Football Outsidersに面白い記事"http://www.footballoutsiders.com/2006/04/24/ramblings/nfl-draft/3828/"があった。リーグ全体のスターターがドラフト何巡で指名されたかについてポジション別に調べ、各ポジションで必要な選手を獲得するためにはどのようなドラフト戦略が必要かを分析したものだ。これを参考にしながらBelichickのドラフト戦略を分析してみよう。
BelichickとPioliがNew Englandのドラフトを手掛け始めたのは2000年から。チームの公式サイトによると今年のドラフトまでの7年間で計61人を指名。うち現時点でチームに残っているのは(今年のドラフト選手を含め)33人となる。この数字がどの程度いいのかは他チームも調べないと分からないが、それは面倒なのでパス。すぐにポジション別分析に入ろう。
Football Outsidersでは早い巡で指名しないとすぐに必要な選手がいなくなってしまう"Top Heavy"なポジションとしてQB、RB、WR1、DT、そしてエースとなるOT(多くはLT)を上げている。それぞれについてBelichickはどのように指名してきたのだろうか。
まずQBだが7年間に指名したのは4人。それぞれ6巡、4巡、6巡、7巡の選手だ。Football Outsidersの指摘によればこれは正しくないドラフト戦略ということになるのだが、このチームの場合は2000年ドラフト6巡でBradyを取るというサマージャンボ宝くじ一等賞を引き当てるような幸運に巡り合った結果なので仕方ない面はある。
次にRBの指名は3巡、7巡、4巡、1巡の4人。まじめにエースRBを取りに行ったのは今年が初めてと言っていいだろう。ただ、New EnglandにとってはRB問題がなかった年がこれまでの6年のうち2年間くらいしかない。弱点と思われるポジションへの対応としては不十分と言えそうだ。
WRについてはエースと2番手でドラフト戦略に違いがある。エースが"Top Heavy"なのに対し2番手は"Normal Distribution"、つまりドラフト順位が後になるにつれいい選手が次第に減っていくという傾向にある。それを踏まえたうえでNew EnglandのWR指名を見ると2巡、7巡、2巡、5巡、2巡の5人だ。
2巡指名がエースWR希望、その他が2番手WR希望なのだとするといささか2番手が手を抜きすぎ。逆にエース指名としては2巡はちと中途半端だし、それを3回もやるのもあまり意味がない。まあ今年の指名は実質1巡レベルの選手だとも言われているので、その意味ではようやく本気でエースWRを取りに行った証拠かもしれない。でも今必要なのはGivensの後釜になる2番手WRだと思うんだが。
DTについてだが、公式ページのドラフトを見るとDT、NTの他にWilforkなど5人がDLというポジションで掲載されている。この5人のうちWilfork、KleckoはDTとして問題ないだろうし、3-4のDEとして実際にはDT的な役割を担うことが多いSeymour、WarrenもDTとして計算するなら、DT指名は1巡、1巡、4巡、7巡、1巡、6巡となる。力を入れすぎなくらい入れているポジションだ。
OTは2巡、4巡、2巡、4巡、3巡(Kaczur)、5巡の6人。Matt Lightがモノになったから比較的手を抜いてきたのだろうが、DTに比べて力の入れ方が違うのは確か。決して力を入れているポジションだとは思えない。
"Normal Distribution"なポジションとしてはDE、CB、LB、TE、そして既に述べた2番手WRがいる。New Englandの指名DEは5巡、6巡、2巡、6巡と明らかに手抜きだ。ただし、これは3-4を採用しているチームならではのやり方(DT的なDEの方が必要度が高い)とも解釈できる。唯一の2巡指名選手がbustっぽいのは気になるが。
CBは3巡、6巡、4巡、7巡、3巡とこちらも優先度は低そうなことが分かる。Football OutsidersではDEとCBの優先度はチームの戦略次第で変わると指摘していたが、New Englandは正直どちらも後回しにしてきたチームだ。それもまた3-4を採用している影響かもしれない。あるいはBelichickはセンターラインこそが重要と考えているのかも。
LBを指名しないと言われているBelichickだが、指名しないわけではない。7年間に7巡、7巡、7巡、5巡と4人は指名した。だが、重要度ははっきり言って各ポジション中でも最下位。これはもう確信犯と言うべきだろう。
逆にTEは5巡、4巡、6巡、1巡、7巡、1巡、7巡、3巡、4巡と9人も指名。指名巡もさることながら、どう見ても数が多すぎる。試合中にこんなにTEを使うことはあり得ない。ST要員としてもTEをそんなに使うことは考えにくい(むしろLBの方がST向きだろう)。こればかりはいくら考えても意味不明としか言いようがない指名だ。
2、3巡目にピークがくる"Early Round Peak"はSとC。Sは6巡、5巡、2巡、3巡、4巡、4巡、7巡とかなり力を入れているポジションだ。Cは5巡指名一人だけだが、こちらも当たりくじを引いてきたので問題はないだろう。
指名巡にかかわらず優秀な選手が残っている"Flat"なポジションはG、FB、R、KorP。Gは1巡、3巡、6巡とちょっと優先しすぎ、FBは7巡に1人で問題なし、Kは4巡に1人とすこし優先気味だ。
結論として言うなら、Belichickのドラフト指名には明らかに偏りがある。DTやDTに近いDL、S、TEを異様に重視する一方、LB、RBあたりは実に冷遇されている。今年に入ってRBをトップ指名するという珍しい行動に出たが、WR指名の中途半端さ、TEの厚遇、LB無視といった点は全く変わらない。
2000年からチームを建て直してトップまで上り詰めるまでの過程では、このやり方はちょうどチームの弱点を埋めることにつながったのだろう。だが、時間がたてばチームも変わる。このチームの弱点は2000年当時とはかなり変化したに違いない。それでも同じドラフト戦略を続けていて大丈夫なのか、そのあたりが気になる。
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