片脚の工兵将軍カファレリ=デュ=ファルガ"http://fr.wikipedia.org/wiki/Louis_Marie_de_Caffarelli_du_Falga"は前にシェヘラザードさんのところでも取り上げられていたが、少し面白い話があったので紹介しておく。バリバリの共和主義者だった彼がアクル攻囲戦で瀕死の重傷を負った際に、自らの最後を覚悟した彼が望んだのはヴォルテールの本を朗読してもらうことだったという。
この話はNathan Schurが"Napoleon in the Holy Land"のp125で紹介しており、引用元は1801年に出版されたVie du General Maria Joseph Maximilien Caffarelli du Falga"http://books.google.com/books?id=y8UPHAAACAAJ"という本。残念ながらgoogle bookでは閲覧できない。
もっとも「頼まれて朗読したのは俺だ」と主張している人物が誰かは分かる。ナポレオンの秘書だったブーリエンヌ"http://fr.wikipedia.org/wiki/Louis_Antoine_Fauvelet_de_Bourrienne"だ。Memoires de M. de Bourrienne, Tome Second"http://books.google.com/books?id=nJAFAAAAQAAJ"には「息を引き取る少し前に、彼は私に向かって『ブーリエンヌ、お願いだからヴォルテールの“法の精神[l'Esprit des Lois]”の序文を読んでくれないか』と言った」(p233)と書かれている。ブーリエンヌからその話を聞かされたボナパルトは「妙な話だ」(p234)と答えたそうだ。
ただし、このブーリエンヌの話には怪しいところがある。お気づきだと思うが、一般に「法の精神(De l'esprit des lois)」として知られている著作"http://fr.wikipedia.org/wiki/De_l'esprit_des_lois"を書いたのはモンテスキューであって、ヴォルテールではない。ヴォルテールの「法の精神」を読んでくれと頼まれても、そんなことは物理的に不可能だ。ブーリエンヌの回想録以外でもヴォルテールの本に関する話が紹介されているのでそれ自体は実際にあったことかもしれないが、ブーリエンヌがカファレリのためにヴォルテールを朗読したという点については眉に唾をつけておいた方が安全だろう。
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