ベテランかドラフトか

 byeウィークを前にBarnwellがPatriotsの再建について色々と書いていた。個人的には「確かにその通りではあるんだけど……」という総論賛成各論反対的な感想を抱いたのだが、その中でも1点、QBをどうするかについてちょっと考えてみたい。
 Barnwellは来シーズン以降の対応として、ベテランQBを使うかドラフト候補のうちトップ2のどちらかを選ぶという選択肢を示しており、もしドラフトでCaleb WilliamsとDrake Mayeのどちらも取れない場合は、他のリスクの高い1巡下位や2巡上位のQBに手を伸ばす手段もあるが、それよりもいいWRを指名すべきだと記している。後者の場合はおそらくベテランQBをつなぎに使うことを視野に入れているのだろうし、このオフにはそうした候補がかなり大勢出てくる、という意見だ。
 だが本当にドラフトQBはトップ2以外は外れなのだろうか。また成績的には平凡なベテランQBで穴埋めしつつ他のポジションを強化することで本当にチームは優勝に近づくのだろうか。それを調べるために直近20年間(2003-2022)に規定試投数に達した全QBをリストアップし、うちANY/Aでトップ10に入った回数を調べてみた。毎年安定して高い成績を残すQBを抱えるチームとそうでないチームがそれぞれどのくらい優勝にたどりつけたか、さらにそれらのQBがどのようなドラフト順位で指名されたかを見るのが狙いだ。
 まず規定数に達したシーズンのうちANY/Aでトップ10に入った比率でランキングすると、5割を超えるQBが17人いた。その中にはキャリア晩年のTrent Green(3シーズン中3回)や、まだキャリアの短いBurrow(3シーズン中2回)などが混じっているのだが、それでもこのあたりのQBは優秀な選手と見てもいいだろう。実際、彼らはこの20年間のうち15回の優勝を手に入れており、有能なQBがいた方がチームは優勝に近づきやすいことが数字からも見て取れる。
 特に10回以上トップ10に入っているBrady(19シーズン中16回)、Brees(18シーズン中14回)、Peyton Manning(12シーズン中11回)、Rodgers(15シーズン中11回)、そしてRoethlisberger(17シーズン中11回)は全員が合わせて12回の優勝を記録しており、コンスタントにいい成績を収めるQBのいるチームほど優勝に手が届きやすいことが分かる。逆にトップ10に入る確率が5割以下のQBたちはこの期間中に150人もいたのだが、彼らが優勝できたのは5回だけ。つまり一流QBのいたチームの優勝確率は17人中15回だったのに対し、そうでないチームは150人中5回にとどまった、とも考えられる。
 人数単位ではなくシーズン単位で見ても5割超のQBが延べ158シーズン中15回(9.6%)の優勝、それ以外のQBが延べ519シーズン中の5回(1.0%)優勝となっており、つまり並以下のQBで優勝を狙うのは一流QBで狙うより10倍近くも難しいことが分かる。一流QB以外が優勝にありつけるのは4回に1回しかない確率であり、しかもその数少ないチャンスをトップ10に入れないチーム(22チームだが実際はそれ以上と考えていい)で奪い合わなければならないのだから、1%という数字は妥当に見える。
 一方でトップ10に5割超の確率で入ったQBの比率は、規定数に達したQBたちのうちの10.2%。先発に値するQBたちの中でコンスタントにいい成績を残せるQBは10人に1人くらいしかいない計算となる。ドラフトでこうしたQBを指名できる確率は、ドラフト指名QBの中には控えでキャリアを終える選手がいることも考えるなら、さらに低い確率になるだろう。一見するとスターQBを追い求めるより、並以下のQBで少ない確率を狙う方がわずかとはいえ優勝にたどり着ける可能性もありそうに見える。
 ただし、だからと言ってドラフトで当たりQBを狙う意味がないとは言えない。ドラフト上位なら的中率はもっと上がり、従ってくじを引く方が有利になると思われるからだ。問題は、Barnwellの指摘するようにトップ2以外はリスクに見合わないほど当たり確率が低いのかどうか、である。例えば2003年以降も現役だった全体1位指名QBはTestaverde、Bledsoeなどを含めて21人いたのだが、うちトップ10に5割超入ったQBは2人(PeytonとBurrow)だけ。2位指名になると1人もおらず、トップ2指名の実績を見てもQB全体のくじ当選確率と比べてそれほど高い数字には見えない。
 もう1つ、EPAを使ったデータも見てみよう。こちらで21世紀に入って以降、全体1位か2位で指名されたQBがその現役時代(2022シーズンまで)にどのくらいのQB EPA/Pを残したかを算出し、彼と同時代にプレイしたQBたちのうちプレイ回数上位32人の中で彼がどの位置を占めているかを調べた。対象となるQBは2001年1位指名のMichael Vickから2021年2位指名のZach Wilsonまで計21人となる。
 このうちGriffinはそもそも同時代のQBたちの中でプレイ回数上位32人に入らなかった。残る20人は全員その範疇に入ることは入ったのだが、JaMarcus RussellとZach Wilsonの2人は堂々の最下位、さらにDavid Carrが31位でBradfordが30位と全体の5分の1は30位台のどん底に低迷した。それ以外にも20位台が11人を占めており、つまり4分の3は下位を低迷していたと言える。またStaffordも19位にとどまり、つまり真ん中より下にいた。
