべき要素は見当たらないと思うのだが、これが野球なのだろう。WHIPで見ると上位4チーム(プエルト=リコ、日本、キューバ、韓国)は似たような数字。ベネズエラ、米国、オランダが下位集団を形成し、メキシコがぶっちぎり最下位といった感じだ。当たり前だがドミニカという例外を除けば、敗退チームの投手力は全体に見劣りがする。
 DIPSになると細かい順番は入れ替わる。プエルト=リコが突出した1位になり、2位集団を韓国、日本、キューバが形成。下位集団をオランダ、ベネズエラ、米国が形成して最下位にメキシコがいるのはWHIPと同じだ。WHIPは1イニングに出す走者の数、DIPSは投手の実力を示すと言われる本塁打、三振、四球のみに絞ったデータ。どちらをとっても勝ち残り8チームの投手力は上位4チーム、下位4チームに分かれることは明白である。
 面白いのは被BABIPだ。五輪では日本はこの部分で不運に見舞われていたのだが、今回は16チーム中最もいい数字を出している。DIPSではプエルト=リコに差をつけられているのにWHIPでは余り差がないのは、このあたりが要因だろう。またメキシコの異常な不運ぶりもよく分かる。

 以上を元に第二ラウンドを予想してみる。プール1の4チームのうち、日本、韓国、キューバは投手力上位に並んでいる。一方、打線はトップ2のキューバ、メキシコに対し、6、7位の韓国、日本と大きく二つに分かれている。第一ラウンドの成績がそのまま反映されるなら、このグループではキューバが圧倒的に有利で、後は打力のメキシコと投手力の日韓によるサバイバルとなるだろう。
 プール2はプエルト=リコの投手力が圧倒的で、米国、ベネズエラ、オランダは下位にとどまる。打線はベネズエラが最も高く、米国とプエルト=リコは中位クラスで、オランダがぶっちぎり最下位。となると有利なのは投手力が優秀で打線もそこそこのプエルト=リコと、打力に勝り投手力がそれなりのベネズエラあたりか。投手力が並で打線がどん底のオランダが厳しいのは当然として、投手力、打力とも並の米国がどこまで踏ん張れるかが問われそうだ。

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