ナポレオンの生涯 第4巻

 ジョミニが書いてHalleckが英訳したLife of Napoleon, Vol. IV.の翻訳終了。これで全4巻の翻訳が終わった。相変わらず他人に見せられるような内容ではないが、第3巻の翻訳を終えたのが今年1月だったので、随分と早いペースに思える。ただし前にも書いた通り第4巻の最後の方は索引となっており、そこは翻訳していない。
 この巻で最も特徴的なのは1815年戦役について取り上げた部分だろう。原著を見ると分かるのだが、ジョミニはワーテルロー戦役についてたった40ページしか書いていないのに対し、翻訳者のHulleckは(いろいろな脚注を入れているとはいえ)95ページもこの章に費やしている。なぜそうなっているかといえば、ジョミニが後にこの章だけ別の本にして出版しているからだ。それがPrécis politique et militaire de la campagne de 1815という、ナポレオンの生涯から10年ちょっと後に出版された本だ。
 どうやらジョミニはナポレオンの生涯について出版する際に、書いたはずの1815年戦役に関する原稿をなくしてしまったらしい。仕方なく彼は手早くまとめた短い文章でそこの部分をごまかして出版にこぎ着けたのだが、後になってなくなった草稿が見つかり、その分だけ改めて出版することにしたのだそうだ。といってもナポレオンの一人称を使っていたナポレオンの生涯とは異なり、この本は三人称での説明に終始しているといった違いはある。
 Hulleckはこの本を手に入れ、最終章だけはこちらを使って翻訳したようだ。ただし全訳ではなく抄訳になっており、また改めてナポレオンの一人称に書き直すと行った修正を加えている。まあこの本はそれ自体260ページとかなりのボリュームなので、Hulleckも手を抜いたのかもしれない。正直、ワーテルロー戦役については最近の研究の方がずっと充実しているため、ジョミニの本を全訳するメリットはそれほど大きくはない。
 いずれにせよこれでジョミニの翻訳は一段落だ。次はクラウゼヴィッツでも翻訳してみようか。
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