NFLではFAの動きが鈍くなっていた。例えば
残っているFA選手についてのランキングを見ても、トップが30歳のOBJであるように、あまり魅力的に見えない選手が並んでいる。QBで見るなら8番手にBridgewaterがいるくらい。もちろん彼らがまたどこかと契約する可能性は十分あるが、金額的には地味なものになるだろうし、ニュースとしても盛り上がりはほとんどなかろう……そんな風に思っていた時期もありました。
ここに来て急に浮上したのが
Lamar Jacksonがトレードを要求したという話。彼はタグを貼られる前からチームにそう要求していたようで、またPatriotsへの移籍を望んでいるとか、ColtsのGMが何やらほのめかしているといった話も出てきている。彼がRavensの提示したタグに署名したかどうかは不明(署名しないとトレード対象にはならない)だが、にわかに騒がしくなってきた印象がある。
NFLの労使協定はなかなか面倒なルールが色々とあるようで、例えば「Ravensのホームでプレイする際には多額のボーナスを支払う」といった特定のチームのみに影響を及ぼすサラリー契約は認められていないという。確かにこの方法を使えば、Ravensには対抗不能な「特定のボーナス」を付けることでRavensが同じ契約を結びJacksonを手元にとどめようとするのは不可能になるが、まあ流石にそうしたルールは認められないのも当然だろう。
そこでFitzgeraldが提案しているのが、3年目(2025年)にとんでもない額のボーナスを入れる契約をJacksonとの間で結ぶこと。サラリーキャップを全額食いつぶすようなボーナスを入れてしまい、Ravensがそれに対抗して同じ契約をJacksonと結んだ場合、彼らは2025シーズンに到底支払うことのできないサラリーを背負うことになるし、それを避けるべく2025年に彼を解雇した場合にはさらに巨額のデッドマネーを抱えるようになる。
それを避けるためには1年早く2024シーズンにJacksonをカットすればいいわけで、その場合のデッドマネーは十分にコントロール可能な金額となる。だが問題はRavensがJacksonを解雇したという形になってしまう点。解雇したFA選手は他チームと契約を結んでも補償ドラフトの対象にはならず、Ravensは1年だけJacksonを使って以後は縁を切らざるを得なくなってしまう。そのくらいならこの契約に対抗せず、むしろ1巡2つをもらうようにした方がRavensにとってはメリットが大きい、という指摘だ。
もちろん、新たにJacksonと契約したチームは2024年に改めて彼と合理的な契約を結び直す必要が出てくる。ただJacksonが協力的なら、つまり彼がRavensから逃げ出して希望するチームでプレイできることに満足するのなら、そうした再契約は十分に可能だろう。逆にJacksonとの交渉がうまくいかない場合、もしくは2023シーズンに彼が使い物にならないことが分かった場合、チームは彼を解雇するという方法で破滅的なキャップヒットから逃れることができる。1巡2つを費やして1年しかJacksonを使えないと考えれば収支はマイナスだと思うが、それだけのギャンブルをする価値がJacksonにあるのならこうした契約もアリかもしれない。
もちろんこれはあくまでFitzgeraldが考えたアイデアの1つにすぎず、しかもこのアイデアが実は労使協定の細かい事項に反していて本当は実行不可能という可能性もあるが、それでもアイデアとしてはなかなか面白い。JetsがRodgersを手に入れることに失敗した場合、こうした契約をJacksonに持ちかけて彼の協力を仰ぐ、という選択肢もあるかもしれない。正直、Jacksonがそこまでギャンブルする価値のあるQBかどうかについては疑問なきしにもあらずだが、QBに苦労しており、なおかつJacksonに気に入られるチームなら、やってみても面白そうだ。本人が明確にチームを出ていきたがっていることを示しただけに、こうした裏技的な手法もあながちあり得なくはないかもしれない。
モックドラフトを見ると、1巡指名が予想されているQBは4~5人。うち3人はトップ4までの間に指名され、残るはほとんどが中位以下での指名となっている。トップ指名はC.J. StroudかBryce Young、3番手がAnthony Richardsonで、そこから離れた4番手がWill Levis、そして1人だけHendon Hookerも1巡に入ってくると予想している人がいる。おそらく実際にHookerが1巡に入る可能性はそれほど高くはないだろうが、一応このあたりまで調べておいてもいいだろう。
使えそうなのは
こちらのツイート。2014-22シーズンの成績を並べたもので、X軸がEPA/Pとなっている。これで上記5人の位置を確認すると、最も右側に来ているのはStroudであり、以下Young、Hooker、Richardson、Levisの順番に並んでいる。全体1位予想が最も多いStroudが大学の実績でも最も優れていると見られる。なおY軸はQBがプレッシャーを受けた割合になっているが、そもそもプレッシャーはQBのスタッツと見た方がいいため、あまり気にする必要はないと個人的には思う。
ちなみにプレイスタイルの違いを思わせるのが
こちらのツイート。Stroudは短い時間で投げて高いEPAを積み上げているのに対し、Youngはむしろ足で時間を稼いだうえでEPAを手に入れるスタイルが機能している。Levisは短い時間で投げた場合はStroudに及ばず、長い時間をかけた時にはYoungに負けているわけで、彼の指名順位が1巡でも真ん中以下と見られているのも分かるグラフだ。
EPAではなく、EPAに基づいて算出されるQBRを使えば、ドラフト候補となっているQBたちの成績をランキング化することはできる。幸いにもESPNがそうした数値を出しているからだ(ただし2022シーズンのみの数値)。それに従って彼ら5人をランキングすると、以下のようになる(カッコ内はパス試投数)。
Hooker 89.5 (329)
Stroud 88.9 (389)
Young 86.2 (380)
Richardson 71.2 (327)
Levis 60.9 (283)
いずれもプレイ回数が少ないために評価は難しいし、またチームごとの実力差が大きい大学の場合には単純に数字だけで評価すると間違える可能性もある。
こちらの記事ではチームメイトの実力も踏まえた分析を行っているが、例えばコーチ陣とQBとの相性といった問題はなかなか数値化できないし、またプロに入ると当然変化するものでもあるため、一段とドラフトでのQB指名を難しくする要因になっている。
というわけでざっと見たところ、StroudとYoungが上位に来るのは分かる。RichardsonとLevisについてはどちらかと言うと素材重視の選択なのかもしれない。Hookerは2巡以下で当たりくじを期待して指名するにはいい選手、ではなかろうか。
その他のニュースもいくつか。まず笑ったのがJackson絡みで
「自称Jacksonの代理人」が胡散臭い動きをしているという話。この人物はそもそもNFLPAの承認を得ていないうえに、Jackson自身が
「嘘だ」とツイートしているようで、要するに偽代理人なんだろう。リーグはこの人物を相手にしないよう各チームに通達したそうだが、何とも素っ頓狂な話である。
あとは
BradyがWNBAのチームのオーナーに加わったという話や、既に2022シーズンにおいてプレイする機会を得られなかった
Hightowerが正式に引退を表明したという話なども伝わっている。2012年にドラフトされたHightowerは、2020年にCovid-19でシーズンをオプトアウトしているため、実質的なキャリアは9年にとどまったことになるのだが、その間1度もフルシーズンで出場していない。それだけ怪我の多い選手だったが、出場した時には非常にクレバーなプレイを見せていた印象がある。お疲れ様でした。
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