Conference Championship終了。今頃リーグ関係者は頭を抱えているのではなかろうか。プレイオフ開始前、リーグにとって状況はかなり良かった。プレイオフトップシード4チームがいずれも話題性に富んでいたのである。パーフェクトを狙うNew England、Back to BackのIndianapolis、America's TeamのDallasに(米国ファンが揶揄する)Saint FavreのいるGreen Bay。どれが勝ち上がっても話題には事欠かなかったはずだ。
ところがDivisional Playoffから状況が変わる。まずIndianapolisが負けて「事実上のスーパーボウル」としてAFCCGを盛り上げる手がなくなった。頑張ってIndyを倒したSan Diegoもトリプレッツが全員負傷で暗雲漂う状態。続いてDallasが敗れてファン数で全米最大規模のチームが消え去った。一部のファンはJessica Simpson叩きを始めたが後の祭り。というか彼女が原因でDallasが負けた訳ではない。いずれにせよこの時点でChampionshipの試合自体が今一つ盛り上がらない組み合わせになってしまった。
そしてAFCCGだが、予想通りSan Diegoのオフェンス不振でNew Englandが勝利。低温、強風とNew Englandのハイパーオフェンスが機能しなくなる絶好のコンディションだったにもかかわらず、彼らはディフェンスとランニングゲームであっさり勝利を掴んだ。San DiegoはInjury ReportになかったTomlinsonがほとんどプレイせず、DoubtfulだったRiversとGatesは強行出場したものの結果は冴えない展開。New Englandの勝負強さばかりが目立つ試合となった。
残る希望の星Green BayもNFCCGで敗北。Favreは2つのインターセプトを喫し、先週200ヤード走ったGrantは13回29ヤードと完全に封じられた。勝ったGiantsもミスは多く、Manningのパスは成功率5割ちょっと、インターセプトはなかったがファンブルは実に5回(幸いロストは1回)、Tynesは5回中2回のFGを失敗した。あれだけ獲得ヤードで圧倒しながらOTまでもつれたのはあまり褒められない。
とにもかくにもこれでSuperbowlはNew EnglandとNew York Giantsの試合に決定。希望通りに進まなかったがそれでもビッグマーケットチーム同士の対戦になったのはリーグにとって不幸中の幸いか。Eli ManningがSuperbowlに出るということで海外の掲示板では黙示録の世界が来るとのジョークも飛び出しているが、まあこういう予想外チームの快進撃があるからこそプレイオフをやる意味もあるのだろう。
試合の方では上にも指摘したとおりディフェンスが頑張った。特にレッドゾーンでは久しぶりに堅い守りを見せており、3回とも相手をFGにとどめた。New Englandオフェンスはレッドゾーン4回中3回TDを取っており、この差が試合を決定付けたと言ってもいいだろう。それ以外にもインターセプトを2回奪うなど、勝負強さを見せている。
スタッツ的には今一つ。特にパスディフェンスでは怪我人Riversにディープを10試投6成功109ヤードと結構稼がれた。プレイオフ絶好調なJacksonがディープ5回中4成功72ヤード、Chambersも5回中2成功37ヤードで、両ワイドアウトを抑え切れなかった様子が窺える。一方で2回のインターセプトもディープパスを奪ったもの。ディープを許してもエンドゾーンまで持っていかれなかったことも含め、致命傷は負わずに済んだ。
おそらくNew Englandとしては珍しくWRよりTEやRBのカバーに力を入れたのだろう。Gatesは6回中2成功17ヤード、Sprolesも4回中2成功5ヤードにとどめた。天候やSan Diegoの強みを考えるなら当然の対応かもしれない。もちろんその分だけWRに好きにやられたわけだが、ディープ一発通されてもショートパスをつなげなければドライブは断ち切れるという判断だろう(Riversのショートは27試投13成功102ヤードと成功率5割未満)。実際、San Diegoはついにエンドゾーンまでドライブをつなぐことができなかった。
