契約修正

 プレシーズンが終わったところで、ずっとトレード待ちだったGaroppoloの動向がついに決まった。想定されていたカットではなく、契約見直しの結果49ersに残るという、いささか予想外の結末だ。彼の新たな契約は全額保証された6.5ミリオンのサラリーと、ゲームボーナスが合計50万ドルの計7ミリオン。この契約見直しにより、彼のキャップヒットは予想されていた27ミリオン弱から8.5ミリオンへと急減する。一応、インセンティブによって最大16ミリオンまで膨れ上がる可能性はあるが、今の49ersのキャップスペース(21ミリオン強)なら問題はないだろう。
 49ersにとってはおそらく考え得る最良の結果になったと思う。前から契約期間が残っている間はGaroppoloを引っ張るべきだと述べていたが、その条件を、しかも予想より安いキャップヒットで実現できるのだから文句はない。それこそインセンティブを全部載せてもまだおつりが来るレベルだ。個人的には変なトレード条件で売り払うよりもいい結果だと思うが、一方で問題を先送りした面もなきにしもあらず。今シーズンが終わればGaroppoloは完全にフリーになるわけで、その場合はそれこそSeahawksあたりに移籍しても止めようがない。シーズン途中のトレード期限までに何とか相手先を見つけられればいいが、さてどうなるか。
 もちろん単なるトレードの駒ではなく、Lanceが負傷したり冴えなかった場合の緊急登板要員として考えれば、Garoppoloの存在はかなり大きい。Lanceがどこまでやれるかは実際に試合に投入してみないとわからないので、本当にどうしようもない場合に備えて並のQBより遙かに優れた実績のある選手がいるのは心強いだろう。一方ファンにしてみればもったいない。Garoppoloレベルの能力を持ったQBが試合に出てこないのは、全体として試合の質を上げ損ねている可能性が高い。サッカーみたいにレンタル契約でBrownsあたりに貸し出したらどうなるか見てみたい気もするが、NFLにそんなシステムはない。
 ではGaroppoloにとってはメリットがあるのだろうか。考えられるとしたら、この時点で当初契約通りのサラリーを手に入れるのはほぼ不可能であることを前提に彼が行動した、という解釈だ。高額サラリーをサンクコストとしてしまえば、後はそこからいくら上積みできるかが問題であり、そこの最大化のみを考えるならこの選択も理解できる。8月末のこの時点でチームオフェンスの中心となるQBを新しく選び直すチームは普通は存在しないし、まして高額サラリーを支払って外部からQBを獲得するチームがいると考えるのはかなり難しい。2年前にNewtonは、タイミング的に今より早い7月に契約したにもかかわらず、契約内容はほぼベテランミニマムだった。GaroppoloはNewtonよりずっと優れたQBだと思うが、この時期に契約先を探すのは選手にとって不利なのはおそらく間違いない。
 そのくらいなら49ersとの契約見直しを通じて少しでも多くのサラリーを手に入れる道を選んだ方がいい。Garoppoloが経済的合理性に基づいて行動するホモ・エコノミクスであれば、そう判断しても不思議はないだろう。これが今シーズンの彼のサラリーを最大化する最善の方法だ、と考えたわけだ。
 ただしこの選択には1つの問題がある。先発できない可能性がある点だ。49ersは少なくともキャンプに入った時点からLanceを先発にする姿勢を明確にしており、彼が怪我をすることなく普通にプレイできれば、Garoppoloがフィールドに立つ機会はほとんどないだろう。もちろんシーズン途中にトレードされればその先でプレイに参加する可能性は残されているものの、シーズン前に新しいチームに行くよりプレイ回数が減るのはおそらく避けられない。Garoppoloは1プレイあたりの成績は優れているものの、Patriots時代はBradyの控えだったため、49ers時代は怪我のために、7年ものキャリアがある割にプレイ回数は少ない(レギュラーシーズンの先発回数は31試合と2シーズン分にも満たない)。年齢(今年32歳になる)も考えるなら、多少サラリーを犠牲にしてもプレイ回数を積み上げたい局面に来ている。
 ここから先は妄想だが、もしかしたら、Garoppoloは49ersで先発に返り咲く可能性がそこそこある、と踏んだのかもしれない。要するにLanceのプレイに対するコーチ陣の評価がかなり低いのを察し、割と早いタイミングで自分に声がかかると考えてサラリーの削減に同意した、のかもしれないのだ。昨シーズンのLanceはANY/Aで7.97と高い数字を出している一方、将来の成績を予想しやすいパス成功率は6割を切っており、あまり高くない。もしLanceの実力がチームの期待に応えるレベルでないことがわかれば、そのとき手元にいるGaroppoloをもう一度使おうという判断になる可能性もある。
 Garoppoloの判断が吉と出るか凶と出るか、このあたりはシーズンが進んでみないとわからないだろう。彼にとって最も理想的なのは、このサラリーを維持したままできるだけ先発回数が増えること。49ersでの先発に限らず、例えば早いタイミングでどこかにトレードされてもいい。逆に最悪なのは、トレード期限を過ぎても移籍せず、一方でLanceが普通に先発を続ける場合だが、そうなってしまうリスクも結構ありそう。Garoppoloの決断は、本人にとってかなりのギャンブルであるようにも見える。
 そしてOverTheCapのFitzgeraldは、チームがここまでトレード相手探しを引っ張ろうとするのを避けるためにも、オフシーズンに何らかの「ロースターボーナス」を手に入れるような契約にすべきだとも述べている。Garoppoloはまだ49ersの救世主扱いされている時に、そうした契約をしっかり締結すべきだった、ということだろう。この点はGaroppolo自身よりも彼が選んだエージェントの責任だと思われる。

