例えばWhy Was It Europeans Who Conquered the World?ではアブストの最後に火薬技術の発展における西欧の優勢が結果として植民地、奴隷貿易、果ては産業革命という結果をもたらしたとまで書いており、彼が戦争関連の技術と産業革命との間につながりを想定していることが改めて示されている。ただこの文中では具体的なその論拠は示しておらず、産業革命前から欧州ではLearning by Doingを通じてイノベーションが行われていたと記しているのみだ。
続いて紹介するのが産業革命の淵源に海軍の強化があるという説。こちらは2006年にNicholas KyriazisがSeapower and Socioeconomic Changeの中で唱えたらしいのだが、有料なため詳細な中身は分からない。それでもアブストを読むと、軍事革命において海軍国のルートを選んだところは「広範な利害の同盟を必要とするため、より民主的な体制、より効果的で複雑な形態を取る新たな組織の発展、新たな知識や専門技能の取得と普及がもたらされ、それによって制度の変化と経済成長がもたらされる」と主張しているらしい。海軍国ルートという限定条件付きではあるが軍事革命が経済成長につながるという見解は、少なくともこの時期には指摘されていたわけだ。
同じ見解を含め、軍事革命と産業革命の関係性について色々と紹介しているのがDaniel SokのAn Assessment of the Military Revolution。まず最初に出てくるのは海軍国というより軍事革命で兵数を増やした欧州諸国全般に関する指摘で、戦争用の資金調達の必要性から借り入れや金融市場が生まれ、また軍需物資の需要増加は衣服の製造、金属加工、農業といったいくつかの産業分野が工業化への道を歩むのを助けたとしている(p34)。政府は必要な産業に対する補助金も出し、産業の育成自体にも取り組んだ。
コメント