春リーグ

 NFLでは珍しいことにこのタイミングでQBのトレードがあった。BrownsのMayfieldがPanthersにトレードされ、代わりに後者は2024年の条件付き5巡(場合によっては4巡)をもらう。しかもBrownsはMayfieldのサラリーのうち10ミリオンを支払い、Mayfield自身は3.5ミリオンのカット(というかインセンティブへの変更)に応じたそうなので、Panthersの被るキャップヒットは5ミリオンほど。なるほど彼らにとってはいいトレードに見える。ただしBrownsにとってもwinだという意見もある。
 Panthersはリーグどん底クラスのQBからリーグ平均へのレベルアップが確保できたわけで、間違いなくプラスだろう。ESPNのFPIによればPanthersはディフェンスは平均だがオフェンスがダメすぎる数値となっていたわけで、QBの向上でオフェンスが少しでも良くなるのは望ましいはず。もちろん昨年のDarnoldトレードとオプション行使が間違いであったことがより浮き彫りになってしまうのも事実だが、今更サンクコストを嘆いても仕方ない。建前としてはこれからDarnoldとMayfieldの先発争いがあるわけだが、結果は見えているとの意見もあるし、個人的にもそう思う。Darnoldは間違いの多いドラフト専門家たちがまたもや間違えた追加事例となるんだろう。
 他にオフらしい話題として、Mayfieldを追い出してBrownsのスターターになるはずのWatsonの先行きがどうなるかについて決断の時が迫っているらしいとの報道があった。Watsonは訴訟を避けるためか、告発した24人のうち20人の女性と和解することにしたそうで、引き続き間違った行いはしていないと主張している模様。ただし一部の報道ではリーグが1年の出場停止を課すことを検討しており、それにWatsonの弁護士らが反対するだろうとの見通しが出ている。出場停止はもっと少ない試合数ではないかとの報道もある。
 Mayfieldがいなくなった以上、Watsonが本当に2022シーズンの出場停止を食らうことになれば、BrownsはスターティングQB不在となる。チームにいる控えはBrissettとかDobbsなど。後者はそもそもろくにプレイしていないし、前者のキャリアRANY/Aは-0.69にとどまるわけで、一気にチーム力は落ち込むだろう。それにしてもBrissettはなぜかこの手の「控えから急遽先発」で話題に上ることが多い。Fitzpatrickの正統なる後継者と呼ぼう。
 後はGronkowskiが2度目の引退を表明した。正直まだやれそうな数字(2年間の合計レシーブEPAはリーグ全体で32位)ではあるのだが、怪我の問題もあるだろうし、本人が終えるつもりなら仕方ないだろう。お疲れ様でした。

 とまあオフらしい動きが中心だったが、実はこの時期にもゲーム自体は行われていた。4月からスタートし、先日Championshipゲームが行われたUSFLだ。USFLは元々1980年代に存在したNFLの対抗リーグであり、当時はJim KellyやReggie White、Steve Young、Herschel Walkerらが所属し、そこそこ華やかなリーグとして活動していた。当時からNFLと直接ぶつからない春季リーグとして活動していたのだが、1886年から秋にシーズンをシフトしようとしていたようだが、実際にはそこまで持ちこたえることなく終わってしまった。
 今年になって復活したUSFLは、当時と同じ8チームで構成されている。フランチャイズ名を見るならHoustonやNew Orleans、Tampa Bay、Philadelphia、Pittsburghといった地域にチームがある、かのように見えるが、残念ながら2022シーズンにおいては実態は違っていた。コロナ対策の「バブル」形成のため、今年の彼らはレギュラーシーズン(各チーム10試合)をすべてアラバマ州バーミンガムのProtective StadiumとLegion Fieldで、そしてプレイオフはオハイオ州カントンのHall of Fame Stadiumで開催している。その意味では実験的なシーズンだったように思える。
 それでもUSFLがスケジュールをすべて終わらせたのは立派なものと言えるだろう。何しろ春リーグできちんとスケジュールを最後までやり切ったのは、2001年の最初のXFLにまで遡る。この数年、様々な春リーグが開催されては途中で力尽きていくのを憶えている人なら、直接スケジュールは重ならなくても、NFLという巨人を相手に対抗リーグが生き残るのがとてつもなく難しいことは分かるはず。かくいう私もUSFLを追いかけていたわけでは全然ないが、プレイオフを含めたトータル43試合を無事にこなした点は素直に感心している。
 で、Championshipの対戦は南地区1位のBirmingham Stallions(9勝1敗)と北地区2位のPhiladelphia Stars(6勝2敗)との対戦になった。プレイオフでStallionsが危なげなく南地区2位のNew Orleans Breakersを破ったのに対し、北地区1位のNew Jersey Generalsはまさかのアップセットを食らってしまったための対戦だ。レギュラーシーズンではGeneralsがStarsをスイープしているのだが、プレイオフでは僅かにStarsのQB陣の方がパスで少しいい成績を残しているのに加え、ターンオーバーでGeneralsが-1となっており、しかもその1つがリターンTDとなったところでGeneralsのツキが終わった格好だ。
 実のところ、レギュラーシーズンの成績を見る限り、Generalsは圧倒的に強かった。こちらで入手できるスタッツを使い、各チームのオフェンスとディフェンスのANY/A及びその差を並べると、以下のようになる。

