NFL22 week13

 NFL第13週の前に1つ。現地6日にまさに決選投票が行われているジョージア州の上院選に出馬している共和党候補の「ウォーカー氏」って、あのHerschel Walkerだったんだな。気づかんかった。トランプの支持を受けているせいでWalker不利との話も出ているが、さてどうなることやら。
 閑話休題。第13週にはQBがらみで新たな動きがあった。まずは負傷だが、シーズンエンドになりそうなものがいくつかある。1つはGaroppoloで、足を骨折しおそらくシーズンエンドと報じられている。これで2018、2020シーズンに続いて怪我でシーズンエンドとなったわけで、本当に怪我に呪われたキャリアと化しつつあるようだ。直前に2023シーズンも49ersに戻ってくる方向で話が行われているとの報道があったばかりだが、この負傷によってまた状況が変わるかもしれない。
 彼は怪我さえしなければとてもいいQBだ。今シーズンもANY/Aは7.6とかなり高い数字を出していたし、EPA/Pも0.240とリーグ上位に食い込んでいる。チーム自体も彼が先発を引き継いだ後は7勝3敗と好調で、NFC西地区トップを走っている。49ersはディフェンスも強いので、Garoppoloがいなくなったらすべて終わりとまでは言わないが、それでも重要な武器が失われることに間違いはない。彼らはすでに開幕先発のLanceも負傷でシーズンエンドとなっているわけで、だから後に述べるように他のベテランQBを補強するという話も出てくる。
 同じくシーズンエンドと言われているのがRamsのStafford。ただしこちらは選手自身もチーム状況もGaroppoloとは対照的だ。Super Bowlで優勝したチームが翌シーズンにここまでの成績低下に見舞われるのは珍しいとFiveThirtyEightでも記事にされたくらいで、Ramsはもう負け越し決定、StaffordはEPA/PでルーキーのPickettとほとんど変わらない数字にとどまっている。両チームともろくな控えがいないことは確かだが、49ersと違ってプレイオフの夢がほぼ消えているこちらは今ベテランを補強するメリットは正直あまりなさそうだ。
 で、その補強対象として名前が出てきたのが、Panthersに解雇されたMayfield。正直、シーズン前にPanthersに加わってDarnoldとの先発競争に勝った時点では、彼の方がDarnoldより先に解雇されるとは思っていなかった。まあPanthersのキャップヒットを見ると彼よりもDarnoldの方が大きく、また今シーズンに限ればMayfieldのEPA/PはMillsやZach Wilsonあたりを大きく下回ってリーグ最下位レベル。正直Walkerの方が高い数字を残しているくらいであり、そりゃ期待外れもいいところと言われるのも仕方ない。それに、Panthersはまだ負け越しが決まったわけではないが、そろそろ来シーズンを考えたくなる成績なのも間違いない。
 というわけで大本営の記事では彼の今後の行き先として先発QBが負傷でいなくなってしまった49ersとRamsが候補として紹介されている。ただしWaiverで取りに行くほどかと言われると、正直悩むところ。足元でのMayfieldの不調っぷりと、今シーズンの残り試合を考えるなら、ここで敢えて今の契約内容(Panthersのキャップヒットは5ミリオン弱)を引き継ぐより、完全に解雇された後でベテランミニマムでの契約をする方が合理的に見える。一方、Panthersは来シーズンには改めてQBの選択からやり直しになると思われる。Darnoldは、まあよくてベテランミニマムの控え候補として残すくらいか。QB豊作と言われた2018年ドラフト組も、結局生き残りはAllenとJacksonだけになってしまった。
 そのJacksonも同じく今週負傷している。ただしこちらはシーズンエンドまでは行かず、とりあえず次のSteelers戦に出るのは難しそうだというレベルらしい。今シーズンのJacksonの成績は正直いってそれほど良くない(悪くもないが)。EPA/Pだと全体で真ん中あたり、というと聞こえはいいが、2年目QBであるLawrenceやFieldsよりも下にとどまっている。ただしチームは地区首位を争っている状態であり、チームとしてはまだ活躍を期待したいところだろう。あとデビュー以来のトータルDAKOTAを見ると気がつけばJackson(0.113)をAllen(0.114)が抜いて同期のトップに躍り出ている。いやあ、本当にQBの将来を見通すのは難しい。

 そんな中、OverTheCapが注目していたのは、Ravensに負けて負け越しが決まったBroncosのWilson。今シーズンが期待外れに終わりつつあるQBは色々といるが、彼もまたANY/Aは5.60とリーグ平均を下回って下位にとどまっているし、DAKOTAは0.035でリーグ28位、EPA/Pに至っては-0.001と、要するにパスを投げるたびに僅かではあるが失点する状態に陥っている。他にチームを変えたQBで同じ状態に陥っているのはRyan、Wentz、Mayfieldあたりで、うち後者2人はチームスナップの7割以上をプレイする可能性は薄いと指摘されているし、来シーズンは別のチームにいる可能性が高いとも言われている(そして既にMayfieldは解雇されている)。Ryanについては引退させろという声もある
