色んな意味で波乱

　今年のＮＦＬは開幕当初からいろいろ波乱含みである。まずNew Englandファンとして避けて通れない話題がスパイ疑惑。まだ正式な結果は出ていないようだが、報道によるとリーグはルール違反と判断して厳しいペナルティを課すらしい。
　ＮＦＬは試合中にサイドラインやコーチブースなどでビデオ撮影することを禁止している。New Englandはそのルールに違反し、JetsのＤＣが出しているサイン（おそらくブロックサイン）を撮影していたのだという。ペナルティの内容は分からないが、複数のドラフト権を失うことになるとか。ルール違反が事実であればリーグの判断に従ってきちんをペナルティを受けるべきだろう。
　個人的には、この後のNew Englandのパフォーマンスがどうなるかに興味を持っている。こうした処分を受けることになれば、以後はビデオ撮影はできないだろうし、しなくなるだろう。撮影せずに試合をしてもなおNew Englandが引き続き強力な試合を展開できるなら、ビデオ撮影の効果は実は大したことがないという結論になり、そんなことのためにドラフト権を失ったという事実がいっそう馬鹿げて見えてくる。もしビデオ撮影をやめた結果としてNew Englandが勝てなくなったりすれば、Belichickにとっては致命的だろう。彼の過去の栄光も全てスパイ行為の成果ではないかと疑われるようになるからだ。いずれにせよ愚かなことをしたものである。

　馬鹿げているというべきかどうか何とも悩ましいのがFryeのトレード。たった１Ｑちょっとのパフォーマンスだけで先発だと決めたＱＢをあっさり切り捨てるのは、普通に考えればおかしい。Fryeの被サックの多さが問題だとの意見も多いが、一方で５つのサックのうち明らかにFryeの責任といえるものはそう多くないとの指摘もある"http://sports.aol.com/fanhouse/2007/09/10/six-browns-sacks-finding-out-who-to-blame/"。判断を下すのがあまりに安易ではないか、という訳だ。
　ただ、「先発といってもコイントスで選ばれた先発に過ぎない」との指摘があることも確か。さらにFryeの代わりにドラ６をゲットしたのはむしろファインプレーではないかとの意見もある。SeattleはFryeを取って代わりにWallaceをレシーバーに転向させるつもりだといわれるが、それならLeftwichを雇う手もあった。正直、ClevelandにせよSeattleにせよ、あまりいい行動をしたように思えないのは確かだ。

　第一週はけが人も続出した。多くの選手がシーズンエンドを迎え、BuffaloのKevin Everettは救急車で担ぎこまれる事態に至った。幸いなことにEverettは手術後に手や足を動かせるようになっており、このまま行けば日常生活を送れるまでに回復しそうだとの話"http://sports.espn.go.com/nfl/news/story?id=3014742"。ただ、医者や専門家が言っているようにこれはtotally spectacular, totally unexpectedな結果であり、彼が極めて危機的な状態に陥っていたことは間違いない。
　アメフトファンとして悩ましいのは、Everettの負傷が滅多にありえないレアケースだと断言しにくいところにある。確かに命に関わるほどの大怪我というのは限られているかもしれないが、アメフトというスポーツがコンスタントに人体に大きなダメージを与えていることは否定できない。こちら"http://www.mensjournal.com/feature/M162/M162_CasualtiesoftheNFL.html"には多大なダメージを蓄積して引退した選手たちのその後が紹介されているが、人生に影響するほどのダメージを受けている選手もいるようだ。
　スポーツに負傷はつきものだ。ただアメフトの場合、その頻度が多くの球技に比べて異常に高いのが問題。毎試合のように負傷者が出るのが当たり前というのは、他のスポーツではあまり考えられない。ＮＦＬでも怪我がチームの成績に大きく影響するし、怪我を前提にどうデプスを作るかがチームの勝敗の秘訣だとも言われている。あまりに怪我が当たり前すぎて、私のようなファンもつい負傷しているのが自分と同じ人間であることを忘れているのかもしれない。
　昔に比べればアメフトは野蛮ではなくなっている。ルーズベルト大統領が禁止をちらつかせた１９０５年には１８人が死去し１５９人が重傷を負ったという"http://goblue.jp/football/articles/history.htm"。その意味では昔よりも進歩していると言っていいだろう。だが、他の球技に比べて高い危険性はいまでもあるし、その危険性はブロックやタックルがルールで合法化されているこのスポーツの根幹に由来するものだと考えられる。我々ファンは、他人の肉体を犠牲にした娯楽を享受しているのだ。古代ローマで、剣闘士の殺し合いを楽しんでいた市民たちのように。

　色々と考えさせられることの多い開幕週だった。でも本日一番の驚きはＮＦＬとは無関係だが安倍首相の辞任表明。