Genarals 7.41 5.16 +2.25
Stallions 5.12 4.44 +0.68
Stars 5.72 5.08 +0.64
Breakers 4.40 3.99 +0.41
Gamblers 4.75 4.59 +0.16
Bandits 4.46 5.43 -0.97
Maulers 4.38 5.45 -1.07
Panthers 4.60 6.50 -1.90

 リーグ全体のANY/Aは5.04とNFLに比べて1ヤードほど低い。それだけパスオフェンスが進まないことを示しているわけだが、その中で唯一NFLの平均を上回るオフェンスを叩きだしていたのがGeneralsである。先発のPerezはANY/Aで6.83と、規定試投数(140)以上を記録しているQBたちの中でただ一人6ヤード以上を記録しており、進まないオフェンスばかりが多かったUSFLの中でほとんど唯一真っ当に進むパスオフェンスを展開していたことになる。
 ランオフェンスを含めても、Generalsのオフェンス破壊力は大したものだ。1試合平均160ヤードのゲイン(2人のRBが500ヤードを超えたうえに控えQBのJohnsonが300ヤード超を稼いだ)を得ており、2番手のStallions(135.7ヤード)を大きく上回っている。一方Starsの数値は103.4と、ここでも数値的にはGeneralsの方がいい。ただし平均ヤードはGeneralsの4.6に対してStarsは5.1と、ラン効率という点ではStarsの方が少し高かったようだ。
 Starsの成績がリーグの中でも突出していたのは得点力。Stallions(234点)、Generals(232点)を上回る262点を叩き出した理由の一端はキッキングにある。PATの成功率は27/28とリーグで最も高く、FGの成功率は14/21とStallionsにはかなわないがGeneralsよりは高い。実際、オフェンスのANY/AでStarsはGeneralsに次ぐ数字を収めており、そうした背景があってこその得点力だったのだろう。
 結果、ChampionshipはStallions(ANY/Aの差+0.68)とStars(同+0.64)というなかなか拮抗した組み合わせになった。実際のゲームも最後までもつれたようで、最終Qに両チームが入れた得点は計28点、最終的には3点差という、なかなかいい試合になったようだ。こちらで紹介した「つまらなさ指数」で見るなら数値は-3。残り3:16でStallionsのMcGoughが決めたTDパスが最終的にはカムバックドライブとなったわけだが、もしその直後のPick 6がなければStarsが逆転していた可能性もあるわけで、復活初年度としては十分に満足のいく結果だったろう。
 ゲームを通じてのANY/Aを見るとStallionsが6.93でStarsが5.95と、Stallionsの方がかなり圧倒していたように見える。ランもStallionsの25回175ヤード(平均7.0)に対してStarsが17回の80ヤード(同4.7ヤード)と一方的だ。そしてターンオーバーでもStarsが-1と、どこをとってもStallionsの方がいい。ゲームがここまでもつれたのは、キッカーがFGとPATを1回ずつ失敗したあたりに原因がある、のかもしれない。
 USFLは来シーズンも開催するつもりらしい。そして2023年にはXFLも開催を予定しているという。もちろんこれらの春リーグがNFLに匹敵するような人気を博する可能性はほぼ皆無だと思うし、プレイの質もデータを見る限り間違いなく低い。今年はCovid-19バブルとして単独都市開催を行ない、移動経費が少なかったというメリットがあった可能性も考えられる。普通に全米を移動しながらのプレイになったときの採算がどうなるかも気になるところだ。とはいえ、オフの暇つぶしになりそうなネタが増える、くらいのメリットは期待してもいいだろう。
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