2023NFL week12

 NFLは感謝祭weekが終了。今シーズンの感謝祭週は第8週に続き、なぜかbyeウイークのチームが存在しない週だ。それ以外は第4週から第14週まで、どこかしら試合のないチームがある。ファンが久しぶりにフットボールに触れる開幕直後の序盤や、プレイオフ争いが盛り上がる終盤、そして興行にとって書き入れ時であるだろう感謝祭週にbyeがなくなるのは理解できるのだが、第8週がなぜそうなっているのかは不明である。
 閑話休題、の前にもう一つ。引退したばかりのBradyが「今どきの若いもんは……」といった内容の発言をしていることが報じられていた。曰く「今日のNFLにはかつて存在した優秀さは見られなくなり、凡庸さが山ほどある。コーチングも、若いプレイヤーの進歩も、そしてスキームもかつてほど良くはない」そうで、2500年前から飽きることなく繰り返されている老害ムーブを早くも40代で見事に発現している。さすがGOAT。
 彼が批判しているのはルールの変更だ。この数年リーグの得点力が低下しているが、特に今シーズンはQBの負傷が多いことが理由の一つではないかと見られている。Bradyは怪我の多さについて、QBがルールで守られすぎていることが原因ではないかと指摘。選手がタックルに対して自らを守るための基本的な行動を怠っているのではないかと述べ、ルールのせいでオフェンスプレイヤーが自らを守ろうとしない気ままなプレイに走るようになっているとの見方を示している。
 さらに彼の矛先は大学にも向かっており、「自分の時代の方が大卒選手はプロでプレイする準備ができていた」とか「プロになるようスキルを発展させている者は多くない」といった話もしている。こちらは足元数年ではなく、12~13年前から見られる事象だそうで、要するに言いたい放題である。おそらくGOATの意見に正面切って反論する者は多くないだろうし、米国社会全体でも高齢化が進んでいることを踏まえるなら、この手の「昔は良かった」発言はむしろ歓迎されても不思議はない。
 だが昔のルールにはそれなりの危険があったこともまた事実だ。同じく比較的最近に引退したBreesは、今ではもう左腕でなければフットボールが投げられないという話をしている。2005年の肩の脱臼はほとんどキャリアを終わらせかねないほどの大怪我であり、手術に当たった医者は彼の肩を360度回転させるために12個もの靭帯固定用器具を使わなければならなかったそうだ。おかげでBreesのキャリアは伸び、将来の殿堂入りを確定させるほどの活躍をしたが、その代わりに今や彼の右腕は肩より上にはもう上がらなくなっているという。
 そういえばPeyton Manningはキャリア晩年には利き腕の指先の感覚がなくなっていたという話を聞いたことがある。Bradyにしてもあれだけの長いキャリアを経て、体のどこにも異常がないとは考えにくいだろう。やはりこのスポーツは現代の剣闘士と言わざるを得ない。問題はプレイヤー自身が負傷を勲章のように語る文化がまだ残っている点。こうした一種の「やせ我慢」は男社会ではむしろ評価対象になってきたが、今では有害な男らしさの範疇に入るかもしれない。それがいいのか悪いのかはわからないが。

 実際、今シーズンも引き続き怪我人が出ている。byeの前に膝を負傷したSaintsのThomasは結局IR入りとなったし、FalconsのHeinickeは引き続き練習が制限され、ゲームにはRiddersが出場して脳震盪プロトコル明けのCarr相手に勝利した。さらにSaintsはゲーム後に既に足首を負傷していたCBのLattimoreをやはりIRに入れた
 All-Proに選ばれたこともありながら、怪我などが理由でとうとう解雇されるに至ったのがColtsのLB、Leonardだ。2022年のオフに背中の手術をした彼だが、このシーズンは3試合出場しただけで背中を再度負傷してしまった。今年は出場はできているものの成績は冴えず、解雇後にウェーバーで拾うチームもなかった。彼は今後、Cowboysを訪問する予定だという。
 もちろん怪我だけではなくパフォーマンスが理由でプレイから外される選手もいる。Black FridayのゲームとなったDolphins @ Jetsで後者のWR、Lazardはhealthy scratch、つまり負傷していないにもかかわらずinactiveとされた。彼についてはシーズン前、Rodgersが彼を欲しがっていると報じられたときに触れたが、4年44ミリオンの契約をチームと結んだもののこれまでの10試合では41回もターゲットになりながらレシーブ数は20、TDは1つのみと完全に期待外れになっている。彼との契約はJetsファンがGMを批判する材料となっているほどだ。なおJetsは今週もBoyleを先発させ、そしてこちらもまた一方的に敗れた
