NFL22 week21

 NFLではConference Championshipが終了。終わってみれば両カンファレンスともシード1位がSuper Bowlに進むという波乱のない結末になった。前週に紹介したEPA/Pの差で言えばEaglesが49ersに勝ったのはアップセットということになるんだが、QBが先発もバックアップも負傷して使い物にならない状態になってしまえば、そりゃどんなチームでもどんな有能なコーチでも勝てない。49ersのプレイを見ると、前半は14回のパスに対して10回のランだったが、大きくリードされた後半はパス4回、ラン14回となっており、文字通り片手を縛られた格好でのプレイコールを強いられた様子がよく分かる。
 これで49ersは直近4年のうち3回はConference Championshipまで進みながら1度も優勝できない状態になった。もちろん5年連続Championship出場のChiefsに比べれば劣るが、後者が1回は優勝しており、今年もまだ優勝できる可能性を残しているのに比べると不運と言える。一方Eaglesは5年ぶりのSuper Bowl、Bengalsは2年連続のChampionshipというわけで、まだ運の偏りをどうこう言えるほど勝ち残っているわけではない。
 もっと驚きなのはこれで49ersはシーズンで4人のQBを負傷によって失ったことだろうか。2週目でLanceがシーズンエンドになった時は、彼にとっては不運でも実績のあるGaroppoloがプレイできるからむしろチームにとっては有利、と思っていたのだが、そのGaroppoloも第13週にアウト。普通ならさすがにここで終わりだ。
 それがまさかのPurdyの活躍によってここまで勝ち上がってきたのだから、ある意味ではツキに恵まれていたと言えよう。しかし彼もこの大一番で肘を負傷してプレイできなくなり、4番手としてスナップを受けることになったJosh Johnsonまでが脳震盪を起こしてプレイを止められ、投げられないPurdyがハンドオフのためにスナップを受ける事態に至った。最後の最後でシーズンを通じて彼らを祟っていた「負傷」がとどめの一撃を食らわせてきた格好だ。
 普通、先発QBがシーズンエンドになったチームはなかなかここまで勝ち残ることはない。その意味ではそもそも49ersは例外的なシーズンを過ごしていたと言える。もちろん単なる偶然ではなく、Shanahanが有能だからという可能性もあるだろう。実際、GaroppoloだけでなくPurdyやかつてであればMullensといったQBを使ってそこそこの成績を残していたのだから、彼が選手の能力を上手く引き出す技術を持っていることはおそらく確かだ。だがさすがのShanahanでもパスを投げられないQBで勝利するのは難しかったのだろう。
 それにしても最近の49ersは、有能なHCを抱えてもそれだけではなかなか優勝までたどり着けないことを示す一例になっている。勝つためにはHCだけではだめで、彼との相性がいいQBをうまく手に入れ、チーム力をきちんと高い水準で維持できるGMも用意し、最後にはツキにも恵まれる必要がある。2000~2010年代のPatriotsは幸運にもそれらの条件が軒並み揃ったチームだったわけだが、あれを再現するのがいかに難しいかは足元の49ersを見ているとよく分かる。
 いや49ersだけではない。ReidとMahomesという素晴らしいHC-QBコンビを抱え、GMもきちんとチーム作りに貢献しているChiefsでも、この5年間に多くて優勝は2回までにしか届かない。Patriotsは12回Championshipに出て6回Super Bowlで優勝しているので、実力に加えてツキにも恵まれていたと考えてもいいんだろう。あるいはPaytonとBreesというこれまた素晴らしいコンビを誇っていたSaintsは、結局1回しか優勝できていない。こちらはツキもさることながら、ダメGMのせいでかなり足を引っ張られたことが響いた。
 一方で興味深いのはEaglesだ。Wentzとの巨額契約の時点でチームに傷を負ったと思っていたが、その傷を短期間で癒し、それどころかむしろドラフト権トレードでは負債をプラスに変えた挙句、再びSuper Bowlの舞台に戻って来た格好。この間、Wentzが使い物にならないことが分かった2020シーズンを除くと負け越した年はなく、5年のうち4回はプレイオフにたどり着きながらここまで復活を果たしている。しかもWentzがまだ先発だった年に指名したHurtsが花開いた格好なわけで、改めてRosemanの凄さを思い知らせたシーズンとなっている。
 というわけでSuper Bowl LVIIは、前回とはHCもQBも変えて大舞台に戻ってきたEaglesと、2020年代のDynastyを目指すChiefsとの対戦になった。一応Chiefsが前に優勝したのは2019シーズン後のプレイオフだったわけで、これを2020年代と見なすのはどうだろうかという疑問もあるだろうが、現時点で彼らがDynastyに一番近いチームなのは確か。ただこちらを見るとオッズはEaglesが僅かにfavorite。Eaglesの方がオフェンス、ディフェンス両面でバランスの取れるチームである点が評価されているのかもしれない。

 で、ここでちょっとアメフトそのものからは外れた話を。こちらのツイートPerplexity.aiというサイトが紹介されているのだが、そこには「気になる問いを投げるとWEB上の記事やPDFを元にした回答を瞬時に返してくれて参照URLも併せて提示してくれる」という機能があるという。最近になって急速にこの手のAI機能が上昇しているようだが、このサイトは単に「質問に対してもっともらしい回答を返す」だけでなく、ネット上のソースを示す点が大きな特徴のようだ。最近になって実効性が酷く低下している各種検索サイトに代わって、もっと「ソースを探す」のに使えるサイトになるようであれば、これは便利かもしれない。
 というわけで「NFLでパスとランはどちらが重要か?」という質問をDeepLで翻訳したうえで放り込んでみた。すると出てきたのが以下の文章(こちらもDeepL翻訳)

「NFLではランニングよりもパスの方が重要です。特にファーストダウンやセカンドダウンでは、ラッシングよりもパスの方が効率的で、パスを多用するチームはプレーオフやスーパーボウルで勝つ確率が高くなります。3rd&1や3rd&2など、特定の状況ではボールを走らせることが有効ですが、全体としてはやはりパスが有利です」

 おお。これはかなりまともだ。ソースとなっているサイトは色々だが、少なくとも素っ頓狂なことは書いていない。敢えて言うならリードした局面で時間をつぶすのにもランが使えるという指摘が欠けているが、それにしても単純なQ&A程度なら十分に使えそうな気もする。というわけで「NFLで勝つには、Quarterback、Head Coach、General Managerの誰が一番大切か?」という質問もしてみた。回答は以下の通り。

「NFLで勝つために最も重要なのは、ヘッドコーチです。ヘッドコーチはチームのスタイルをリードし決定し、人材の評価にも関わり、ゼネラルマネージャーやオーナーに必要なことを伝えなければなりません。クォーターバックも重要な選手ですが、成否の最終的な責任はヘッドコーチが負います。ゼネラルマネージャーはチームを編成する上で重要ですが、勝敗に与える影響はヘッドコーチほど直接的ではありません」

 さて、この返答はどこまで信じていいいんだろうか。前に紹介した研究では、最も重要なのはQBであり、その次がHCとなっていた。具体的にはQBで説明できる分が37.37%、HCが29.08%、GMが22.43%といった感じ。このデータが正しいのなら、AIの返答にはそうした研究結果を反映する能力がない、というかAIがネットから引っ張り出してくる通念の中にそうしたデータが反映されていないことになる。つまりここの部分はアナリティクスを使って他チームを出し抜ける分野、と予想ができる。
 まあそれが分かったところでいいQBをどうやれば見つけ出し、手に入れることができるかが分からないとどうしようもないんだが。AIよAIよAIさん、世界で最も優秀なQBは誰?
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