上に紹介したものの中にはウクライナ戦争で見かけたものもあるが、実はそれ以外にナポレオンのものとされる発言も紹介されている。例えばWall Street Journalのこちらの記事には、皇帝の言葉として「戦争において、士気の力の物質的要素に対する割合は、全体の4分の3になる」という言葉が紹介されているし、前にこちらで紹介した米退役大将へのインタビューでは質問者がナポレオンの言ったこととして「戦争において、士気は物質的要素の3倍の重要性を持つ」と述べている。これがかなり知られている台詞である様子がうかがえる。
オクネフだけではない。他にもナポレオンと同時代の人物でこの発言を取り上げている人物がいる。半島戦争に関する本を執筆したネイピアだ。1904年に書かれたDictionary of quotations French and Italianには、ネイピアの本からの引用として「戦争では4分の3は士気の問題だ。物質的な力の割合は残る4分の1にすぎない」という言葉が紹介されており、さらに引用元も明記されている。
……とはもちろん行かない。この件について調べているうちに、変な文章に行きあたってしまったからだ。1960年に書かれたReview of the Space Programという書物の中に採録されている質疑応答文において、妙な発言をしている軍人がいるのだ。彼はソ連との宇宙開発競争について、異なる哲学同士の衝突であり、軍事、経済、外交、政治、心理学、精神といった様々な分野で争いが行われていると指摘したうえで、「クラウゼヴィッツの見解によれば、人間の紛争において士気の物質的要素に対する比率は3対1となる」(p809)と言及しているのだ。
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