 その他のニュースも確認しておこう。手元にいるQBをどう処遇するかに苦悩している49ersとは逆に、控えQBに怪我人が相次いでいるのがPanthersだ。まず今年のドラフトで指名したMatt Corralがプレシーズンゲームで負傷し、今シーズンはほぼ絶望となった。その後で彼らはMayfieldを先発に指名。それ自体は予想通りであったが、その後になって今度はDarnoldが足首を痛めて4〜6週間休む可能性が出てきた。シーズンエンドではないが、Corralがいない状態でDarnoldを控えに使うつもりだったとしたら、これはチームにとってマイナスだろう。
 といっても先発自体に不安があるチームよりはマシかもしれない。Seahawksがその一例で、彼らはGeno Smithを開幕週の先発に選んだ。彼に先発能力がないことは自明だし、だからずっと控えキャリアを歩んできたのだが、競争相手だったDrew Lockの方がもっと残念だったんだろう。Garoppoloが49ersの契約下にとどまり続けるのがわかった時点で彼を手に入れるのが不可能なのも決まってしまったため、Seahawksに残された手はこれ以外になかったのかもしれない。今年は事実上のtankingシーズンと割り切るか、あるいはJordan Loveでも取りに行くべきだろうか。
 一時期トラブっている様子があったBuccaneersのBradyはチームに戻った。何があったかははっきりと述べていないが、年齢的な問題でもあったのかもしれない。プレイの質に影響するかどうかは不明で、これはシーズンに入ってからの様子を見るしかないだろう。いずれにせよBuccaneersのQB事情に急変、という事態には至らずに済んだようだ。あとはRaidersがVikingsにNick Mullensをトレードした。控えQBの動きにすぎないし、それほどの影響はあるまい。
 Patriotsでは怪我でシーズンエンドになっていたMalcolm Butlerが解雇された。正直、一度は引退の噂が出ていた選手であり、主力としては期待できない賞味期限切れの選手だったのだろう。まあそれよりチームの問題はMcDanielsがいなくなったオフェンスにあるようだが。
 そしてSuper Bowlにも優勝したHoFerのLen Dawsonが亡くなった。Chiefsの最初のSuper Bowl勝利をもたらした選手で、自分が生きている間に2度目の優勝を見られたのは幸いというべきか。年齢的には大往生といっていいだろう。
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コメント

神予言

zoo33
>ここから先は妄想だが、もしかしたら、Garoppoloは49ersで先発に返り咲く可能性がそこそこある、と踏んだのかもしれない。
 
この一節はもう、神の領域ですね
実はweek1のLanceを見た時点で、この記事を思い出し読み返しては感嘆しておりました
それが、まさかここまでの展開になるとは、、、恐れいりました。スゴイの一言です

desaixjp
いえいえ、さすがに2試合目にして「怪我でLanceがシーズンエンド」は予想外の事態です。
Lanceの成績についても、確かに今シーズンの数字はリーグでも下位に低迷していますが、1試合ちょっとでは判断は難しいでしょう。
49ersにとってGaroppoloを手元に残しておいたのは間違いなく正解だったんでしょうけど。
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