デルダフィールド著「ナポレオンの元帥たち」の増刷が決定したそうだ。有力取次から注文があったようで、それだけ引き合いが多かったのだろう。もちろんトータルの部数はベストセラー本に比べれば微々たるものだが、それでも多くの人が読みたいと思っているのは大変に喜ばしいことである。
そこで「側面支援」となるナポレオンの元帥評26人マイナス1人分について、まずはオージュローから始めよう。マルボのおかげで「理想の上司」とされた彼だが、ナポレオンも彼が兵士たちから愛されていたことは認めている。
「オージュロー:とても個性的、勇敢、頑強、活力。戦争に慣れており、兵士に慕われており、仕事においては幸運」
Correspondance de Napoleon Ier, Tome Premier"http://books.google.com/books?id=uFYuAAAAMAAJ" p549
「オージュローは手際がよく勇敢だった。彼は兵たちに愛されており、その仕事においては幸運だった」
Derniers momens de Napoleon, Tome I."http://books.google.com/books?id=Z3guAAAAMAAJ" p278
一方、晩年のオージュローが全盛期の精力を失っていたことも指摘している。
「オージュローはひねくれた性格の持ち主だった。常に十分に堪能していた勝利のために疲れて落胆しているように見えた。彼の人格、物腰、言葉遣いは自惚れているような雰囲気をまとっていたが、実際の彼はそれとは程遠い人物だった。彼はあらゆる所においてあらゆる手段で手に入れた名誉と富に十分満足していた」
Memorial de Sainte-Helene, Tome Premier"http://books.google.com/books?id=K28uAAAAMAAJ" p364
そして、もっと厳しい批判の声もオージュローに対して投げかけられている。
「元帥はもはや兵士ではない。彼の若い頃の勇気と美徳は彼を群集から抜きん出た存在とした。しかし名誉と高位、そして富が彼を再び庶民の水準まで引き下げた。カスティリオーネの勝者は祖国にとって大切な名前を残せただろうに。しかしフランスはリヨンにおける背信の記憶と、彼のように行動するあらゆる者を、彼らが将来の貢献で過去の過ちを償わない限り、忌み嫌うであろう」
Memorial de Sainte-Helene, Tome Septieme"http://books.google.com/books?id=BHQuAAAAMAAJ" p207
マルモンらに対して投げかけた「裏切り」(trahi)という言葉よりはマシかもしれないが、背信または脱走とも訳すべきdefectionという表現は、軍人に対して使うものとしてはかなりきつい。デルダフィールドはナポレオンが百日天下の時にオージュローを「許したかもしれない」と書いているが、実際には1815年4月10日付の陸軍大臣への手紙で彼を元帥リストから削除するよう命じている(Correspondance de Napoleon Ier, Tome XXVIII"http://books.google.com/books?id=57oGAAAAQAAJ" p99)。晩年の彼の行為を、ナポレオンは腹に据えかねていたのかもしれない。
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