刑事事件から解放された(ただし民事はまだ残っている)Watsonの移籍先が決まった。彼が面会した4チームのうち、
一度は候補から外れたはずのBrownsが復活。彼の最終的な行き先はNFCのチームではなく、同じAFCの北地区になった。
このトレードの評価が分かれてしまう理由はどこにあるのだろうか。一つ参考になるのが、
Football Outsidersに載った記事だ。記事の前半ではWatsonの実績が高いことを説明。BrownsのMayfieldに比べてもその実績は対照的で、Brownsが支払った対価も「NFLでトップQBを手に入れるためのコストである」とはっきり評価している。
しかし、記事の後半ではWatsonをチームに入れることにかかわる問題点が指摘されている。もちろんフィールド外の問題だ。最初に書いた通り、彼の問題は刑事事件にはならなかったものの、民事の問題はまだ残っている。場合によっては彼に対しリーグが出場停止を命じるリスクはまだあるし、何より彼を雇うことに伴う「モラルのコストはどうなるのか」、というのが記事中の指摘だ。22人の女性による告発を完全になかったものにすることはできない、という主張だろう。
これは正直言って難しい。原則的に言えば起訴されなかったWatsonに対し、なおモラル面での批判を浴びせるのは、推定無罪の原則に反していると思える。民事についても単にケリがついていないだけであり、本当に出場停止を食らうかどうかすらまだ未確定だ。一方、NFLは興行であり、人気商売であることもまた事実。世間一般の反応は彼らの商売にとって重要であり、Watsonトレードが
「女性に対するリーグの姿勢を示している」と言われてしまうと、リーグとしては困ったことになるだろう。
この数年、NFLは以前よりも政治的に正しい主張を受け入れてきている。CommandersというWashingtonの新しい愛称がその典型例であるし、
補償ドラフトの対象にマイノリティの雇用絡みのピックを入れているのもその一例だ。正直なところ、昔からNFLの選手には不品行が絶えなかったが、かつては目こぼしされていたものについても世間の目が厳しくなりつつあるのはおそらく事実。Watson自身だけでなく、彼を迎え入れたBrownsに対しても同様の視線が向けられる可能性はある。
そうした評価の難しい問題を除き、ではこのトレードの勝者は誰だったかと言えば、おそらくWatson本人とその代理人だろう、
と書いているのがFitzgerald。実はトレードに合わせてWatsonは5年230ミリオン(全額保証)の新たな契約を手に入れており、これは実際には2026年に94ミリオンのフランチャイズタグを貼るのと同じ効果を持つそうだ。Brownsの投入額がすさまじいことになるのは間違いない。そもそも年平均46ミリオンはWatsonの同期であるMahomesを超える数字だ。実際にはその前に
Rodgersが3年150ミリオン(年平均50ミリオン)という契約を結んでいたため、過去最高額にはならなかったが、丸1年プレイしていないQBへの支払いと考えればやはりかなりの金額と思える。
おまけにBrownsは2021シーズンの
Pass Block Win Rateでリーグ4位とパスプロテクションが高く、ディフェンスは
Pro-Football-ReferenceのEXPでリーグ15位とそこそこの位置にいる。そしてSaintsやFalconsほどのキャップ地獄には嵌っておらず、これからチームの強化を図る余地もそこそこある。コーチ陣を見てもBrownsならプレイオフに出たHCと手を組むことが可能だ。WatsonがNFC南のチームではなくBrownsを選んだのも、理解できなくはない。
Watsonを追い求めながら手に入れられなかったNFC南の3チーム(Saints、Falcons、Panthers)がどうするかも注目点だろう。Falconsは
前にも書いた通りRyanの契約をリストラしているが、そのうえで彼を継続して使うのか、それとも放出して再建を始めるのか、
色々なルートがあり得る。Panthersは引き続きDarnoldを使うという残念ルートを取るか、他のQBを探すかが問われるし、SaintsはWinstonを呼び戻すかどうかが注目されるのだろう。いずれにせよ、まだしばらくQB市場の動きは続くと思われる。
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