静かなオフが続いているNFLだが、時にちょっとしたさざ波も起きている。1つは
CardinalsがDeAndre Hopkinsをこの時期に解雇した 件。CardsはこのオフにHCとGMを交代しており、新たな体制開始にともなってロースターのシャッフルを始めると思われていたし、その際にはHopkinsが最初の候補になると思われていたそうだ。だが新GMはこの時期までHopkinsを手元に置いていた。どうやらトレード先を探していたらしい。残念ながらそうした相手は見つからなかったわけだが。
彼はこの後どうなるのだろうか。タイミング的にはチームを探すのが難しい時期になってしまっているが、それでも報道では
いくつかのチームがbest fitだと言われている 。もちろんそうした条件が満たされるかどうかは金額次第。正直、Cardsと結んだ2年54.5ミリオンの水準で他チームと契約するのは困難だと思う。後は近く31歳になるというその年齢をどう見るか。タイミングの悪いFAにとってはあまりプラス材料にはならないが、かつてPatriotsと契約したNewtonのようにベテランミニマムまで下げる必要があるかどうかはわからない。
次は
Garoppoloに関するこちらのニュース 。彼は契約にウェーバー条項を付け加えなければRaidersのフィジカルテストを通過できなかっただろう、という見出しになっている。元になったのは
こちらの報道 だそうで、一部ではGaroppoloはRaidersでプレイできないのではないかと思った人もいたようだ。
この件についてFitzgeraldは
Jimmy Garoppolo, The Raiders, and an Injury Waiver という文章を記して誤解を解こうとしている。どうやらこの手の契約は実はNFLではありふれており、特にRaidersのようにフィジカルのチェックにやたら神経質なチームでは珍しくないようだ。そして実際に問題があればそもそも契約の署名に至ることなく話は破談となり、どちらも別の道を探すようになるのがいつもの流れ。実際、過去にRaidersと契約できなかった選手が別のチームでフィジカルチェックにパスし、長期にわたってそこでプレイを続けた例もあるという。
要するに医者によって判断はかなり違う、というのがFitzgeraldの指摘だ。だからあまりこの手の話を深刻にとらえる必要はないんだろう。今回の場合、既にGaropploはRaidersと契約しているわけで、つまりフィジカルには問題ないと判断されている。もちろん人間いつどこで怪我するかはわからないし、結果として彼がRaidersで1度もプレイしないまま終わる可能性は残っているが、現時点で大騒ぎする必要性は正直なさそうな話だった。契約がらみの話は複雑なので、ありふれていても詳しくない記者の目には珍しい事例に見えてしまった、のかもしれない。
後はほとんど動きがない時期だけに、大本営もいろいろとネタを掘り返して記事に仕立てようとしている。一例が
Next Gen Statsのデータを使ったこちらの記事 。2022シーズンの最も「爆発的」なランナーは誰かという記事で、トップ10の中に3人のQB(Allen、Jackson、Fields)が顔を出しているという。
でもここで取り上げているデータ、正直あまり意味があると思えないものが多い。ランキング生成に際して10ヤード以上のラン回数、その割合、時速15マイル以上のランの回数と割合を取り上げているようだが、この2種類のデータがランにおいてどのような意味を持っているのか、どれだけ重要なのか、そしてブロッキングやプレイコールといったランナー以外の要因にどれだけ左右されているか、といった点についての説明は不十分。単なるオフの埋め草にそこまで細かいことを求めても仕方ないと言えばその通りだが、要はその程度の認識で軽く読み飛ばせばいい記事だとも言える。
実際、10ヤード以上のランの割合は当然ながらQBの方が高くなっており、RBは大半が10%強にとどまっている。もし本当にプレイ当たりの「爆発力」を知りたいのならラン回数ではなく割合のみを見ればいいはずだが、そうなるとおそらく上位はQBだらけになってしまう。それを避けるために回数という質ではなく量のデータを入れたのだろうが、結果として全然爆発的でないプレイがたくさんある選手もランキング上位に顔を並べるようになっている。例えば10位のCookはトータルEPAが-50.2とリーグ最低だし、8位のHenryも同-30.6と下から6番手に位置している。
RBの中では10ヤード以上の割合が15%を超えているChubbとPollardの2人が特筆に値すると思うが、一方で彼らは時速15マイル以上のランの割合はそれほど高くない。一方EtienneやWalkerは後者の割合が結構高いが、彼らのEPA/PはChubbやPollardよりは低いわけで、つまり速度と得点への貢献度はあまり相関していないように見える。とまあ深く考えれば考えるほど何の意味があるのかわからなくなってしまうランキングであり、だから深く考えない方がいいんだろう。Don't think. Feel.
というわけでネタ切れのNFLから、現在試合をやっているUSFLにちょっと視点を転じよう。5月末時点で7試合が終了し、そろそろシーズンの行方が見えてきそうなタイミングに入っているのだが、
順位表 を見ると北地区は3チームが負け越しているのに対し、南地区は全チーム勝ち越しと、こちらもえらく地区間の実力が偏っているように見える。南北は逆だが
XFLの状況 とかなり似通っている。
得失点差を見ても同様で、北地区では実に3チームが得失点差マイナスとなっている。唯一得失点差ゼロなのがGeneralsだが、彼らは2勝5敗と今シーズンの勝ち越しはもうなくなった状態。実に4試合で1ドライブ差以内の敗北となっていることが響いた格好だ。一方南地区は4チームがそろって得失点差プラスの状態。もちろん残り3試合によっては事態が変わる可能性は十分あるが、現状ではかなり北と南の差が大きいと見るほかない。
地区ごとに実力差が開くのはNFLでもよくある事例だが、NFLの場合はトータル8地区もあるためカンファレンス単位で見ればそこまで差がつくことはあまりなさそうに思える。逆に言うと地区数の少ないリーグであればこうした差がつきやすいのではないかと予想できるわけだ。特に現状のUSFLは試合数も少なく、それだけブレが生じやすい状態にある。では2地区8チームのリーグでこのくらいの格差が生じるのは珍しくないのか、それともそうした前提を置いたうえでもなお珍しい事態なのか。
それを調べるために同じ2地区8チームの事例を調べてみた。1つはもちろん今年のXFLで、後は1960年から1965年までのAFLだ。ただしXFLはシーズン10試合、AFLは14試合となっているので、そのあたりも踏まえてデータを取る必要がある。というわけで以下では強い方の地区がシーズンでどのくらいプラスの得失点差を積み重ねたかを調べ、それをシーズン試合数(AFLなら14、XFLは10、今年のUSFLは7)で割ってみた。結果は以下の通りだ。
AFL1961 16.7
USFL2023 13.0
XFL2023 10.3
AFL1964 10.3
AFL1963 9.8
AFL1965 8.6
AFL1962 4.3
AFL1960 0.5
まだ3試合残っている現状で断言はできないが、このデータを見る限り今年のUSFLの地区実力差はかなり大きい方だと言えそうだ。少なくともXFLよりは差がついている。1960年代のAFLは、当時のゲームが今より地味な点数で終わることが多かった影響もあるとはいえ、ほとんどのシーズンにおいてUSFLやXFLほどの地区格差はなかった、ように見える。
USFLの方もシーズンが終わったらANY/Aでも調べてみるとしよう。XFLの方もそうだったが、チーム数も試合数も少ない状態だと結構アップセットが起きやすくなるわけで、その意味では最終的にANY/Aからは予想もできないチームがまた優勝している可能性は高そうだ。
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