 結局、上位に顔を出したのはたったの4人。Winston(15位)、Palmer(14位)、Luck(11位)、そしてまだキャリアが短くこの順位をいつまで保持できるかは不明だが、Burrowが昨シーズンまでの時点では7位をキープしている。1位や2位で指名されたQBたちは当然ながらドラフト前には高い評価を得ていたわけだし、その時点ではNFLで成功する確率が最も高いと期待されていた者が大半だろう。にもかかわらず彼らの大半は同時代のQBたちの中で下位にとどまる成績しか残せなかったことになる。
 もう少し範囲を広げ、Peytonが指名された1998年以降を見ても状況はあまり変わらない。対象としては1998年のPeytonとRyan Leaf、1999年のTim CouchとDonovan McNabbが追加されるが、明白に成功したのはPeytonだけ。残る3人はMcNabbが17位に入ったのが最高位であり、CouchとLeafは明白にbustであった。上位に入れるのがようやく4~5人に1人、トップ10になれるのは10人に1人といった比率に過ぎず、正直高いとは思えない。
 もちろん20世紀当時と現在とではスカウティング能力が大きく違っている。アメフトにおいて最も重要なポジションであるQBの全体1位指名は、Peyton以降は26年で19人をQBが占めているのに対し、その前の26年にはたった6人しかいなかった。時代とともにチームのQB評価能力が上がっているのなら、現時点でトップ2と考えられているQBを指名できない場合、当たりを引く確率は過去のデータから予想できるより低くなると考えられる。問題はそれがどの程度下がるのか。諦めて他のポジションを補強し、並QBを使った1%程度の可能性に賭ける方が有利だと言えるほど、1巡下位や2巡で当たりくじを引く確率は本当に低いのか。
 全体1位と2位のQB以外について、最初に紹介したトップ10入り5割超のQBたち調べてみると、3位から1巡上位での指名が4人、同下位から2巡が6人、それ以降が6人、ドラフト外が3人という並びになる。もちろん全体1位や2位に比べて指名数が多くなる分だけハードルは上がるのだが、例えば1998年以降に指名された3~16位のQBは30人、17~64位は43人となっており、1~2位指名の的中率と比べそれほど劇的に下がるようには見えない。
 個人的には2巡あたりまでに指名されるQBは先発も想定した者も多く、そしてそういったQBたちの間では指名上位と下位との間でそれほど極端な差があるようには感じられない。もちろん指名が早いほど的中確率は高いだろうけど、その確率は一般に思われているよりもなだらかに低下していくと考えてもいいように思う。こちらにはQBに限らずドラフト全体の指名順とバリューのグラフが載っているが、特に最近の分析ほどバリューの低下は緩やかにとどまると見ている。
 以上を踏まえるなら、Barnwellが書いているように「トップ2が指名できないなら他のポジション強化を図れ」という結論には飛びつかない方がよさそうだ。少なくとも過去の実績を見る限り、1巡トップクラスとその下、さらには1巡下位から2巡にかけて指名されたQBたちの実力には、一般に思われているほど大きな差はない。むしろ実力が並レベルとわかっているベテランを使う方が、極めて低い優勝の可能性に賭けることを意味しているわけで、そちらのくじを引く方がドラフトでくじを引くより勝率が高いとは言い切れないように思う。

 もちろん以上は完全にデータのみを見た話であり、実際にはそのドラフトにエントリーしている選手たちを個別に見て考える必要があるだろう。GMがこのQBなら一流になれると自信をもって推すのならトレードアップしてでも手に入れるべきだろうし、評判が高くても実際には大したことのないQBだと思えば指名を避けてトレードダウンをする手もある。もしかしたら来年のドラフトはトップ2人とそれ以外との格差が極端に大きいのかもしれず、だとすれば来年の指名は諦めるという判断もあるだろう。もちろんその評価が正しいかどうかはclapshootになってしまうのだが。
 現在のNFLで言えば、トップ10入りが5割超のQBはMahomes、Rodgers、Prescott、Burrow、Wilson、Garoppolo、Cousinsの6人となる。ただし最後の2人は先発できなかったシーズンも含めれば5割以下に落ち込む選手であり、またBurrowも今のままシーズンが終わればやはり5割以下になってしまう。代わりにStroudとPurdyは今のままなら5割超のカテゴリーに入り、あとAllen、Tagovailoa、Goffなどは5割ちょうどに届く見通し。RaidersとVikings(あと可能性としてはBroncos)を除き、ここに挙げたQBたちを持っているチームは少なくとも来シーズンの先発に現時点から悩む必要はないだろう。
 逆に言うとそれ以外の20チーム強は、まだ実力見定め中の若手を抱えているところ(Steelers、Colts、Panthersあたり)を除き、積極的に上位でQBを指名する選択肢を検討する方がよさそうに思える。特に中位ではなく下位の成績しか残していないQBのいるチームは、2巡までの指名に値する選手が残っていたら深く考えずに指名した方がいい。真のスターQBが手に入るなら、他のポジションなどは後から強化しても十分間に合う。何しろQBのキャリアは長いのだから、「周囲を強化してから」などと言い訳をせずにさっさと指名し、逸失利益を避けるほうがいいだろう。なに、外れだったらまた数年後に再度指名すればいいのだ。くじを引く回数を増やさなければ、期待値は上がらない。
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