NFL2008

 NFLのレギュラーシーズンが終わった。とりあえずここで総括しておこう。

 まず問う。New Englandは果たして善戦したのか。した、というのが一般的な見方だろう。14人もの選手がinjured reserve入り(その中には昨シーズンにMVPを獲得したエースQBもいる)した中で11勝をあげた。プレイオフに出るSan Diego(8勝)より多くの勝ち星を上げているし、得失点差を見てもAFC東では最も大きい。New York Times"http://www.nytimes.com/2008/12/29/sports/football/29patriots.html?ref=football"が書いているように"Finish with Pride"と言えるだろう。少なくとも選手は。
 組織全体として見た場合、今年のNew Englandは決して善戦していない。むしろ悪いところが出まくった結果、プレイオフを逃したと言ってもいいだろう。何が悪かったのか。もちろん、14人もの選手がシーズン途中で脱落したことが、である。知っての通り、このチームはとにかく怪我人の発生が多い。優勝した2003、2004シーズンも続出する怪我人に苦労しながら勝ち上がっていたし、その後も怪我人の発生はリーグ平均を上回るペースで進んでいる。Pro Football Prospectus 2008を見ると、過去3年(2005-2007)に怪我のため試合に出られなかった頻度はリーグ27位に低迷している。今年の結果を含めると順位はもっと下がるだろう。
 2007シーズンはたまたま怪我人が少なく(リーグ13位)、それが結果としてシーズン16勝につながった。だが、怪我人発生が増えると成績は落ち、強いチームに勝てなくなった。今シーズンのNew Englandの成績を対戦相手ごとに見ると、負け越しチーム相手では7勝0敗、勝率5割チームだと1勝1敗、そして勝ち越しチーム相手では3勝4敗になる。勝ち越しチームとの対戦成績をより詳細に見るなら、9勝7敗チーム(JetsとArizona)に2勝1敗、11勝5敗チーム(Miami)に1勝1敗、そして12勝4敗チーム(IndianapolisとPittsburgh)に0勝2敗。きれいに傾向が出てくる。
 毎年のように怪我人が出まくっている傾向を見る限り、New Englandのメディカルスタッフが問題を抱えていることは間違いないだろう。にもかかわらず、このチームはその問題の改善を図らなかった。おそらくたまたま怪我人が少なかった去年の状況を見て、今のままで十分だと判断したのではないか。あるいは「怪我は全て偶然」と考えているのかもしれない(これだけ何年も怪我人で悩んでいるのに、それが全て偶然だと考えるのはさすがに無理だと思う)。アメフトに怪我がつきものなのは間違いないが、リーグ平均より怪我が多い状態を何年も続けるのでは無策と言われても仕方ないだろう。
 結論。New England Patriotsという「組織」は、決して善戦などしなかった。彼らは課題の一つに手をつけず、状況が悪化するのをただ見守っていた。プレイオフ脱落は、その咎めが出た結果である。