 でもシーズン前の期待の段階ではこれら3人のQBとWilsonとの間には天と地ほどの差があったはずだ。いずれもトレードで今のチームに移ってきたのは同じだが、最も高い順位を差し出されたWentzでも3巡2つと7巡との交換であり、Ryanは3巡Mayfieldは5巡、と地味な取引にとどまっている。それに対しWilsonは1巡2、2巡2つや他の選手など、大量の対価を支払って手に入れたQBであり、チーム側の思い入れや期待は段違いに大きかったはずだ。
 これは現在の契約からも窺える。WentzやRyanの現在の契約はいずれもかつて先発を務めていたチームとの延長契約をそのまま引き継いだ格好であり、ルーキー契約のオプション行使による契約でプレイしていたMayfieldも含め、いずれも現チームとの間で新たに契約を延長するようなことはしていない。要するに3人とも一種の「その場しのぎ」としてトレードされたわけであり、活躍すればともかくそうでなければすぐ別の選手に差し替える想定で雇われていた状態と言える。
 だがWilsonは違う。彼はトレード後に5年245ミリオンの契約延長を結び、一応表面的には40歳になる2028年まで契約下にある。もちろん実際にそこまで長く使うことを想定していたわけではないだろうが、単純にカットした場合のキャップヒット削減額を見る限り、少なくとも2024シーズンいっぱいまでは解雇など想定していなかったのではないかと思われる。まあ、彼が2020シーズンまでは1試合も休むことなく出場し、かつQBとして優秀な成績を収めていたのを見ても、また足元でかなり高齢になるまでQBが活躍する事例が相次いでいるのを見ても、Broncosが彼に期待するのは不思議ではないように見える。
 ところが今シーズンの彼の苦戦ぶりはご存じの通り。怪我で出られなかった1試合を除いても3勝8敗の成績で、うち過半数の6試合でEPA/Pがマイナスを記録している。チームは既に負け越しが決定した状態で、プレイオフの可能性はほぼなくなった。シーズン前にQB問題さえ解決すれば地区優勝争いに加わる可能性もあると期待されていたのがまるで嘘のよう。むしろドラフト指名順争いの上位陣に顔を出している。
 これまでコンスタントにリーグ平均を上回る成績を残していたQBが、まだこの年齢(11月に34歳になった)でここまで急に衰えた事例はそうは思いつかない。何か怪我の影響が深刻に響いているのか、あるいはチームが変わったことが大きく影響していると思うのが普通だろう。Seahawksで彼の後を継いだ控えのGeno Smithが今年大活躍している(DAKOTAでリーグ4位)のを見ても、実は優秀だったのはSeahawksのコーチ陣でありWilsonではなかった可能性が、当然ながら浮かんでくる。だとしたらBroncosとしてはWilsonを長く引っ張るのは望ましくない。
 ただし彼の解雇は容易にできないことも確かだ。FitzgeraldはThe Broncos Options with Russell Wilsonの中で、このオフにWilsonを解雇する場合には実に107ミリオンのデッドマネーが発生することを指摘。複数のシーズンに振り分けるとしても2023シーズンに40ミリオン、2024シーズンに67ミリオンのデッドマネーが出るといった具合にあまり現実味のない数字を並べている。
 それよりマシなのは2023シーズンが終わった後に解雇する場合。それでも総額は85ミリオンというかなりのデッドマネーに達するが、それを2024シーズンに35.4ミリオン、2025シーズンに49.6ミリオンという形で分割して何とか理にかなった範囲に収めることは可能だ。逆にもう1年ずらして2024シーズン後に解雇する場合はデッドマネー総額が86.6ミリオンに増えてしまうため、あまりメリットがないという。もちろん彼がその時点までにかつての調子を取り戻しているのなら投資継続にも意味があるが、そこまで行かない場合はいかに傷口を抑えながら彼と縁を切るかが重要になる。
 Fitzgeraldは今オフでの彼の解雇はあまり想定している様子はない。もしあるとしたら、既にバストと見られている若手QB(もう1人のWilsonあたり)を手に入れ、事態がうまく展開するのを期待するといった方法くらい。一方で問題となるのは2025年に乗っかってくるサラリー保証が2024シーズン開始の5日目に保証が決まり、なおかつそれが負傷した際にも保証対象となっている点だ。チームとしては2023シーズンまでプレイさせ、ダメなら翌シーズン開始早々に切ればいいのだが、もし2023シーズン中に負傷でもしたら目論見が外れてキャップヒットが大きく増える。
 私だったらドラフト指名順が上がること前提にこのオフは少なくともドラフトでのQB補強、できればベテランの補強も含めて行い、そのうえでシーズン前にはWilsonときっちり競争させる。Wilson以外の選手でめどが立つと判断すればWilsonはプレイさせず、トレード相手を探す。運よくトレードできればキャップの負担を大きく減らせるし、ダメでも怪我しなければ追加の保証額を上乗せせずに彼をカットする道が(一応だが)開けてくる。
 ただしそんなに都合よく差し替えの利く選手がオフに手に入るとも思えない。それにWilsonの過去の実績を見る限り、1シーズン未満の不調で切り捨てていいのかどうかも慎重に見た方がいいように思う。一番悩むのが、このオフに他のQBの補強ができず、一方で2023シーズンに入ってもWilsonの成績が冴えない場合だ。どこかで諦めて怪我を避けるために彼を引っ込めるか、それともリスク覚悟で使い続けるか。いずれにせよ、これまた改めて選手の能力評価の難しさが浮かび上がる一件ではある。
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント