ナポレオンと元帥たち・4

 ナポレオンによる元帥評、今回はベシエール。デルダフィールドはベシエールを、忠誠心があって人格も優れていたが軍人としての評価には疑問符がつく人物として描き出している。一方、ナポレオンの評価はもう少し高い。まず忠誠心の部分だが、ナポレオンはベシエールを信頼できる人物だとしている。

「危機的状況が断固として信頼できる人物を求めていたため、私はベシエールを[アントワープへ]送った。しかし危機的な時期が終わるや否や、私はベシエールに代わる別の者を送った。というのも私は彼を近くに置いておきたかったからだ」
Memorial de Sainte-Helene, Tome Septieme"http://books.google.com/books?id=BHQuAAAAMAAJ" p71

 では軍事的能力はどうか。ナポレオンは彼を同じ騎兵指揮官であるミュラと比べ、対照的だったこの二人の元帥の特質をうまく説明している。

「彼[ベシエール]は砲火の中でも冷静で平穏な勇気の持ち主だった。彼はとても目が良かった。特に騎兵作戦には手馴れており、予備部隊の指揮に適していた。あらゆる大きな会戦で大いに貢献しているのが見られた。彼とミュラは軍内でトップの騎兵士官だったが、その特質は正反対だった。ミュラは前衛部隊向きの士官で、大胆かつ猛烈だった。ベシエールは予備部隊向きの士官で、活力に溢れていたが注意深く慎重だった」
Memoires pour servir a l'histoire de France sous Napoleon, Tome III."http://books.google.com/books?id=mgYBAAAAYAAJ" p204

「ベシエールは騎兵士官だったが、冷淡なところがあった。ミュラが過剰に持っていたものが、彼には欠落していた」
Talk Of Napoleon At St. Helena"http://www.archive.org/details/talkofnapoleonat007678mbp" p236

 そして、以下のようなことも言っている。

「もしベシエールがワーテルローにいたら、我が親衛隊は勝利を決定づけていただろう」
Talk Of Napoleon At St. Helena"http://www.archive.org/details/talkofnapoleonat007678mbp" p245

 もっともこの言明についてそのまま受け入れるのはあまりよくない。ワーテルローに関するナポレオンの発言は、あと少しで勝てる筈だったと主張するあまり、とても客観的とはいえないものが多い。現実問題として倍近い敵が待ち構えていた稜線に向かって前進する羽目に陥ったワーテルローの親衛隊に、勝利を獲得する可能性はほとんどなかったと言っていいだろう。もしベシエールが生きていたとしても、あの状況で勝てと言われたらとても困っていたのではなかろうか。
 全体として、早い時期に戦死した将軍たちに対するナポレオンの評価は甘いものが多い("http://blogs.yahoo.co.jp/desaixjp/43301005.html"参照)。ベシエールに対するナポレオンの評価も、そうした点を勘案したうえで見るべきだろう。

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