Watsonの今後

 ウクライナの動きとNFLを交互にアップしている状態になっているが、告発されていたWatsonについて起訴されないことが分かった。この大陪審の決定により、これまで1年間凍結されていたWatsonのトレード話が一気に動き出すと見られる。本人にとってのみならず、彼との契約期間の残りが短くなる前にトレードしたがっていたTexansにとっても、またQBがほしいと思っている他のチームにとっても、ようやくこの時が来たと思える状況だ。
 早速、QBを必要としているチームのどこが彼に手を伸ばすだろうかとの推測が飛び交っている。Texansは以前から1巡3つ以上の対価が必要と言っていたが、単純に数で見るなら今年の1巡を3つ持っているEagles、2つ持っているGiantsとJets、Lionsあたりがまず最有力候補に見えてくる。ただし、再来年の1巡まで譲り渡すつもりなら今年の1巡があるチームであればWatson争奪戦への参加は十分に可能だ。
 むしろQBを必要としているかどうかを見た方がいいかもしれない。まずAFCの各チームに関する必要なポジションを見ると、QBが挙がっているのはTexans、Colts、Steelersの3つ(もちろんTexansは対象外なので実質2つ)、NFCはPanthers、Lions、Vikings、Saints、Seahawks、Buccaneers、そしてCommandersの7チームだ。この時点で1巡をたくさん持っているチームのうちEagles、Giants、Jetsが脱落してしまう。個人的にはGiantsが本当にQBを不要としているのかは疑問だと思うが。
 次にキャップスペースの問題がある。Watsonをトレードで手に入れると、初年度にまず35ミリオンのキャップヒットが発生するし、その後も30ミリオン超のキャップヒットが続く。金額自体はWatsonの実績を考えると別に高くはない、というかむしろ安いかもしれない。だから移籍後にチームがWatsonと契約延長などの形で見直しに出る可能性すらあると思う。ただその場合であっても、初年度の移籍直後にキャップスペースが十分あることは必要だ。
 実のところ単純にキャップスペースが35ミリオン以上空いているチームは現時点ではほとんどない。Colts、Seahawks、Jets、Dolphins、Jaguarsくらいだ。もちろんキャップスペースは必要に応じて調整は可能であり、少しリストラをすればSteelers、Lions、Commandersなども受け入れは可能。頑張ればPanthers、Buccaneersも必要額に届くが、SaintsやVikingsあたりはさすがにスペースが厳しそう。どうしてもWatsonがほしいのなら、よほどの対応が必要だろう。
 そう考えると有力候補はColts、Seahawks、Steelers、Lions、Panthers、Buccaneers、Commandersあたりとなる。このうち同地区のColtsにトレードする可能性はほぼないと考えると、残る6チームが対象にのぼってくる。彼らの持っているドラフト権を考えると最も動きやすいのはLionsであり、また今年の指名順が高いPanthers、Seahawks、Commandersあたりも対価を出しやすくなる。SteelersやBuccaneersのように昨シーズン、プレイオフに出たチームはちょっと厳しいかもしれない。とはいえFitzgeraldも指摘しているように、決して不可能なことではない。
 QBに困っているチームがWatsonを取りに行くのは当然のムーブ。確かに彼をRodgersと比べるのは無理があるが、Russell Wilsonと比べればむしろ勝っているくらい有能なQBだ。キャリアのRANY/Aは+1.01とWilson(+0.86)より高いし、EPA/PでもWatsonの0.205に対してWilsonは0.171にとどまる。加えてWatsonの年齢は来シーズンが始まった直後で27歳と、Wilson(シーズン中に34歳になる)よりもずっと若い。直前までこのオフで最もうまいトレードをやったと思われていたBroncosが、「もう少し我慢していればもっといい選手を手に入れられたかもしれないのに」と言われてもおかしくない状態だ。
 Watsonは契約で同意がない限りトレードできないことになっている。従って彼の観点からトレード先を考える必要もあるだろう。こちらのツイートでは「いいHCがいるか、いいOLがいるか、ディフェンスはいいか」といった視点で判断が下されるのではないかと見ている。ディフェンスEPA/Pで言えばQBを欲しがっているチームのうちSeahawks、Steelers、Vikings、Panthersがトップ10に顔を出しており、またPass Block Win Rateで見ればSaints、Commandersがトップ10だ。HCの良しあしで言えば安心できるのはSteelers、Buccaneersあたりだろうか。あと、NFCの方が有能なQBが少ないのでSuper Bowlにたどり着きやすい、という点も考えられるだろう。

