NFL22 week8

 NFLは第8週が終了、したのだがその前にトレード期限が迫る中でどんな案件があるか見ておこう。前回のエントリー後に成立したトレードは3件。いずれもトレードの対価を見る限りMcCaffreyの水準には達していないが、そこそこの水準ではあった。
 まずEaglesがBearsからDEのQuinnを手に入れた。対価は来年の4巡と、それほど高いものではないが、プレイオフ戦線の先頭に立っているチームが脱落の懸念があるチームから選手を手に入れるのはいかにもシーズン中トレードらしい。BearsはRavensにもLBのSmithを送り出し、代わりにLBのKleinと来年の2巡及び5巡を手に入れた。Ravensも地区首位におり、一方でディフェンスが弱いため、そこを強化したいというニーズから行われたものだろう。
 OverTheCapのFitzgeraldはSmithのトレードについて、Bearsにとって大きなプラスだとしている。ルーキー契約の最終年で、延長の予定がないSmithは、フランチャイズタグでも使わない限りチームに残ることはない。そうした選手の代わりにこれだけの対価を手に入れたのだから、これは大成功という判断だろう。逆にRavensは半年間のレンタルLBのために大量のドラフト権を失うわけで、これからJacksonとの大型契約(あるいはフランチャイズタグ)をしなければならないチームにとってはこうしたドラフト権は大切なはずだ、というのがFitzgeraldの指摘だ。
 プレイオフ戦線に残っているチーム同士のトレードとなったのが、WRのToneyをChiefsに送り、代わりに3巡と6巡を手に入れたGiants。昨年の1巡指名だったToneyは正直ここまで怪我のせいもあって期待外れの数字だが、Chiefsはその割に奮発した印象がある。確かにHillをこのオフに失った点が気になっているのかもしれないが、彼らのパスオフェンスは予想通り引き続き絶好調だし、Dropback EPA/Pは0.330とリーグでもトップの成績になっている。ドラフト権を消費してチーム力を強化したいのなら、むしろパスディフェンスに注ぎ込む方がいいんじゃなかろうか。
 前にも書いた通り、シーズン中のトレードにそれほど大きなインパクトがあると私は思っていない。昔に比べてNFLがトレードに積極的になっていること自体はいい傾向だと思うし、チーム力を強化するためにドラフトとFAだけでなくトレードも活用すべきと見るフロントが増えてきたのはおそらく正しい方向性なんだろう。でもQBの能力によってゲーム結果が左右されやすいリーグで、しかも一流QBが市場に出てくることはほとんどない状況において、トレードに多大な期待感を抱きすぎるのも多分間違い。マスコミ的にはネタになるからいろいろと報じるのは当然だが、基本は騒がず冷静に見ておくのがいいと思う。