 ついでに他のチームについてつらつらと。まず、今シーズンは途中まで「プレイオフはほぼ確定」と思われながら(特に12月に入って)急ブレーキをかけて脱落したチームが多々あった。例えばDallas。途中まで8勝4敗だったのに最後の4試合が1勝3敗であっさりPhiladelphiaに抜かれた。Romoはでかい試合で勝てないという定評が、これでまた強まることになる。他にも終盤まさかの4連敗でプレイオフから脱落したTampa Bay、3連敗でSan Diegoに逆転を食らったDenverなど、そうしたチームは多々ある。
 中でも最終週でMiamiに敗れ、Penningtonに華麗なる復讐をなさしめてしまったJetsなどはかなり悲惨な例の一つだろう。途中まで8勝3敗、無敗のTennesseeも破って、もしかしたらSuperbowlも、などと言われていたチームが、最後の5試合は1勝4敗だ。西海岸で信じられないような敗戦をいくつも重ね、結局プレイオフにすら届かなかった。シーズン前に大枚はたいて取ってきたFavreは22インターセプト(今シーズンリーグ最多)と自ら持つ通算インターセプト成績を大幅に上乗せ。レーティングも81.0と極めて平凡だ。ちなみにPenningtonのレーティングは97.4(リーグ2位)である。
 終盤だけでなく、もう少し長い期間で失速したチームとしてはWashingtonがあげられる。前半は6勝2敗だったのに、後半は2勝6敗。途中までは強豪ぞろいのNFC東で優勝争いも期待されていたのに、終わってみれば地区最下位だ。開幕4連勝を記録しながら、結局負け越したBuffaloもこのカテゴリーに入れられるだろう。逆に終盤7試合で5勝2敗だったSan Francisco、終盤6試合で5勝1敗のHoustonなどは、来シーズンに期待が持てるかもしれない。
 好調だったチーム、波のあったチームに加え、シーズン通して不調だったチームも存在した。何より歴史をつくってしまい、日本語Yahooのトップページにまでニュースが載ったDetroitには、何と声をかければよいのやら。New Englandが16-0を成し遂げた翌年に0-16を達成するチームが出てくるというのも印象的。とにかくこのチームのディフェンスは歴史的壊滅状態にあったようで、少なくとも第16週までディフェンスDVOAは1995年以降のチームの中ではぶっちぎりの最下位だった"http://www.footballoutsiders.com/dvoa-ratings/2008/week-16-dvoa-ratings"。Detroitにとってはただでさえ不況の嵐に苦しんでいるところに、もう一つの悲劇が加わってしまった格好。ご愁傷様。
 Detroitのおかげで目立たないが、2勝14敗のKansas CityやSt.Louisもかなり酷い。普通なら余裕でドラフト全体1位を獲得できる勝率である。最後に2連勝したものの、Oaklandもこれで6年連続の11敗以上とこれまた涙なしには語れない状況。その中で、敢えて最も不幸なチームをあげるならGreen Bayかもしれない。総得点が総失点を39点も上回っているのに、なぜか6勝10敗。7点以内の敗戦が7試合もあるなど、悪魔に魅入られたとしか言いようがない結果だ。試合数の少ないNFLでは、こうした事態が起きることもある。

 さて、シーズンが終わってプレイオフが始まる前に話題に上るのが、クビの危ないHCの話。といっても今シーズンは既に複数のHCがSAYONARAしているので目新しさには欠けるのだが。順不同で名前をみた人物を挙げるなら、JetsのMangini、BuffaloのJauron、ClevelandのCrennel、CincinnatiのLewis、Kansas CityのEdwards、DallasのPhilips、DetroitのMarinelliなど。このうちCrennel、Lewis、Edwards、Marinelliあたりは実際にクビになっても全然不思議だとは思わない。ManginiやPhilipsは勝ち越しているのだから続けさせてもいいと思うのだが、いずれも巨大マーケットのチームだけに話はそう簡単に行かないのだろう。
 New Englandもプレイオフから外れたので、当面はこういった人事情報を楽しみながら見ることにしよう。プレイオフの動向については、正直ほとんど関心がわかない。どのチームが勝ってどこが負けてもどうでもいいという感じ。敢えて言えば、不当に低い評価をされていたQBが頑張っているチーム(TennesseeとかMiamiとか)に少し興味があるくらいか。

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コメント

No title

SLEEP
かなり酷いシーズンを過ごしたものですこんにちわ(挨拶

なんか明暗くっきり出たシーズンでしたね。
11勝してプレーオフに行けないチームもいれば8勝で地区優勝が二つもあったりして。元BUFのPhilipsはDCとして1流ですが、HCとしては2流でしょうね。BUFのJauronも激戦地区にしたって急にダメになりましたね、向いてないんでしょうかね。Crennelはちょっと同情できないですけど、Lewisはもう一回チャンスを上げたい気もします。Edwards、Marinelliの新旧NYJコンビは・・・うーん。

No title

desaixjp
史上最悪のシーズンを送ったチームより上だったから良かったじゃないですか、という慰めの言葉が思い浮かんだんですが、よく考えれば全然慰めになっていないですね。お疲れ様でした。
コーディネーターとしては一流でもHCとしては駄目という人はよく見かけますね、Martzとか。というか、昔はBelichickもそうだったんですけどねえ。そう考えるなら、HCとしての実力を測るためには最低2回はチャンスを与えるべきなのでしょう。二度目で駄目(たとえばJauron)なら、さすがにさよならすべきかもしれません。
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