NFL22 week7

 NFLは第7週が終了。そろそろトレード期限ということで実際にトレードに動くところも出てきたのだが、正直言って地味。こちらを見るとシーズン開幕後に行なわれたトレードは6つあるのだが、そのうち5つはやり取りされたトレード権が6巡以下ばかりで、しかも3つは選手と7巡ピックを6巡と交換するという取引で、ドラフト権の数すら変わらないものだった。
 もちろんその中で大きく目立っていたのが、唯一高いドラフト順が交換に差し出されたMcCaffreyトレード。49ersは彼を手に入れる代わりに来年の2、3、4巡と再来年の5巡という、実に大盤振る舞いを展開した。見た瞬間に払い過ぎじゃねえかと思いたくなるレベルだし、Panthers的にはうまくやったということになるが、それにしても49ersのフロントはこのところトレード絡みで騒ぎすぎな気がする。昨年のドラフトでのLance指名もそうだし、Garoppoloをやたら高額で売りさばこうとして失敗した事例もそう。選手を過大評価したがる傾向でもあるんだろうか。
 McCaffrey個人がどうこうではなく、RBにこれだけの対価を出す時点で判断がおかしいとしか思えない。そもそもRBはEPA/Pで見てマイナスがデフォルトのポジションであり、今シーズンも現時点で50プレイ以上しているRBのうちEPAがプラスの選手はたった7人しかいない。McCaffreyの-0.026という数字は29人中9位と実はそんなに悪くないのだが、一方Success Rateは0.392の20位と今一つ。要するに先発クラスのRBとしては平凡な数字だ。昨シーズンまでの累計で見てもEPA/Pは-0.031、Success Rateは0.400と、これまた似たようなものであり、たまたま今シーズンが悪いというわけでもない。
 にもかかわらずPanthersは彼に多額のサラリーをつぎ込んだ。彼らは2020年に年平均16ミリオン超の契約延長をしたのだが、その時点で彼はまだルーキー契約が2年残っていた。この延長の結果としてPanthersはその後今年に至るまで38.5ミリオン弱を彼につぎ込むことになったものの、その間に彼が出場したのは16試合のみで、成績はランが1060ヤード、レシーブが769ヤード。Fitzgeraldによればこうした無意味だった契約のためにPanthersの来年のデッドマネーは既に28.5ミリオンにまで積みあがっている。せめてトレードでドラフト権でも手に入れなければやってられないというところだろう。
 でも49ersもわざわざそれに付き合う必要があったのだろうか。McCaffreyが来る前の彼らのランオフェンスのEPA/Pは-0.121と確かに冴えなかった(リーグ25位)が、この数字上位を見るとBrowns、Ravens、Patriots、Lionsといった具合にトータルの成績では今一つのところが目立っていた。ランはパスに比べて勝敗へのインパクトは小さく、またラン成績自体RBの能力よりプレイコールやOLの能力で決まる面が大きいという話はこれまでも何度も書いている。JaguarsからRobinsonを手に入れたJetsのように、条件付きでもっと下のドラフト権と交換するくらいが妥当だったんじゃなかろうか。
 そのJetsではMooreがトレードを求めているそうだが、チームにそのつもりはないと報じられている。このままだと今年のトレード期限は地味な動きしかないまま終わることになりそう。まあNFLの場合は大物QBでもない限り、個々の選手よりもチーム全体のケミストリーがモノを言うことが多いので、仕方ないかもしれない。むしろこの時期にコーチングスタッフのトレードなんかやる方が、もしかしたら盛り上がる可能性はある。

