押井守の「立喰師列伝」を見た。以下ネタバレ。といっても基本的に単行本「立喰師列伝」をそのまま映像化したような作品なのでネタバレだ何だという点をあまり気にする必要はないかもしれない。そもそも興味ない人の方が多いだろうし。
原作は立喰師についての分析のような文章がだらだらと並ぶものなのだが、それをそのままナレーションでやらせているのはある意味お見事。使っている映像はといえばデジカメで撮影したものをデジタル加工したものなので、動きは正直多くない。加工自体は凝った技術なのかもしれないが、見ている内にスライドを使った説明会に参加している気分になる。
ところどころに遊びは入っているが、別にギャグが中心という訳でもない。牛丼屋の店主が真っ白な灰に燃え尽きた場面では映画館に多少笑いも響いたが。×××××ランドについてしつこいほどbeep音を入れておく一方で交通標識に書かれているディズニーリゾートは堂々と映像に登場するところなど、面白いといえば面白い仕掛けだが、どこまでついて行ける人がいるのやら。
ついて行ける人といえば月見の銀次の場面で「紅い眼鏡」の一シーンが、哭きの犬丸の場面で「御先祖様万々歳」のジャケットが、冷やしたぬきの政の場面で「犬狼伝説」の一コマが登場するあたり、押井守オタク向けサービスというかオタク以外はついて行けないというか、とにかく見る人を選ぶ映画であることは間違いない。
台詞回しも相変わらずの押井節。もっとも解説文チックになっているので掛け合いの面白さみたいなものはない。全体として面白いかどうか微妙な出来といった感じか。基本的にはマニア向け作品だろう。やっぱり興行的には厳しいだろうな。
個人的に押井守の最高傑作は「御先祖様万々歳」、それに次ぐのが「紅い眼鏡」「天使のたまご」といった感じか。いずれもちと古いものばかり。正直「攻殻機動隊」以降の押井作品はどれも今一つのめり込みきれないものが多かった。今回も同じ結果。どうやら押井作品と自分の好みとのズレが定着してきたような気がする。
まあ、相変わらず川井憲次の音楽はよかったのだが。
コメント