週記・五輪SABRmetrics

 日記ならぬ週記である。

 アメフト漫画早売りネタバレの前にNFL、ではなくせっかく開幕前に選手分析をやったのでオリンピックの野球について書いてみよう。試合そのものには興味がなかったのでほとんど見ていないのだが、SABRmetrics的な分析の方は面白いのでやってみる。ちなみに3位決定戦と決勝戦のデータは省き、決勝トーナメントに出たチームは8試合分、それ以外は7試合分のデータを使っている。
 とはいうもののまず最大の問題はオリンピックのデータの欠落が著しいこと。何より打者の塁打と投手の被本塁打が分からないのが痛い。日本チームに関しては速報データがネット上に残っているので個々の選手のデータが取れるのだが、他のチームについてはデータがないまま計算するしかないのだ。従ってRuns Createdは日本以外は算出しない。投手のDIPSと被BABIP、打線のBABIPはチーム単位での算出としておこう。

 まずピッチングスタッフだ。各チームの奪三振率、与四死球率、被本塁打率、DIPS、被BABIPを並べてみよう。

JPN 10.80 2.57 0.26 2.03 .277
KOR  8.14 2.47 0.37 2.75 .261
CUB  6.69 2.57 0.77 3.69 .254
USA  8.07 3.06 1.11 4.04 .245
CAN  8.00 3.14 1.00 3.91 .225
TPE  8.91 3.38 0.68 3.32 .332
CHN  3.97 7.47 1.53 7.01 .312
NED  7.91 4.34 0.78 4.01 .389

 準決勝までの日本のピッチングスタッフは極めて素晴らしい結果を残している。奪三振率は実に10を越え(1試合に10個以上の三振を奪う計算)、被本塁打も2本で8チーム中最も少ない。与四死球も韓国と僅差の2位だ。普段使い慣れていない国際球、いつもと違うストライクゾーンでこの数字なのだから日本のピッチングスタッフの絶好調ぶりが分かる。
 ちなみに今回選ばれている10投手のレギュラーシーズン中の累計DIPSは3.13だから、国内の試合よりいい結果を出していると言えるだろう。個々の選手で見てもオリンピックDIPS3.63の岩瀬がシーズン中(3.20)より微妙に悪化している程度で、他の選手は全員シーズンよりいいDIPSを叩き出している。0.70の成瀬(シーズン中は3.59)や1.74の涌井(同3.61)、2.20の上原(同4.06)などはできすぎなくらいだ。
 一部で戦犯扱いされている岩瀬にしても、本当は彼自身の責任(DIPS)よりも守備のミスや不運(被BABIP)の方が影響が大きかった。岩瀬の被BABIPは.597とかなりかわいそうな数字。1敗を喫しているダルビッシュにしてもDIPS2.70に対し被BABIP.473であり、どちらかといえば運が悪かったと見た方がいい。逆に準決勝まで物凄く運が良かった川上(DIPS3.01、被BABIP.091)は3位決定戦で運が尽きたようだ。
 チームの守備という点ではどうだろうか。被BABIPには守備力も含まれている。日本の被BABIPは.277で決勝トーナメントに出たチームの中では最も悪いが、全チーム累計の被BABIP.289よりはマシ。実際にチームごとの失策数を見ても中国とカナダが7、その他6チームは全て5であり、日本が格段悪かったとはとても言えない。本職でない守備位置に選手を置く事態を強いられたが、それが明らかに足を引っ張ったというのは言いすぎだろう。
 ちなみに、実力上位4チーム間の試合のみで見たDIPSと被BABIPは以下のようになる。

JPN 2.62 .361
KOR 3.39 .256
CUB 3.20 .272
USA 5.04 .280

 ここでも日本の投手は奮闘しているが、他チームに比べれば明らかにツキに見放されていることが分かる。上位チームに全敗した理由を守備側から見るなら、運がなかったからということになる。
 もっともこれは「敢えて」言うなら、だ。実際にはピッチングスタッフは期待以上の活躍をしたし、守備も期待したレベルには十分到達していただろう。監督は投手交代のタイミングで失敗したという話をしていたが、現実には予選では「交代が遅い」、準決勝では「交代が早い」と批判を浴びている訳で、それは単なる後知恵からの批判に過ぎない。このピッチングスタッフなら誰をどこで交代したとしてもそう大した違いはない筈だ。たまたま岩瀬が不運に見舞われただけだ。

 攻撃の話も書きたいのだが、もう長くなったので以下次回。ちなみにアメフト漫画では残り9分弱で19点リードのチームが積極的なパスオフェンスに出た。ランで時間を潰す場合、3 & outであっても大体2分半は潰せる計算だ。19点リードなら3回のドライブが必要。その前にこちらが2分半ずつ3回ドライブするとそれだけで合計が7分半。相手に残る時間はほんの1分強にしかならない。
 もっともうち1回のドライブをリードされた側がタイムアウトを使って時間消費を抑えるなら、残る時間はもっと増えて4分ほど。もちろんそれでも3回ドライブするのはきついが、1回くらいターンオーバーができれば何とかギリギリ行けそうな感じだ。そこまで考えるなら、今回の漫画に出てきた積極的パスオフェンスはそう間違いとも言えないだろう。

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