Lanceトレード

 NFLではプレシーズンの最終週が終わった。前から書いている通り、プレシーズンは選手たちの能力を見極めたいコーチ陣にとってはともかく、普通のファンにとっては正直大した意味はない。Schatsがツイートしているように、プレシーズンのゲーム数が減ったことで「伝統」がいろいろと乱れているのは確かだが、それにどれほどの意味があるかと言われると正直返答に困る。
 それでもはっきりしていることがある。プレシーズンが終わるといよいよ最終ロースターが固まり、本番に向けての準備が整うことだ。当然ながらその過程ではいらない選手が安くトレードされたり、もしくは容赦なく解雇される。大本営のこちらの記事でもシーズン前にトレードされる候補のQBとしてLance、カットの候補としてMariota、Kyle Allen、Matt Barkleyの名前が挙げられている。そして予想通り、Lanceはトレードされた。
 トレード先はCowboysで、49ersが受け取る対価は2024年の4巡だ。CowboysはLanceのために2023シーズンには94万ドル、2024シーズンはサラリー1.55ミリオンとロースターボーナス4.255ミリオンを支払うことになるそうで、合計すると2年で6.745ミリオンの全額保証になるという。49ersが2年かけて13.9ミリオンのデッドマネーを処理してくれる結果であり、年平均で見た場合にはMinshewより安い普通のバックアップQBのサラリーと考えられる。
 知っての通り、Lanceは2021年に全体3位で指名されたQBであり、しかも49ersは彼を手に入れるために1巡を3つと3巡を1つ費やしている。そのLanceが49ersでプレイしたのは8試合(先発は4試合)にとどまっているわけで、ルーキー契約とはいえ先発1試合当たりの支払額は7ミリオン弱になる。17試合に換算すれば118ミリオンと最高額QB(Herbert)の年平均の倍を超える水準なわけで、これはなかなかしんどい数字だ。
 彼がプレイした8試合という数字は、1967年にNFLとAFLが一緒にドラフトするようになって以降、トップ5でドラフトされた選手がデビューしたチームで記録した数字としては最少となる。ある意味で記録に残る選手となってしまったのだが、これは要するに49ersの大失敗と言っていいのだろうか。
 結果的に見ればその通りだ。BarnwellによるとそもそもLanceはカレッジで2019年に大活躍したものの2020年はCovid-19のせいで1試合しかプレイせず、実績が限られた状態で49ersにドラフトされた。その時点でリスクの高い指名だったと言えるが、NFL1年目はGaroppoloの控えという位置づけでそこそこプレイしたものの、2年目は開幕2試合目で早々に負傷してしまった。この3年間、彼はいろいろな事情から限られたプレイ機会しか与えられなかったのである。
 Lanceの負傷後、49ersではMr. IrrelevantのPurdyが予想以上の大活躍を見せ、Lanceは先発から追われることになった。だがPurdyを支えたレシーバーコンビ(McCaffreyとKittle)はLanceがプレイしているときにはフィールドにいなかったわけで、だとするとLanceの実績が冴えないのはチームメイトに恵まれなかったためとも考えられる。もちろん、このオフに新たに参入したDarnoldとのバックアップ競争に負けた点は言い訳が効かないものの、いろいろな面でLanceが不運だった点は否定できないだろう。
 もし49ersに批判される点があるとしたら、彼らがLanceのために大量の指名権を投入した点にある。これらをトレードで手に入れたDolphinsはそれを使ってチーム力を大きく向上させており、だから本当の勝者は彼らだとの意見も理解できなくはない。とはいえ、ドラフトトップクラスの優秀なQBを手に入れるには一定程度のドラフト権を譲らなければならないことも確か。1巡2つは払い過ぎだったかもしれないが、ではそれより安く支払った場合に有能なQBを手に入れる保証があったかというと判断は難しい。
 そうではなく、Garoppoloという有能なQBを抱えていながら上位でQB指名に踏み切ったことを批判するのなら辻褄は合う。指名前からGaroppoloはそれなりに優秀な数字を残していた。負傷という問題がある分を差し引かなければならないのは確かだが、それでもトレードアップはやりすぎで、普通に最初の指名順位(12位)まで待ってQBを指名する手もあっただろう。いやそもそもQB指名を焦らず、他のポジションの強化を進めながら下位でQBを拾う方法も可能だったし、Purdyという当たりを引いているのを見てもやはり(結果論ではあるものの)49ersは間違えたと言いたくなる。