 一方、怪我がらみではBroncosのWilsonがハムストリングの負傷で欠場し、Jetsは今週も控えQBを相手に勝利を手に入れた。試合数の少ないNFLではこういったツキも大きく影響するあたりが面白いところ。気が付けば彼らはAFC全体でChiefsと並ぶ2番手に位置しており、プレイオフレースで注目されそうな位置についている。とはいえ実力面での評価はそこまで高くはなく、例えばESPNのFPIで見ると地区内で最下位。まだ10試合残っていることを考えるなら安心するには気が早いだろう。
 他に怪我ではChargersのCBであるJacksonがシーズンエンドの負傷をし、WRのWilliamsも数週間休むという話が出てきている。一方SteelersのPickettは脳震盪プロトコルを脱して第7週の試合に間に合ったものの、ゲーム自体は負けたし、彼のEPA/Pも-0.16と冴えない数字だった。とにかくSteelersにとって今シーズンは彼の成長を待つ年になっているのだろう。
 QB絡みでふらふらし始めたチームもいくつか出てきている。Patriotsは怪我から復帰してきたJonesとZappeの両方を使って敗北。翌週もどちらを先発させるか未定という状態になっている。ColtsのHCはトレードで手に入れたRyanを来週からベンチに置いて残りのシーズンは控えのEhlingerを先発させると宣言。確かにここまでのRyanは冴えないRodgers(DAKOTAで0.051)のさらに下(0.048)にいる。先発想定で取ってきたベテランQBが即戦力にならなければ切り捨てられるのも仕方ない。もちろん6巡指名のEhlingerに期待を抱いているわけではないだろうが、まだ彼に経験を積ませる方がマシと思われたのだろう。Ryanもそろそろ引退かな。
 今回の判断を受けてFitzgeraldが早速Coltsの「QB地獄」についてエントリーをアップしている。2019年以降、彼らがQBに費やしたキャップヒットはリーグ最多であり、実際に支払った現金でも4位に位置している。しかし足元で問題なのはRyanとの契約であり、彼が怪我をした場合に保証される17.2ミリオンの追加サラリーを支払いたくないがためのベンチ送りではないか、というのがFitzgeraldの推測だ。そうでなくても彼の2023シーズンのサラリー12ミリオンは全額保証されており、このうえQBに投じる負担が増えるのを恐れている可能性はある。
 RBに多額の投資をしたPanthersや49ersよりは、使えるQBを求めて次々とドラフト権やサラリーをつぎ込んでいるColtsの方が、金の使い方としては正しく見える。とはいえ彼らの試行錯誤が、ドラフト以外で当たりQBを引くのがいかに難しいかを示す典型例になってしまっているのも事実。同じことはBroncosにも言えるかもしれない。まだルーキー契約のQBに競争をさせているPatriotsの方が、地獄といっても程度はマシかもしれない。
 そして怪我が理由で欠場したWentzの代わりに先発したCommandersのHeinickeは、まさかのPackers相手にアップセット勝利。実のところEPA/Pで見ればRodgers(0.000)とほとんど変わらない-0.003であり、僅差の勝利はむしろディフェンスの踏ん張りのおかげに見えるが、勝利は勝利だ。彼は昨シーズンも冴えないパス成績の割に勝敗は5割近くにいた選手であり、こう色々とツキには恵まれているのかもしれない。逆に言えばQBの能力を勝敗や、あるいは短期間の数字で判断してはいけないという典型例でもある。

 あと妙な話題となっていたのが、審判が試合後になってBuccaneersのEvansにサインを求めたのではないかという疑惑。NFLの審判はNFLRAという組織を作っており、そことリーグとの協定に違反した行為になるのだそうだ。一応、確認したところそうした話はなかったそうで、話としてはこれにて一件落着となる。でもまあ試合後のそういったやり取りまで監視されるあたり、窮屈と思う人もいるかもしれない。
 これまでの対応を見ても、おそらくリーグが最も重視しているのはゲーム自体の公正さをできるだけ高く保つことなんだろう。少なくともそのように見せる努力は惜しんでいないように思える。逆にフィールド外での行動に対してはそこまでうるさくなく、それがこのオフのWatsonの処分の緩さにつながったのだと考えられる。公的ではない組織が、メンバーのプライベートの時間まで面倒を見ることはできない、という理屈には一理あるが、一方で社会通念に反するような行動を取ったメンバーを解雇する企業などは珍しくない。NFLのバランスの取り方がこれでいいのかという問題は、今後も付いて回るのだろう。
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント