NFL22 開幕戦

 NFLの2022シーズンが始まった。開幕試合となったのはBills @ Rams。正直、ウクライナの件などもあってあまり戦力分析を詳しくやっているわけではないのだが、ざっと見て実力はBillsが上。ただ場所がRamsのホームであり、またシーズン序盤のMcVayオフェンスはかなりの破壊力を持っている(終盤はしょぼくなる)ことも考えるなら、かなりいい試合展開になるんじゃないかと思っていた。実際、オッズはBillsの-1.5だったようで、その意味では面白いゲームが期待できる……そんなふうに考えていた時期が俺にもありました
 結果はご存じの通り、3ドライブ差をつけてBillsの圧勝。1プレイ当たりの平均獲得ヤードがBillsの7.1に対してRamsは3.7と、圧倒的。ターンオーバーレシオではBillsの-1とRamsの方が恵まれていたのだが、双方のオフェンスの進みっぷりを比較するなら、その程度のターンオーバーではひっくり返せなかったと見るべきだろう。ランでもパスでもBillsが強かった、というよりRamsのオフェンスがBillsのディフェンスに完全にしてやられた。
 EPAのスタッツにもそれは表れている。AllenのEPA/Pは2つのインターセプトにもかかわらず+0.46とかなりの数字を出したのに対し、Staffordは-0.31と大幅なマイナス。両QBのEPAだけで35点近くもの差がついた計算であり、Super Bowl LIIIの時のようにMcVayオフェンスが完全に押さえこまれてしまった形になった。他のRamsオフェンスを見ても16回のパスプレイに絡んだKuppのみが気を吐いていた(EPA/Pは+0.52)格好で、後はダメダメ。BillsのDiggs、Davisという2人のWRはどちらもEPA/Pで1以上を記録しており、とにかくBillsが実力差を見せつけたゲームとなった。
 以前記した「つまらなさ指数」は+7とそれほど酷い数字ではなかったし、BillsのWin probabilityが0.8を超えたのは(rbsdm.comのデータによれば)第4Qに入ってからであり、観客としてはそこまで残念な試合ではなかった、かもしれないが第4Qはほぼ消化時間と化していたのは間違いない。ただし、この結果を見て「Ramsヤバい」と考えたり、あるいは「Billsヤバい(意味は逆)」と考えるのはさすがに気が早いだろう。まだシーズンは始まったばかりであり、かつ1試合分の結果で結論に飛びつくのはさすがに軽率だ。
 とはいえESPNのFPI予測だとAFCでスーパーボウル勝利確率トップにあったBillsが勝利した点は、AFCの勢力図予測における彼らの優位を一段と高めるだろう。一方、Ramsは昨シーズンの優勝チームではあったものの、予想勝率ではEaglesより下と見られていたため、NFC内での波乱はそれほど大きくなさそう。ただ、西地区内での49ersとの差は縮まっているようだ。
 というわけで、改めてシーズンが始まった。来年2月のSuper Bowlまで5ヶ月にわたる娯楽の季節だが、できるだけ世界全体が落ち着いた状態で終幕までたどり着いてもらいたいものだ。