 一方、Cowboysにとってのプラスマイナスはちょっと読みづらい。昨シーズンいくつかの試合に出たCooper Rushは今年2.1ミリオン、来年2.9ミリオン弱のキャップヒットとなっている。彼は今年のサラリーを全額保証されており、クビにしてもキャップスペースが空くことはない。一方、Lanceは今年のキャップヒットは少ないが来年は5.3ミリオンまでキャップヒットが増え、これまた全額保証されているためにクビにしても負担は消えない。加えてPrescottのキャップヒットは2024年に急騰するため、このままだと来年はキャップオーバーになる計算だ。ただでさえ楽そうではない来年のキャップを、実力不明な控えQBによってさらに苦しくするメリットは果たして存在するのだろうか。
 Cowboysにとってトレードが成功だったというには、Prescottが負傷し、その後をLanceがきっちり埋める場合になるだろう。もちろんPurdyが先発の座を奪い取ったようにLanceが大活躍を見せれば4巡は安すぎたということになるかもしれないが、限られているとはいえ過去の試合でそれほど冴えた数字を残していないQBにそれが期待できるかどうかは不明。Barnwellもトレード前に書いた記事でトレード先にCowboysを予想していなかったように、傍から見る限り合理的には思えない選択なのだろう。無駄に来年のキャップを苦しくしただけで終わり、になりそうな気もする。
 というわけで「豊作」2021ドラフトの1巡指名QBもこれで2人目が先発の座から滑り落ちた。まだLawrence、Fields、Jonesが先発にしがみついているが、オプション行使を含めて成果が求められるこの3年目が終わったところで、果たして何人が生き残るのだろうか。怖いもの見たさで待つ、というか怖いものしか見られないんじゃないかという気もしている。

 というわけで2年前のドラフト組が早々に厳しいプロの洗礼を浴びている一方、今年のドラフト組ではRichardsonがColtsの先発に指名された。既に7月にはPanthersの先発に任命されていた全体1位指名のYoungは、プレシーズン最終週にいいプレイを見せている。そして全体2位指名のStroudもプレシーズン最終週後に開幕週の先発に指名された。これで1巡指名の3人はいずれも開幕先発となり、不作と言われた昨年の0人を大きく超えて2021年ドラフト組(Lawrence、Wilson、Jonesの3人がルーキー開幕先発)と並んだ。
 それ以外にも控えのQBにいくつか動きはある。BridgewaterはLionsの控えとして1年契約を結びBrownsはCardinalsにDobbsと2024年の7巡を渡し、代わりに2024年の5巡を手に入れた。またカットトラッカーにもロースター関連の動きが載っている。先発QBの動向は見えてきたが、控えとロースターに残れないレベルのQBについてはこれから振り分けが進んでいくと思われる。
 他のポジションではちょっと興味深かったのがPatriotsがElliottと1年契約を結んだこと。インセンティブを含めて金額は最大6ミリオンとなっているが、こちらによれば実際は1年2.9ミリオンの契約だそうだ。彼のキャリアでシーズンのキャップヒットが4ミリオン以下となるのはこれが初めてで、妙に過大評価の印象があったElliottもようやく普通のRB契約に至ったもよう。一方JetsはCookを相手に最高8.6ミリオン、実際には保証額は5.8ミリオンという契約を結んだようで、こちらはちょっと奮発しすぎなイメージ。Rodgersの契約見直しで懐が温まったためかもしれない。
 一方RBでもめているのがColts。Taylorが契約への不満からキャンプを去り、チームは彼にトレード先を探すことを認めた契約面ではRBにとって厳しい時代であるため、Taylorにとっても逆風下のトレード先探しとなるが、さて結果はどうなるだろうか。一応、RaidersのJacobsが12ミリオンの新しい1年契約を結んだそうで、全く可能性がゼロというわけではなさそうだが。
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