 で第8週のゲームだが、先々週にBarnwellが「ヤバいんじゃね?」と指摘した4チームのうち3チームが敗北。唯一勝った49ersも相手がその「ヤバい」Ramsだったわけで、要するに本当にヤバそうな状態になっている。現時点では49ersがかろうじて勝率5割をキープしているが残る3チームは負け越しで、特にBuccaneersとPackersは借金2とシーズン中盤時点でこうなっているとは想像できなかったであろう位置であがいている。
 とはいえ今週のPackersは相手が現時点でリーグ最強と評価されているBillsだったので、敗北自体は仕方ないかもしれない。ただし負け方は問題だ。RodgersのEPA/Pは-0.01とチームの足を引っ張り、逆にランが+0.14とオフェンスを支えた格好。BillsのAllenが+0.24のEPA/Pを記録したのと比べるとパスオフェンスで圧倒的に負けている。今シーズンのRodgersのEPA/Pはリーグ平均を下回っており、DAKOTAも22位と昨シーズンのMVPの数字としては実に残念な有様。このまま彼の数字が低迷し続けるなら、またぞろ「QBの崖」を巡る話が浮上してくるかもしれない。一方Pro Football Focusはこの試合のRodgersに高いグレードをつけていたそうで、ここからの復活もまだあり得るかもしれない。
 Buccaneersの相手もRavensとそこそこ強いチームではあった。このゲームのBradyはEPA/Pで+0.15と相手のJackson(+0.03)よりずっといい数字を残したが、Ravensのランオフェンスが+0.30と、ランとは思えないほど高い数字を残したのがかなり効いている。確かにBucsのランディフェンスはあまり冴えない(EPA/Pでリーグ21位)が、それにしてもやられすぎ。BradyのDAKOTAは0.088とリーグ13位を維持しており、それほど素晴らしいわけではないがまだ踏ん張っている状況だけに、チーム全体のちぐはぐさが気になるところだ。それにしても45歳のQBがまだここまでやれるのは本当にご立派。
 49ersとRamsのゲームはGaroppoloが鬱憤を晴らすかのように+0.53のEPA/Pを記録した。Staffordは+0.09にとどまり、ダブルスコアで勝負が決まったのも無理はないと思えるデータだ。GaroppoloのシーズンDAKOTAは0.121でリーグ7位、Staffordは0.051の23位とこちらも大きな差がついている。49ersが高額な対価をふっかけてGaroppoloのトレードを成立させず、彼を手元に残したのも、もしかしてこうなることを想定した深謀遠慮だったのではないか、と疑いたくなる成績だ。Lanceの立場はどうなるんだろうかと余計な心配もしたくなる。ただし、Garoppoloは勝つときは+0.40以上のEPA/Pを記録するものの、負ける時は+0.05に届かないレベルに低迷しており、この不安定さはファンとしては困ったところだ。
 一流と見られるQBたちがジタバタしている一方、なんでこのQBがと驚かされる活躍例もある。代表例はもちろんSeahawksのSmithだ。今週はここまで1敗で踏ん張っていたGiantsを相手に圧勝。Smith自身はそれほど高いEPA/Pを記録したわけではない(+0.06)が、表面的にはターンオーバーをせず2つのTDを決めた。シーズン全体でもDAKOTAは0.152とトップ5に顔を出しており、チームの勝ち越しに貢献している。気がつけばSeahawksはNFC西地区のトップを走っているのだが、Wilsonをトレードに出した時点でこの展開を予想していた人はほとんどいなかっただろう。
 同じくNFCの南地区トップにFalconsがいるのも、大半のファンにとっては想定外のはず。今週は弱いPanthers相手ではあったがMariotaが+0.21のEPA/Pを記録しOTで何とか振り切った。MariotaのDAKOTAも0.105でトップ10内を維持しており、これまた過去の成績からは想定できない水準をいまだキープしている。さらにその彼の上にいるのがDalton(0.116)というのも驚きだ。チームは負け越しているが得失点差で言うとNFC南で1番いいのはSaintsであり、団子状態になっているこの地区ならまだ優勝の可能性は十分にある。MariotaとDaltonが地区優勝を目指して相争う時代がやってくると思っていた人など、おそらくほとんどいないだろう。
 もう一人、MNFで大活躍したBrownsのBrissettも、実は個人成績は割といい。DAKOTAは0.112で、ちょうどDaltonとMariotaの間に挟まっている。Browns自体は負け越しているし得失点差も+1と大したことはないのだが、基本的に緊急登板要員としか思われていなかった彼がここまで踏ん張っているのも驚きではある。残念ながら後しばらくすると彼は先発から追い出される可能性が高いのだが、この状況を続けられれば来シーズンは他のチームから声がかかるかもしれない。
 もちろん移籍したベテランが常に成功しているわけではない。先週も書いた通り先発を外されたRyanや、今週はJaguars相手に勝ったもののDAKOTAは28位に低迷しているRussell Wilson、あるいはTrubiskyやWentzなど、苦戦しているQBの方が多いのが実情だ。また若手の中ではTagovailoaやHurtsのように躍進する選手がいる一方で、今更感はあるがQBに問題があると言われ始めたZach Wilson、少しは盛り返してきたがDAKOTAでは引き続き下位にいるFieldsなど、やはり苦戦している者もいる。

 来週で早いチームは9試合目を終え、シーズンは折り返し点となる。例年になく混戦している印象のある現状だが、ここまででうまく立て直せていないチームにとってはそろそろ時間切れの音が聞こえ始めているあたりだろう。実際問題としてSteelersやLions、Texansあたりはそろそろ来シーズンを考えてもいい数字に見える。一方、大きく負け越しているが得失点差はそれほどひどくないのがRaiders、というか彼らは今週24点差で負けるまで2勝4敗にもかかわらず得失点差はプラスだったのが驚き。ツイッターを見てもファンの不満がたまりつつある様子がうかがえるのだが、このまま行くと今シーズン最も不運だったチームに名乗りを上げるかもしれない。
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