 なお開幕前にBroncosがRussell Wilsonとの契約を5年延長した。総額は245ミリオンで、保証額は165ミリオン。年平均49ミリオンという数字はRodgersには及ばないがMurrayよりは高く、保証額もMurrayを上回った。QBの契約でよくあるパターンだが、直前に契約した先発QBの数字を上回る格好で着地したあたりはいつもの流れと言える。
 OverTheCapのFitzgeraldはThoughts on Russell Wilson’s $245 Million Extensionの中で、双方にとって公平な契約ではないかと言っている。契約のタイミングが遅かったのが疑問点だが、これはWilsonが本当にチームにフィットするかどうかを確認するために必要な時間だったのではないか、というのがFitzgeraldの推測。Staffordのように1シーズン終わった後での契約延長に比べれば気が早いように見えるが、実績を見るならWilsonとの契約延長はそれほどおかしいとは思わない。
 もう1人、このオフで話題になりながらいまだに契約延長がなされていないQBがLamar Jacksonだ。彼は開幕戦の翌日である金曜日を「延長のデッドライン」としたが、結局合意はなされないまま。チームが公表したステートメントによれば、シーズン後に改めて長期契約に向けた交渉を行なうとしているが、どうやらシーズン中はゲームに集中、という結果になりそうだ。
 これは正直言ってちょっと驚きの展開。チームの発言からも別に彼らがJacksonとの長期契約を嫌がっているわけではないことは窺えるし、実際問題として4年間のJacksonのRANY/Aは+0.55と同期のAllen(+0.07)より高く、DAKOTAでもJacksonの0.120に対しAllenは0.106となっている。要するにトータルの実績で言えばJacksonは出世頭のはずだ。Allenが3年目が終わったところで長期契約を勝ち取ったのに、Jacksonが5年目に入ってもまだ先行き不透明なのは意外という他ない。
 もちろんチームがJacksonに不安を抱く材料はある。一つは怪我で、例えば昨シーズンはスナップカウントでは65%と全オフェンスプレイの3分の2ほどしか参加できていない。4シーズンのうち彼が9割以上のスナップカウントを記録した年は存在せず、Allenが2年目以降は常に9割以上を記録しているのに比べるといかにも低い。もう一つは成績の不安定性だ。Jacksonは4年のうち半分のシーズンはリーグ平均ANY/Aを下回った数字にとどまっている。本当に彼が一流QBの1人と見なしていいのかと言われると、そこまでの確信はない。
 それでも、トータル成績でAllenよりいいQBをいまだにルーキー契約のまま置いている理由としては弱い。何しろ今シーズンの彼が過去のトータル実績並みの成績を残し、やはり長期契約が必要となった場合も、かなりの確率でフランチャイズタグを使った時間稼ぎが必要になりそうだからだ。タグを過剰に使うとCousinsのようにそのQBの契約コストは結果的にかなり高くなる。もしチームがJacksonの能力を評価しているのなら、そもそもここまで引き延ばさず、それこそMurrayの契約延長よりも早く合意に達していてもおかしくないはずだ。
 Jackson側の要求がとんでもない、という可能性もあるが、もしかしたらもっと単純な理由で時間がかかっている可能性もある。Jacksonはエージェントを雇っていないのだ。確かにルーキー契約の時点ではドラフトの指名順位でほぼ金額が固まるため、あまり交渉することもない。エージェントに支払う手数料分がもったいないという考えもあるだろう。だが契約延長、それもQBのように巨額な契約となると、細かい規定(ビデオゲームとかインターネットとか)もあるだけにエージェントがいた方が交渉はスムーズに進むだろう。
 一応、上記の記事によるとLa CanforaはJacksonを「優秀な交渉人」と評価している。それでも選手としての仕事をしつつ契約の細かい内容まで自分で全てコントロールするのはかなりの重労働だろう。チームとのやり取りが簡単に進まない理由の一つとして、エージェントの不在があるとしたら、少なくともチームにとっては不運だろう。Jacksonにとっても契約最終シーズンが始まるのに来年以降のことが全く決まっていないのはリスク。今シーズンに大怪我するようなことがあれば、手に入るはずだった金額が雲散霧消することだってあり得るからだ。
 もちろんもっと契約にかかわる実質的な相違点があるとも考えられる。OverTheCapのThoughts on Lamar Jackson and the Ravensという記事によれば、JacksonがQB最高額の契約を求めたのに対し、Ravensは年平均を引き下げる代わりにキャッシュを前倒しで選手に渡し、なおかつ保証額を増やすという提案をすることが多いという。双方がそうしたスタンスで交渉に臨んだとすれば、確かに容易に合意には至らないのも無理はない。やはりJacksonについては来年フランチャイズタグが使われるケースを真面目に想定した方がよさそうだ。

 他にもOverTheCapにはシーズン直前のデータまとめが載っている。2022 NFL Season Preview: Roster Turnoverでは昨シーズンからどのくらいの選手が残ったかが記されており、上位にはプレイオフ出場チームが並んでいる。逆にBearsは3分の2が入れ替わった格好だ。2022 NFL Season Preview: Building Teams via the Draftにはドラフトで指名した選手がどのくらい残っているかなどが記されている。面白いのは2018年以降のドラフト選手の残っている割合を示した表。Ramsの1巡指名が記録なしになっている(彼らが最後に指名した1巡選手は2016年のGoff)。彼らのドラフト戦略の特異性がこんなところに現れている。
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