ランディフェンスも一応合格点だ。Sprolesに1回ロングゲインを取られたが、主力のTurnerについては平均3.8ヤードに抑えている。もちろんTomlinsonが最後まで出場できていればそこまで簡単にはいかなかったかもしれない。その意味でNew Englandは幸運だったしSan Diegoは不運だった。もっともInjury Reportから外れていたTomlinsonがほとんど試合に出られなかったのは、San Diegoのリスクコントロールが失敗した証左とも言える。何があったかは分からないが、最大の武器を失った時点でSan Diegoの勝算が大きく低下したのは否定できない。ランディフェンスで10ヤード以上を許したのは計3回、ゼロヤード以下も計3回だった。
オフェンスでは年に1回はあると言われているBradyの逆噴射がよりによってこの試合で発生。今年は最大でもインターセプトは1試合2回だったが、ついに3回やらかしてしまった。今までも年に1回はインターセプト3以上の試合があったので、その意味では例年通りの展開。天候も含め、厳しいとは思っていたがやはり厳しかった訳だ。それで負けなかったのだからヨシとすべきだろう。それに前半(19試投11成功98ヤード)より後半(14試投11成功111ヤード)の方が効率が上がっているのはいい材料だ。
これまた天候の問題もあるが、MossとStallworthは完全に試合から消えていた。Mossは5回中1成功18ヤードにとどまり、Stallworthはディープ2回をいずれも取れなかった。活躍したのは前の試合に続きWelker(9回中7成功56ヤード)とFaulk(8回中8成功82ヤード)。前の試合よりはディープを攻めようとしたが、天候その他で失敗に終わった。それにしてもMossの低迷もかなり長引いている。果たして暖かいアリゾナで復調できるのか少々不安だ。
ランではMaroneyが2試合連続で絶好調。さすがDVOAリーグトップのランオフェンスだけある。中身を見ると10ヤード以上4回ゼロヤード以下4回と相変わらずBoom or Bustっぽいのだが、後半だけで106ヤードは立派。チーム全体でもランで13回のFDを取っており、悪天候下での戦い方がうまくいったことを示している。前の試合でAddaiを43ヤードに抑えたSan Diegoディフェンス相手だから本当に大したものだ。長いシーズンを複数のRBで乗り切るのは、プレイオフをにらめばいい手かもしれない。
さて第42回SuperbowlはNew EnglandとNew York Giantsがぶつかる。18戦全勝と13勝6敗(ただしアウェイは10勝1敗)のチーム同士であり、プレイオフを含めた総得点/総失点は2.1倍と1.1倍、オフェンスとディフェンスのYPAの差はプラス2.28とマイナス0.11だ。要するにデータで見ると圧倒的にNew Englandが優位にある。従ってGiantsに勝機があるとしたら、それは勢いかNew Englandのミスくらいしかない。
Bradyの逆噴射が既に出てしまったのはGiantsにとってはマイナス要因。場所がアリゾナで低温になりそうもないのも問題だ。雨や強風に期待するくらいだろうか。後はアウェイに強いという点が生かせるかどうかだが、そもそもアリゾナはどちらにとってもアウェイ。むしろ現状だとGiantsに対する判官びいきが増えそうなので雰囲気はホームかもしれない。
過去にWild Cardから駆け上がってSuperbowlを制した例はOakland、Denver、Baltimore、Pittsburgh、Indianapolisがある。1997年以降の10年間に限れば4回の事例があるのはGiantsにとってプラス。ただしこの4チームはいずれもシーズン中に11勝以上はしている。16試合制になった後で(ストライキシーズンを除き)10勝チームがSuperbowlを制したのは1988シーズンのSan Franciscoしかない。この年のSan Franciscoは6敗のうち4敗が7点差以内で、NFCのプレイオフでは2試合とも大差で勝利していた。今年のGiantsは7点差以内の敗北は1つのみ、プレイオフは最大10点差しかつけられなかった。
要するに過去のデータをどうひっくり返してもGiantsの勝算は乏しい。ここはデータに頼らず、勢いのみで臨むべきだろう(その意味では2週間のインターバルはきつい)。あとはEliの神がかりにでも期待する手かもしれない。Darth Belichick率いる悪の帝国を倒すことができるのはEli Skywalkerだけだ! Dallasが勝ってりゃJessica Simpsonをレイア姫に見立てることができたんだけどなあ。
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