NFLではFAの動きがかなり落ち着いてきた。例年のことだが、最初に大騒ぎした後は比較的低コストな契約がしばらく続き、後はドラフトまでほとんど動きがなくなる、という展開になっている。ファンの関心もそろそろそちらに向き始める時期だと思うが、まだいくつか動きは続いているので、今回はそれを紹介しよう。
まずは
CowboysがWRのCooksをTexansからトレードで手に入れた 件。対価は2023年の5巡と2024年の6巡であり、一見するとかなり安い価格で売り払われたように見える。年齢的に30になるとはいえ、キャリア9年のうち6年でシーズン1000ヤードを達成し、キャリアトータルで0.345のEPA/Pを記録している選手にしては、随分と対価が少なく見える。
記事を読めば問題になったのがCooksとTexansとの関係だったことが分かる。彼は昨シーズンからトレード対象になっていなかったことに不満を表明していたそうで、要するにチームと彼との関係は修復不能なところまで来ていたのかもしれない。だとすればCowboysがその足元を見て安く買い叩いた可能性はある。あるいは昨シーズンのEPA/Pがキャリアでも最も低い0.081まで低下したことも理由の1つだったのだろうか。
一方、Fitzgeraldはそれほど一方的なものではないと、最初は指摘していた。
Valuing the Cowboys and Texans Trade では、このトレードについてサラリーという観点から分析している。まずTexansのプラスとしては、Cooksがいなくなることによるキャップヒットの削減12ミリオン、5巡と6巡の指名によって得られるであろうルーキー選手のもたらす効果(4年分)がそれぞれ10.5ミリオンと8.3ミリオンになる。一方でこの2つのドラフト権によるキャップヒットの増加分8ミリオンはマイナスだ。トータル22.8ミリオンがTexansにとってのサラリー面でのプラスになる。
それに対しCowboysはCooksがもたらすプラス効果として12.5ミリオンを期待している(トレードを通じて彼らが払おうとしたのがこの金額であるため)。加えてドラフト権がなくなることで空いたキャップスペースが計8ミリオンほどあり、総額は20.5ミリオンのプラスとなる。全体として見るならTexansが少しばかり有利(2.3ミリオン分)だが、このくらいの金額であればほぼイーブンの取引だった、というのがFitzgeraldの説明だ。
もちろんこの評価はあくまで現時点でのもの。この後、Cooksがどこまで活躍するか、またTexansが誰を指名するかによって、このバランスはまた変わってくる。ただ全体としてリスクが少ないのはTexansの側だ。Cooksはチームに残っていてももはや価値を生み出すことは期待できなかったし、彼がいなくなることによる12ミリオンのコスト削減効果は確定し、それを使って他の選手の手当てができるのは間違いない。たとえもらったドラフト権で指名した選手が役に立たずとも、この12ミリオン分は確実にプラスになる。
一方、CowboysにとってはCooksが失敗すると期待した12.5ミリオンが損なわれることになる。逆にCooksが成功すればこのトレードの勝者はCowboysになるわけだ。また基本的にCowboysにとってこのトレードがもたらすプラスは今シーズンに集中しているのに対し、Texansにとっては2024年から2025年にかけて、つまりCooks分のコスト削減が効き始め、ドラフト指名した選手たちが役に立つようになってからとなるわけで、Cowboysよりも将来を見越したトレードだったことになる。
その
Cowboysは一方でElliottを解雇した 。2019年に6年90ミリオンの延長契約を結んだが、結局そのうちチームにいられたのは3年だけで、手に入れたサラリーは50ミリオンにとどまった。といってもNFLでは契約全部を全うする方が珍しいので、この3年50ミリオンという数字自体にはそれほど違和感はない。問題はその3年間のパフォーマンスだろう。
その3年間、彼のスナップカウントは68.7%→65.9%→47.2%と低下。ランのトータルヤードは2021シーズンに辛うじて1000ヤードに乗せたが、あとは3桁にとどまった。Y/Cは4ヤード前後にとどまり、契約延長を勝ち取った前後のシーズン(4.7と4.5)には及ばなかった。そしてEPA/Pは-0.088と、ルーキー契約の4年間(-0.032)より低下した。大型契約を結ぶ前の方が結んだ後よりいい成績だったわけだ。
とはいえこの結果が予想できなかったかというとそれはない。
前にも書いた が、Elliottとの大型契約については当時から批判的な声もあった。結局この3年だけ見るならElliottよりPollard(439プレイでEPA/Pは-0.003)の方がよかったと考えられるのだが、Pollardは安いルーキー契約で走っていたわけで、コスト当たりパフォーマンスの差はさらに大きかったことだろう。RBがElliottでなければならない理由はなかったと考えられる。
彼の批判対象はチームだけにとどまらず、むしろJetsのファンベースこそがPackersにとって取引上の強みになっていると指摘。さらに返す刀でそもそおPackers自体、Rodgersのトレードは2021年か2022年のうちに済ませるべきだったとも書いており、なかなかに手厳しい。正直、いくら高齢とはいえMVPを取った選手をそう簡単にはトレードできないと思うが、確かにせめて1年早く売り払っていればかなりの対価を余裕で手に入れられたことだろう。
ただし、前にも書いた通りRodgersを今シーズンも使い続けた場合、Packersの負担はさらに増えてしまうことも事実。結局はそうなる前に彼をどこかで手放さなければならないわけで、そこまでJetsが踏ん張れば穏当な対価でRodgersを手に入れることは可能だろう。
こちら ではPackersが期待できる対価についてNFLの4人の人事担当に話を聞いているが、穏当な見解は4人目が述べている「PackersがRodgersへの支払いの一部を負担するなら2巡、しないなら3巡」というところだろう。だが現状、交渉条件がPackers有利になっているため、残る3人は1巡が絡む可能性を指摘するようになっている。
Fitzgeraldは、Rodgersを欲しがっているのがJetsのGMやHCではなくオーナーシップだと推測している。それが事実であれば、オーナーが我慢できなくなって途中で1巡を放り出す可能性も出てくる。特に今年の1巡(全体13位)を手に入れることができれば、Packersにとっては大成功。もちろんRodgersが復活してMVPレベルの活躍をし、逆にLoveが冴えない結果に終われば、1巡1個は安すぎたという後知恵批判も出てくるだろうが、現状で判断する限りPackersペースで交渉が進んでいる可能性が高そうだ。
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