 WatsonがQB市場に出てくるのがほぼ確実になり、市場に出るであろう他のQBたちの動向にも影響が及びそうだ。Watson不起訴が決まる前に大本営に載っていたこちらの記事ではそうしたQBたちの今後のシナリオについて述べており、Cousins、Darnold、Garoppolo、Goff、Daniel Jones、Mayfield、Murray、Winstonの名前が載っている。
 Watson参入が最悪のケースをもたらし得る一例としてこの記事で触れられているのがMayfieldだ。BrownsがWatsonを手に入れ、MayfieldはMillsを相手にTexansの先発の座を巡ってキャンプで争う、というシナリオ。もちろんいくらMayfieldが期待外れ(RANY/Aで-0.14)と言ってもMills(-0.60)よりはマシであり、普通なら先発競争に勝てるとは思うが、再建途上のTexansでの先発はBrownsでの先発よりさらに大変そうだ。
 他のシナリオとして、PanthersがWatsonを取りに行く場合、Darnoldはどうするかという問題が生じる。記事中ではPanthersがベテランを取った場合として、年18.9ミリオンの高額バックアップとして彼をとどめ、来年にはFAにするという話が載っているが、正直Watsonが取れるならデッドマネー覚悟で彼を切った方がまだ少しはプラスになるだろう。
 名前が出てきていないQBの中では、Bridgewaterがどうなるかも気になる。前にも書いた通り、彼はWentzレベルの実績を残しているQBだ。彼が市場に出てくるのはほぼ間違いないだろうし、上手くQBを手配できない、あるいはルーキーを指名するに際してその競争相手やメンターが欲しいと考えるチームが、彼に手を出す可能性は十分ある。最悪のケースとしてあり得るのはNewtonのように競争に敗れシーズン直前に解雇、というパターンだろうか。
 いずれにせよこのオフはベテランQBの動きが昨シーズンよりもさらに話題になると見てよさそう。ドラフトに有望なQBがあまりいないと言われている年だけに、例年よりも早くロースターを固める動きが進むかもしれない。
 一方、Falconsがキャップスペースを空けるためにRyanの契約をリストラしたとの報道もあった。48.7ミリオン近くのキャップヒットだったのを12ミリオンほど引き下げたそうだが、この結果として契約最終年となる2023シーズンのRyanのキャップヒットは実に55ミリオンに達する見通しらしい。その時、彼は38歳となっている。前にも述べた通り大半のQBにとってはキャリアが終わる年齢だ。
 Ryanは最近3年のうち2年でリーグ平均を下回るANY/Aしか残しておらず、年齢も踏まえると来年に彼をトレードで欲しがるチームはいないと考えていいだろう。つまり2023シーズンのFalconsはこの巨大なキャップヒットを抱えて彼にプレイさせるか、もしくは解雇してやはり巨大なデッドマネーを抱え込むかの2択を迫られることになる。苦しいキャップ事情を何とかすべく彼のキャップヒットを後回しにし続けた結果として、Falconsはまさにサラリーキャップ地獄にはまった形になっている。

 最後にQB以外ではCooperがBrownsにトレードされる件が報じられた。Cowboysは彼と6巡を差し出し、Brownsは5巡と6巡を送る。CowboysのCooperとの契約はサイニングボーナスや保証額の少ないもので、要するにダメなら割とすぐにカットできる仕組みになっていた。実際に解雇の話は出ており、むしろトレードでドラフト権を手に入れられただけCowboysにとってはラッキーな取引だったのだろう。
 一方Brownsから見ると彼の契約はいささか高額すぎるとの指摘がある。3年間に20ミリオンずつの支払いとなっているのだが、例えば2022シーズンのキャップヒットで見ると全体で6番手という極めて高い数字になっている。CooperのEPA/Pは50回以上プレイしているWRの中では17番手に位置しており、リーグでも優秀なWRなのは間違いないが、この金額が妥当かどうかと言われると微妙なところだ。
 FitzgeraldはBrownsが2年間の保証付き契約にする代わりに、2年間の支払額を32~35ミリオンまで減らすという提案をしてもおかしくないと見ている。Browns自体のキャップスペースにあまり余裕がない点も問題だが、こちらはLandryの解雇もしくはペイカットで対処できるそうだ。
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