こちらのツイートで紹介されている話がもし事実なら、今回の戦争で最もまともに軍隊らしい動きをしているのはロシア軍ではなく、ワグナーグループでもなく、外様の
PMCということになる。PMCの中にはそういう明確に傭兵として戦っている連中もいるようだが、それを除くとそもそも「普通の軍隊」のレベルにも到達していない軍隊でロシアは戦争しているわけで、開戦当初から繰り返している通り本当に
銀英伝並みのフィクションとしか思えない出来事がいまだに続ているようだ。
ロシア軍の中で最も真面目に仕事をしているのは、外様PMCを除くとおそらくミサイルやその代替品として使われている自爆ドローンといった機械だけだろうが、インフラ破壊にもたらすそれらの効果も下がっているようだ。ISWによれば
年末年始に2晩連続で行われた攻撃は完全に迎撃されたそうで、既に在庫が尽きつつあるということはこちらの方でも戦果は減る一方かもしれない。そもそも都市への攻撃は、ウクライナの歴史学者の話について紹介したこちらの
一連のツイートの最後にもある通り、「成功例がない」嫌がらせ攻撃にしかならない。
ロシア軍の支離滅裂ぶりを簡単にまとめているのが
こちらのツイート。インフラ破壊にミサイルを回したせいで前線では歩兵が使い捨てにされ、部隊はまともに編成を組めず、戦車や装甲車、大砲などの消耗が続けばそのうち歩兵しか残らなくなるリスクもある。しかもその歩兵用の装備も足りない。戦車は保管車両を動員するという話もあるが、現役トラックのタイヤすらろくにメンテできない軍隊に、
何種類もの戦車をきちんと整備して動かす能力があるだろうか。
それにしても改めてロシアがここまで酷く、ウクライナがここまで踏ん張るとは、事前段階では誰も予想できていなかったもよう。
こちらのツイートでは開戦前に書かれた
「大国間競争時代のロシア」に書かれた内容が簡単に紹介されているが、そこで紹介されている開戦前の想定は全部外れてしまったそうだ。基本的にはNATOの支援があってもウクライナ軍はロシアとの正面からの交戦は放棄し、ゲリラ戦へ移行するというのがコンセンサスだったようで、こんな展開は誰も思ってもみなかったんだろう。まあ
プーチンが参謀本部を無視して侵攻計画を決めた点についても予想できた人間はいないと思うが。
で、本来なら泥濘を利用して部隊を休息させ、軍の立て直しをしなければならないはずのロシアが勝手に損害を積み上げている一方、
ウクライナが春に大規模反攻を計画しているという話が出てきた。今のロシア軍を見ていると、ウクライナがストレートに反攻に出ても食い止められないような気すらしてくる。もちろんそこまで相手を舐めてかかるのは拙いだろうし、そもそもこれまで敵の裏をうまくかいてきたウクライナが宣言通りの反攻をするかどうかも明確ではない。まだ戦争が続くのは間違いないとして、その過程で何が起きるかについては引き続き注意深く見守る必要があるのはおそらく確かだ。
そしてより長期的な問題、具体的には旧ソ連の民族紛争が長い目て見てどうなるかだが、
こちらのツイートが述べている通り、紛争抑制にはどこかが『帝国』盟主にならねばならないのだろう。だがこの戦争が終わった後にロシアにその能力が残っているかどうかは不明だし、ウクライナにそんな力があるとも思えない。今回の戦争はその最初の炎かもしれないが、これで終わる保証はないだろう。ユーラシア中核はこれから長く紛争の絶えない地域になっていくのかもしれない。
目先で懸念が乏しいからといって安心もできない。西側にも不安定要因はある。
ブラジルでは前大統領支持者が政府施設を襲撃するという、
米議事堂襲撃の二番煎じのような事件が起きた。こちらも典型的ポピュリストの前大統領が選挙結果を認めず、その支持者が暴力に訴えるという意味で米国と似た展開。西側陣営に占めるブラジルの地位は大したことはないが、それでも油断できる状況ではないんだろう。にしてもかつて経済成長をもてはやされた
BRICsの凋落ぶりもまた見事なものだ。
Noah Smithは最近になって
米国の情勢はかなり安定してきたと述べ、その理由として中間選挙とその後の情勢を掲げている。確かに思ったほどトランプの勢いが伸びていないのは確認できたが、だからと言って彼の存在に象徴されるような「不和の時代」が完全に消えてなくなったとも言い難い。そして米国が揺らぐようなことがあれば不安定化が進むユーラシア中核のトラブルがその周辺地域(含む日本)まで波及するリスクがそれだけ高まると考えられる。まだまだ厄介な時代が続くリスクは心にとどめておいた方がいいんだろう。
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