 同じAFC東のPatriotsで期待外れなのはもちろんQB陣。今週のGiants戦でJonesとZappeのどちらが先発させるかについてBelichickはなかなか方針を明らかにしなかったが、結果的にはまたもJonesが先発。ただし成績は相変わらずで後半には早々にZappeが駆り出され、結果は地味すぎる展開で敗北となった。その裏でもう1人のQBであるWill Grierはウェーバーにかけられており、とにかくQBについては迷走状態が続いている。
 成績が理由で仕事を奪われるのは選手だけではない。今週何より目立ったのはPanthersがHCのReichをクビにした件。今シーズン途中の解雇はMcDanielsに次いで2人目だが、McDanielsが2シーズン目だったのに対しReichはまだ1シーズン目。ReichはChip Kelly、Ray Rhodesに続いて2年連続でHC職を解雇された形で、1年目のHCが解雇されるのはこれで3年連続(Meyer、Hackettに次ぐ)となる。同時にQBコーチのMcCownとRBコーチのStaleyも解雇されたそうだ。
 今シーズンのPanthersは1勝10敗という成績だけでなく、プレイの内実も冴えない状況が続いている(EPA/Pならオフェンス、ディフェンスとも29位)。Reichは途中でOCのBrownに3試合だけプレイコールを任せ、その後でまた自分がプレイコールをしたそうだが、それでもオフェンスを機能させることができなかったことがとどめを刺したようだ。今後はSTコーチのTaborが暫定HCとなり、プレイコールは再びBrownに戻る(Caldwellがアドバイザーになるという)。さらにこちらの記事ではGMのFittererも含め、他にも首筋が涼しい者がいるのではないかと指摘している。来シーズンの1巡指名権がない状態も含め、改めて立て直しが必要な状態にあるように見える。
 正直、コーチを入れ替えたからといって今シーズンの状況は簡単には変わらないだろう。先行してHCをクビにしたRaidersも、現状では引き続き負け越しが続いているし、新たな先発QBとなったO'ConnellのDAKOTAは控えに降格されたGaroppoloより低い。そしてPanthersのルーキーYoungの成績は、当時「先行きはかなり厳しい」と評価したZach Wilsonの1年目と比べ、DAKOTAでは上だがANY/Aでは下にいる。今から控えのDaltonを投入すれば多少は事態が改善するかもしれないし、どうせ1巡指名はBearsに行くのだからtankingのメリットも乏しいのは確かだが、そうした限られたメリットのためにYoungが経験を積むチャンスを奪うのがチームにとってプラスかどうかは不明だ。今オフのオーナーの決断が重要なのは間違いないが、それまでは失われたシーズンを歩むことは避けられないだろう。
 他にもクビになったコーチングスタッフはいる。Steelersは先週が終わった段階でOCのCanadaを解雇。チームの勝率に比べてオフェンスの残念さ加減はずっと話題になっていたが、とうとうチームも堪忍袋の緒が切れたのだろう。かくして新体制で臨んだ今週のゲームは勝利、したのだが得点は16点のみ。一応PickettのEPA/Pは0.27となかなかいい数字を残したが、ランは-0.23とあまり冴えなかった。もう1人解雇されたのは感謝祭ゲームで敗北したCommandersのDC、Del Rioだ。EPA/Pで見ると彼らのディフェンスはリーグ最弱であり、こちらも堪忍袋の緒が切れたのだと思われる。
 とまあ残念な話が存在する一方で立派な記録もある。ChiefsのKelceがTEとしては最も早くキャリア1万1000ヤードを達成したそうだ。今シーズンのChiefsオフェンスは例年ほどの強さは見られないものの、Kelceは相変わらずMahomesとのホットラインで成績を積み上げており、チームのレシーバーの中で最も多いEPA(39.871)を記録している。基本的に安定していい成績を収めるQBがいればチームは強くなるのだが、それに加えて1人「エース」と呼べるレシーバーがいれば毎年のように優勝争いに絡むことも可能、という一例だろう。
 最後に、そのChiefsと対戦したRaidersでは控えSのTeamerが飲酒運転とスピード違反で逮捕され、inactiveとなっていた。気のせいかもしれないが、どうも今年はシーズン中の逮捕が目立っている。そしてRaidersは試合後にTeamerと、あとCBのPetersを解雇した
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