瀬をはやみ

 たまには「その他の漫画」の話というわけでアメコミとマンガについて。ワーグナーの「ニーベルングの指輪」を題材にしたアメコミ("http://www.darkhorse.com/profile/profile.php?sku=11-532"及び"http://www.darkhorse.com/profile/profile.php?sku=11-724")と、シェークスピアの作品をMangaにしたもの"http://www.selfmadehero.com/manga_shakespeare/index.html"を読んだ。どちらも外国製だが、アメコミとマンガの違いが現れていて面白い。
 指輪のアメコミを購入したのは、私が指輪好きだから。ちなみに指輪関連で日本のワグネリアンに評価が高いのはあずみ涼氏による漫画化なのだが、私は雑誌の連載当時から読んでいた。今でも単行本が室内のどこかにある筈。一方、シェークスピアのマンガでは「ロミオとジュリエット」を購入。ロミオとジュリエットが好きだから、ではなくて某所で「舞台は日本、キャピュレットとモンタギューはヤクザの組」という話を見かけてつい手が伸びたためだ。
 どちらも海外の作家が描き海外で出版されたものだが、中身は異なる。アメコミとマンガの差を書き出すなら以下のようになるだろうか。

1)アメコミはオールカラー、マンガはほぼ白黒(登場人物紹介の部分だけカラーだった)
2)アメコミはコマ割りが小さく、マンガの方が大ゴマ使用頻度高い(アメコミの方がA4判サイズなのに対しマンガはもっとサイズが小さいため、仕方ない面もある)
3)アメコミに比べマンガの方がアップが多い(ただしManga Shakespeareは日本の漫画ほどアップを多用してはいない)
4)アメコミは写実的、マンガは記号的(焦りや怒りを表す記号が使われているほか、喜劇的な場面ではキャラクターの頭身が縮む)
5)アメコミは感情にあわせて顔つきが大きく変わる(時には同一人物と思えないほどに)、マンガは記号で補助している分だけ顔つきの変化は大きくない。多民族国家であり明確な感情表現が必要とされた米国で生まれたアメコミと、習慣や価値観の同一性が高い日本で生まれたマンガとの違いか

 以上はあくまで一般的な傾向。アメコミが全て写実的というわけではないし、漫画でも劇画のようにあまり記号的でないものもある。ただManga Shakespeareを読むと日本の漫画に由来する手法が外国人の間でこれだけ受け入れられているのに驚くのも事実。中高生向けだが、英国とアジアではヒット作となっている"http://www.afpbb.com/article/life-culture/culture-arts/2379923/2843532"ようであり、日本のオタクカルチャーの広まり具合が窺える。
 実際、ロミオとジュリエットを読むと、描き手が日本についてそれなりの知識を持っていることが分かる。外国映画などで時々見かける「意味のないひらがなやカタカナを羅列した看板」ではなくまともな看板が出てくるし、ロミオがマントヴァに追放されるシーンでは追放先が京都の「旅館マンチュア」だ。仮死状態になったジュリエットは和風の棺おけに入って祭壇に置かれている。多分、描き手自身が日本オタクなのだろう。
 絵柄は和風だが中身はシェークスピア。もちろんジュリエットは"Wherefore art thou Romeo"と話す。さすがにシェークスピア時代の古い綴り"http://internetshakespeare.uvic.ca/Library/Texts/Rom/Q2/Scene/"までは使っていないが。あと中高生向けのためか、マキューシオなどが使う卑猥な駄洒落"http://www.clicknotes.com/romeo/Bawdy.html"は省略されているものも多い(省略されていないものも、もちろんある)。
 さらに話がずれるが、ロミオとジュリエットについては劇中の時間経過について色々な説が飛び交っているようだ。こちら"http://www.clicknotes.com/romeo/Chron.html"は日曜日から水―木曜日の夜(夜明け)までとしているし、こちら"http://www.newi.ac.uk/englishresources/workunits/ks4/shakespeare/romanjul/timeline/acts.html"は木曜の夜遅くが最後の場面だとしている。こちら"http://mb.sparknotes.com/mb.epl?r=1&b=859&m=196033&t=65514"にはさらに詳細な分析もあるが、結論は「マキューシオの呪いによって時間が壊れた」というものだったりする。いずれにせよラ=エイ=サントの陥落時間よりはよほど熱心に議論がなされているようだ。
 一方、指輪のアメコミについては台詞が英語ということ自体にまず違和感がある。やはりドイツ語でないと雰囲気が出ない。また、原曲が盛り上がる場面とアメコミで力を入れて描いている部分とが異なるところも問題。このあたりはあずみ涼氏の漫画の方がよく原曲を理解している。さらに細かいことを言うなら小柄なハーゲンは迫力不足。全体としてネット上にあるR指定の指輪絵巻物の方が私の好みには合っていた。

 おまけ。漫画の中にはネット上で読めるものもあるが、その中ではこちら"http://www.fujiigumi.com/manga01/seo.php"が面白かった。賢治さんんんんんんんんんんんんんんん

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