ナポレオンと元帥たち・番外

 前回までで25人分を紹介し終えたナポレオンの元帥評だが、番外編を少しばかり。まずセント=ヘレナで一言も言及されなかったペリニョンについて。確かにナポレオンはセント=ヘレナではこの最も地味な元帥に触れていないが、それ以外の時期なら彼に触れている事例も存在する。たとえば百日天下の最中、1815年4月10日にダヴーに宛てた手紙がある。

「そのような訳で、ペリニョン元帥にはその領地にとどまって構わないこと、そしてパリに来る必要はないことを知らせよ」
Correspondance de Napoleon Ier, Tome XXVIII"http://books.google.com/books?id=57oGAAAAQAAJ" p99

 ベルティエ、マルモン、ヴィクトール、オージュロー、ケレルマンらと伴にペリニョンを元帥リストから削除したのに伴う連絡だ。ただペリニョンの能力や性格を述べている訳ではないので、これを「元帥評」に加えるのは難しいだろう。
 デルダフィールドはペリニョンを「元擲弾兵」「元曹長」と書く一方で「旧貴族」とも書いている。このうち正解はおそらく「旧貴族」のみ。Georges Ostermannによれば「18世紀初頭に[ペリニョン]家が世襲貴族であることが確認された」(ed. David Chandler "Napoleon's Marshals" p404)。その家柄のおかげで彼は士官として軍に入隊している。当然、擲弾兵やら曹長といった階級は経験していない。

 もう一つ、時々見かける「元帥26人は多すぎる」との指摘についても考えてみよう。確かにナポレオンの治世の期間を考えれば26人はかなり多いのだが、単純に一人の君主が任命した元帥の数という視点で見るなら、実は「ナポレオンの元帥たち」はそれほど数は多くない。
 何しろナポレオンの一代前の君主であるルイ16世だって18年間の治世で20人もの元帥を任命しているのだ。戦争だらけだったナポレオンと、アメリカ独立戦争への介入と治世末期のフランス革命戦争を除けば大規模な戦いがなかったルイ16世の時代背景まで考えるのなら、ナポレオンが圧倒的に多いとは言えないだろう。
 フランスの歴史上、最大の「元帥量産君主」は太陽王ルイ14世である。治世が長かったせいもあるが、それにしても累計53人の元帥は多すぎ。他にもルイ15世が49人、ルイ13世が32人といった具合にブルボン家の国王はやたらと元帥を大量に輩出(排出?)している"http://fr.wikipedia.org/wiki/Mar%C3%A9chal_de_France"。ナポレオンは17世紀から続いていた元帥大量生産時代の最後を飾っただけ、とも言えるのだ。
 1613年から1815年までの203年間に生まれたフランス元帥は実に180人。年平均0.9人に達する。ナポレオンが選んだ元帥の中にはフランス革命戦争期に活躍した人物も多いため、それも含めて1792年から1815年までに26人が元帥になったと考えるなら、この期間は年平均1.1人だ。ナポレオンの元帥だけが突出して多かった訳ではない。
 ではなぜナポレオンの元帥が多すぎるとの声が出てくるのだろうか。それは19世紀以降に元帥の量産が止んでしまったことが理由だろう。復古王政が生み出した元帥は16年で9人、七月王政下の19年では10人。第二共和制と第二帝政下の23年では19人と膨らんだものの、20世紀以降はたった12人しか元帥になっていない。1816年から2008年までの193年で生まれた元帥は50人、ほぼ4年に1人にまでペースが落ちている。ナポレオン時代の元帥が多すぎると思うのは、20世紀以降の感覚で見ているためだ。

 以上で「ナポレオンと元帥たち」の掲載は終了。

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コメント

No title

RAPTORNIS
ペリニョンは本当にマイナーですね。彼が元帥府に列せられていなかったら、名前すら後世で語られることはなかったでしょうね。
一方、グルーシーは百日天下のみの元帥で、3日だけの元帥だったポニアトフスキに次いで元帥期が短かったわけですが、ある意味ワーテルローの勝敗の鍵を握る重要人物だっただけに、よく知られているわけですね。少なくとも、ワーテルローが最大の関心事であるぼくとしては、グルーシーの名は1804年組の元帥たちと同じくらいの重みがあります。

No title

desaixjp
ペリニョンもグルーシーもまだ元帥になっただけマシですけどねえ。ナポレオンが最も高く評価しているドゼー&クレベールの二人も、知名度の低さは目を覆わんばかりですし。いわんや革命戦争中に戦死したダンピエールとかマルソーあたりにおいてをや。
グルーシーはポニアトウスキを除けば生まれた時の身分が最も高かった元帥ではないでしょうか。そんな人物が革命側に立って平民出身の将軍たちと一緒に戦い続けたのですから、それだけでも個人的には大したもんだと感心します。
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