2022年のNFLドラフトが終了。今年はRavens、Bears、Packers、Giantsがそれぞれ最多の11人を指名。逆に少なかったのはDolphins(4人)やSaints、Eagles(5人)あたりだ。前々から書いているがドラフトはcrap shootなので、当たりを引く確率を増やすためにまず人数を増やすという選択は当然視野に入ってくるだろう。人数で上位に入ってきているチームの中にはRavensやPackersといったドラフトで実績のあるチームが顔を出しているのも、そうした点があるからかもしれない。
といっても実際には単に人数を増やせばいいというものでもない。指名順位まで考えれば上位指名の方が当たりの確率は高いわけで、それも含めて内容を見る必要があるだろう。その際には
各種のValue Chartを使う手がある。ただ有名なJimmy Johnsonのチャートは上位陣を過大評価していると言われているため、その使用は避ける。今回は多くの指名順についてValueを示している
Fitzgerald-Spielbergerのチャートを使おう。
以下では実際に選手を指名した順位のValueと、一切トレードを行なわなかった場合に得られたであろうValueとの差を2つの方法で示している。左からチーム名、実際のValueとトレードしなかった場合のValueの差、及び両者の比率だ。いずれも数値が大きいほど指名権を上手く手に入れたことを意味している。
Giants 3897 1.66
Texans 2739 1.44
Jets 2466 1.41
Packers 1872 1.37
Chiefs 1749 1.34
Ravens 1708 1.25
Seahawks 1543 1.28
Vikings 1302 1.25
Patriots 1181 1.25
Titans 1130 1.22
Falcons 930 1.16
Buccaneers 393 1.09
Bills 263 1.06
Cowboys 255 1.05
Jaguars 233 1.03
Commanders -20 1.00
Bengals -245 0.94
Bears -262 0.95
Lions -450 0.94
Eagles -647 0.87
Steelers -742 0.86
Broncos -801 0.85
Saints -831 0.86
Colts -1041 0.81
Browns -1109 0.81
Chargers -1424 0.75
Panthers -1534 0.73
Cardinals -1695 0.68
Raiders -2014 0.57
49ers -2101 0.67
Dolphins -3300 0.34
Rams -3445 0.44
トップ3にはGiants、Jets、Texansという、このところ冴えない成績のチームが名を並べている。彼らはトレードしなかった場合でもそれなりのドラフト資源を得られる計算ではあったが、それをさらに膨らませることに成功しているわけで、特にGiantsとJetsについてはフロントがうまく切り盛りしたと言える。後は指名選手たちについてどれだけツキに恵まれるか次第。これらのチームは上手くいけば低迷状態から脱出できるだけの条件を揃えつつあるわけだ。問題は、例えば
JetsのWilsonのように、一番肝心なポジションの人材がこれでいいのか、という点だろう。
その意味では4位以降のPackers、Chiefsあたりこそ、真の勝者と言えるかもしれない。平均以上のQBを持っているRavens、Vikings、1年目でそこそこの成績を出したQBを持つPatriotsあたりも、今年のドラフトでは上手く立ち回ったと言っていい。チーム力がピークにあると思われるBillsやBuccaneersも割と健闘しており、一部ならともかく急に全体の勢力図が変わる可能性はあまりなさそうだ。
逆の意味で驚きなのはDolphins。Ramsは元からドラフト権を売り飛ばしてベテラン重視の目先に賭けるチーム作りをしているのでこのランキングは想定内だが、Dolphinsがここまでドラフト権を無碍に扱うのはいささか乱暴に見える。49ers、Raidersあたりも微妙。一方、SaintsやEaglesは人数ではなくこのデータを見るとそれほど悪くないのだが、少ない選手に多くのドラフト資源を投入したとも言えるわけで、外れた時のダメージは大きいだろう。
ただし、ここのデータだけでは把握できないものもある。チームによっては選手やドラフト資源を来年以降のドラフト権に回しているところもあり、その分だけ今年を犠牲にしている可能性があるからだ。というわけで
2023年のドラフト権を既にトレードしたチームや、補償ドラフトを手に入れられるチームについて、その損得も調べてみた。同じドラフトチャートを使い、補償ドラフトについては
OverTheCapの予想を使う。
するとDolphinsはプラス1004という数字が出てくる。彼らは来年の2巡中ほどのドラフト権を追加で手に入れているわけだ。もちろんそれを入れても今年のマイナスを埋めるほどのメリットとは言えないが、見た目ほど酷いドラフトではなかった可能性はあるだろう。もっとマシなのはEagles(+1245)で、来年分まで計算に入れれば彼らはむしろプラスを計上していることになる。さすがRoseman、抜かりない。
今年のドラフト資源をプラスした分にこの来年分を足したランキングを見ると、上位と下位には大型QBトレードにかかわったチームの名が並んでいる。Watsonを放出したTexansは+6003で1位、RussをトレードしたSeahawksは+4369で3位に顔を出しており、逆にWatsonを手に入れたBrownsは-2223で下から6位、Russの行き先であるBroncosは-2972で同2位だ。前者2チームはこのドラフト資源をきちんと活用してチーム力を高めることを、後者は逆にチーム力が落ち込まないよう工夫することを求められている。全体2位のGiants(4382)、6位のJets(2227)も、ドラフト資源を生かしてそろそろ低迷を脱する必要があるところだ。
問題はそうした再建期チームではなく、今まさに全盛期のChiefsが3514という高い数字で4位に顔を出している点だろうか。本当に抜け目ないのはVeach、ということになる。たった1年の空白でプレイオフに戻ってきたPatriotsも5位(3379)に顔を出しており、また歴史的にドラフトがうまいPackersが7位(2174)、Ravensが8位(1922)に入っているのも、大したものだと言える。この辺りのチームが継続的に強さを維持している理由が窺える数字だ。
下位で目立つのは明日なき暴走を続けているRams(-3999)、いつものLoomisしぐさを続けているSaints(-2555)、QBを巡って迷走を続けているPanthers(-2406)といったところ。Ramsが優勝してしまったのでこの路線を突き進むチームがもっと増えるかと思ったが、それほどでもなかった。まあ実績を見てもRams路線よりは普通にドラフト権を大切にするPatriots、Packers、Ravensの方が合わせた優勝回数は多いわけで、まだまだRams路線が正解とまでは思えないチームも多いんだろう。
それにドラフトの成否はドラフト資源の多寡だけではなく、それを使って誰を指名したかにもかかってくる。その結論が出るのはまだ先の話。焦らず行く末を見守ればいい。
なおPicket以外のQBたちの指名はかなり遅れ、ようやく3巡でFalconsがRidderを、TitansがWillisを、PanthersがCorralを指名した。後は4巡でPatriotsがZappeを、5巡でCommandersがHowellを指名したのが目立つくらい。
こちらで紹介した7人のうちStrongはそもそも指名すらされなかった。
QB大量指名の翌年にはQB指名が低調になるという過去の経験則が今年も成立したようだ。
とはいえこれで各チームのロースター候補がかなり固まってきたのは確か。他に現地5月2日の5年目オプション行使期限があるが、これも
大半の選手の方針は決まっている。後は大きな怪我でもない限り、キャンプ開始まであまり話題のない時期に入る。
Commandersの金融法違反疑惑の捜査などで急な進展が生じる場合など、オフシーズンネタの方が注目を集めやすくなる季節の到来だ。
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