ナポレオンと元帥たち・2

 ナポレオンによる元帥評その2。今回は後のスウェーデン王ベルナドットだ。デルダフィールドによればベルナドットは「悪党」で「偽善者」で「日和見主義者」で「裏切り者」ということになるが、彼が浴びせかけた批判のうち、いくつかはナポレオンが元ネタだろう。

「ベルナドットは、真の偉大さと堅実性ではなく、自己愛と敵意に基づいて行動している」
Memorial de Sainte-Helene, Tome Cinquieme"http://books.google.com/books?id=GHMuAAAAMAAJ" p309

「はっきり言うならベルナドットは私の胸中で育った蛇だ。彼は我々から離れるや否や我々の敵の体制にしがみつき、かくして我々は彼を監視し恐れることを余儀なくされた。後に彼は我々に災難をもたらす大きな原因となった。敵に我々の政治システムの鍵を与え、我が軍の戦術について知らせたのは彼だ。我らの聖なる祖国に踏み込む道を敵に示したのが彼なのだ! たとえ、スウェーデンの王位を受け入れた以上その時からスウェーデン人になったのだと言い訳したとしても無駄である。野心的な俗物たちにしか通用しない惨めな言い訳だ。妻を娶ったからといって、人はその母を捨てる訳ではないし、ましてその胸を突き刺し内臓を引き裂く運命になる訳がない」
Memorial de Sainte-Helene, Tome Cinquieme"http://books.google.com/books?id=GHMuAAAAMAAJ" p203

 ところが、デルダフィールドの言った「裏切り者」(traitor)については、ナポレオンはこれを正面から否定している。

「ベルナドットの偉大さを生み出したのは私だったにもかかわらず、彼は私に感謝の念を持たなかった。しかし彼が私を裏切ったということはできない。彼は言わばスウェーデン人になったのであり、その立場で行動するつもりはないと約束したことは決してない。私は彼を恩知らずとして責めることはできるが、裏切り者と非難することはできない」
Napoleon in Exile, Vol. II."http://books.google.com/books?id=zaUNAAAAIAAJ" p364

 ベルナドットは恩に仇で報いたかもしれないが、マルモンのように味方を裏切って敵についた訳ではない、というのが陛下の言い分だろう。妙に冷静なコメントである。
 実はナポレオンによる元帥たちの評価の中には、このように突き放した冷静な(冷徹と言ってもいい)視点からなされたものが時々ある。ナポレオン自身と元帥との関係を、まるで第三者の立場から描写しているような発言が、たまに見受けられるのだ。軍人には、部下を死地へ引っ張る情熱と同時に、戦況を見定める冷静な観察力の両方が求められる。ナポレオンの中にはこの二種類の人格が存在し、それが交代しながら元帥評を行っているようにも思える。

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