週記・CasselとBrady

 日記ならぬ週記である。

 漫画早売りネタバレの前にNFLは第6週が終了。New EnglandではBelichickが「Cassel先発で行く」と改めて表明したが、彼のプレイに対するファンの不満は高まっているようだ。そりゃあれだけ大量リードされていたのにパスで全然距離を稼いでいないところを見ればファンが苛立つのも当然だろう。
 先発QB負傷でチャンスを得たという点ではCasselはBradyと同じ。だがチャンスを得た後の実績では差がつきつつある。先発が負傷した試合を含めて5試合が経過した時点におけるBrady(2001年第2―6週)とCassel(2008年第1―6週)の成績を比べてみよう。まず単純なパス成績だ。左からパス試投、パス成功、獲得ヤード、TD、インターセプト、レーティング。

B 131 79 866 5 0 92.6
C 142 92 910 3 4 78.1

 Casselが上回っているのはパス成功率(64.8%)のみ。Bradyは60.3%だった。しかしそれを除けば他のカテゴリーでは全部Bradyの方が優れた成績を残している。一例がレーティング。Bradyの場合、第7週のDenver戦で逆噴射したのだが、その直前までのレーティングはかなり高かった。同年のシーズン通算レーティング(86.5)で比べてみても、やはりCasselを上回っている。
 何より問題は平均獲得ヤードだろう。パス試投あたり平均獲得ヤードはBradyの6.6ヤードに対しCasselが6.4ヤード。パス成功あたりの平均獲得ヤードになるとBradyの11.0に対してCasselは9.9と10ヤードにすら満たない。要するにショートパスばかり投げているから成功率が高いのだ。New Englandがウエストコーストのチームならそれでもいいかもしれないが、そうでないチームでこの成績は問題だろう。
 表面的なスタッツには出てこない数字も含めると、Casselの数値はさらに悪くなる。まずサック。Bradyの被サック数が8、ヤードが45ヤードなのに対してCasselは実に19回78ヤード。被サック回数ではリーグで2位に達している。サックまで含めたレーティングを計算するとBradyの86.1に対しCasselは67.1。普通に計算した時よりも差が広がってしまうのだ。
 ランも問題がある。Bradyのランは7回18ヤードだったがCasselは18回58ヤード。ニールダウンを除くとBradyが5回20ヤードに対しCasselは13回62ヤードとなる。中にはQBスニークなどもあった可能性があるのでこの数字が正確とはいえないが、Casselの方がスクランブルが多いのは間違いないだろう。残念ながらランで稼ぐ距離(Bradyは平均4.0ヤード、Casselは平均4.8ヤード)はサックも含めたパス試投平均(Bradyが5.9、Casselは5.2)より低い。つまりVickのような特殊な選手を除けばスクランブルはパスより悪い選択ということになる。ちなみにファンブル数はいずれも2回ずつ(ロストは各1回)。
 こうやって比較するとCasselが大学時代を通じてずっと控えだった理由がよく分かるだろう。スタッツを見る限り、CasselはBradyよりチキンである。ボールを長く持ちすぎるからサックが多いし、投げる決断ができなからスクランブルが増える。投げる時もディープにはあまり放らずショートパスばかりだから平均獲得ヤードが低い。同じくサックの多い選手にRoethlisbergerがいるが、彼の場合はパス試投あたり獲得ヤードが7.6とCasselより1.2ヤードも長いのだ。
 ならいっそO'Connellがいいのかというと、そうとも言いきれない。何しろ彼の大学時代の成績は、先発試合数は33と微妙なところだし、パス成功率は57.7%といささか低い。プロ経験の短さも気になるところだ。それでも個人的にはシーズン中盤くらいでCasselを見切ってO'Connellに切り替える手はありだと思う。幸いにして今年は対戦スケジュールがかなり楽だし、新人QBへの負担も少なくて済むだろう。それに、どれほど勝ちにこだわったところで現状のディフェンスではSuper Bowlまで行くのは無理。さっさと若手育成モードに移行してもいいんじゃなかろうか。プロのチームがそんなことをするとも思えないが。

 漫画については一言だけ。
「楕円球は3回目のバウンドで大きく跳ね上がる可能性が高い」
 裏づけとなるデータを示さない限り、何の論拠もない妄説と同じ。ただのヒューリスティクスである可能性が極めて高そうな言説である。「所詮は漫画なんだからいちいち目くじら立てる必要もないでしょ」という言い訳を前提に書かれた話ではなかろうか。

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