ナポレオンと元帥たち・24

 ナポレオンの元帥評。今回はスーシェだ。元帥たちの中でも上位に入る能力の高い人物だったが、一方で知名度は下から数えた方が早いという、ある意味不幸な人物である。デルダフィールド本でも登場頻度はグーヴィオン=サンーシールやセリュリエといったあたりと似たり寄ったり。能力的には下であっても目立つ機会の多かったミュラやネイの方が圧倒的にたくさん取り上げられている。
 ここでもまた「ナポレオン麾下か否か」の法則が発動したと考えるべきだろう。スーシェがナポレオン直率下で戦ったのは、彼が師団長だった時。元帥杖を手に入れたのはパリのナポレオンから遠く離れた東部スペインだったし、その後も彼はナポレオンのすぐ傍で戦うことはなかった。デルダフィールドが記した「丁寧で控えめな男」という指摘が事実かどうかは分からないが、後の時代から見れば彼が控えめに見えてしまうのは確かだ。
 「傑出した才能」「第一級の行政能力」「最も腕の立つ部下」といったデルダフィールドの見解はナポレオン自身の見方と軌を一にしている。1817年時点でフランスの最も優れた将軍は誰かと問われた皇帝は、以下のように述べた。

「しかしながら私はスーシェがおそらく一番だと考える」
Napoleon en exile, Tome II."http://books.google.com/books?id=LnYuAAAAMAAJ" p73

「私の見解ではスーシェ、クローゼル、そしてジェラールがフランスの将軍たちの中で第一級だ。将軍としての才能を判断するのに必要である司令官として指揮を執る場面が多くなかったため、彼らのうち誰が優れていたかは何とも言えない」
Napoleon en exile, Tome II."http://books.google.com/books?id=LnYuAAAAMAAJ" p73-74

 そしてまたランヌについて述べたのと似たようなことも言っている。

「スーシェはその勇気と判断力が驚くほど向上した者の一人だ」
Memorial de Sainte-Helene, Tome Second"http://books.google.com/books?id=zW8uAAAAMAAJ" p49

 デルダフィールドには「華々しい活躍を見せたわけではない」とあっさり切り捨てられたスーシェだが、彼がスペインで活躍し、それが皇帝の目にとまっていたのは間違いない。単に後世の人間からは見えにくいだけである。

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