架空世界作り動画

 架空世界設定について、プレートテクトニクスから取り組んでいる事例があることを前に少し触れた。実はこのあたりについてはかなりマニアックなことをしている人もいる。一例がこちらのYouTuberだ。こちらにはアルベドやプレートテクトニクス、気候区分などについてどう設定するかがいくつかの動画にまとめられている。大気循環はこちら海洋循環についてはこちらが参考になる。
 プレートテクトニクスの動画は、基本的なプレートテクトニクスの機構を説明しているだけでなく、具体的に架空世界を設定する際にどのような方法でプレートテクトニクスを生かせばいいかといったことまで説明している。
 プレートテクトニクスを考えるうえではプレートの種類と、プレートの境界での動きを中心に把握するのがいいそうだ。プレートには大きく大陸型と海洋型があり、前者の方が分厚いものの、比重は相対的に軽い。境界での動きは収束型、発散型、トランスフォーム型(すれ違うように動くタイプ)があり、これらの組み合わせによってプレートの境界でどのような地形が出来上がるかが決まってくる。
 大陸型と海洋型がぶつかると、比重の重い海洋型プレートが下へ沈み込む格好になる。アンデス山脈のある南米はこの形だが、そこでは深い海溝と多発する地震、山脈と火山が生成される。海洋型のプレート同士でも同じ現象が生じるが、ここではすべてが海面下での現象となり、大陸の山脈ではなく島ができる。マリアナ諸島などはこちらになる。最後に大陸型と大陸型が収束する場合はどちらも沈み込むことなく、正面から衝突してヒマラヤのように高い山が出来上がる。地震も多発する。
 海洋型のプレートが互いに離れる「発散型」の場合、大西洋の中央にあるような中心部に溝のある海嶺が形成される。やはり地震が多く、またところどころ火山性の島が形成される(アイスランド)。大陸型プレート同士が発散する場合はアフリカ東部にあるような地溝帯が形作られ、同じく地震が発生し火山もできる。なお大陸型と海洋型のプレートが発散する場合、境界線はすぐに海の下になり、海洋型同士の発散と同じような地形が出来上がる。
 トランスフォーム型は大陸型プレート同士と、海洋型プレート同士で見られるもので、前者の事例はアメリカ西海岸のサン=アンドレアス断層のようになり、地震が起きる。後者もやはり地震の原因となる。以上の条件をまとめた一覧表は動画の3:00あたりで見ることができる。注意すべきなのは3類型のどれに当たるかはあくまで相対的な動きで決まる点だ。同じ方向に動いているプレート同士でも、速度が違えば境界線が発散したり収束したりする。
 こうした知識に基づいて架空世界のプレートテクトニクスを作成する方法としてこのYouTuberが推奨しているのはPhotoshopのフリー版ともいえるGIMPと、文字通りプレートテクトニクスの再構築に使われるGPlates(こちらもフリー)を利用するもの。動画では具体的に「パンゲアのような超大陸が北半球に存在しているが、今にも分裂しようとしている段階」の架空世界を実際に作ってみせている。
 具体的にはまず正距円筒図法のプレート図(縦横比は1対2)を画像ソフトで作成し、7~8個の大きなプレートと、10個ほどの小さなプレートを配置する。プレートの境界は最大でも3つのプレートが接するようにしており、十字路のような場所は設定しないようにするのが注意点だそうだ。それからこの画像をGPlatesに移し、特に北極と南極のプレートがうまく設定できているかどうかを確認。修正を入れる。
 続いてどのプレートが海洋型で、どれが大陸型かを定める。地球と似た環境の星を考えるなら海洋の方が大きくなるはずなので、最も大きなプレートを海洋型にするといった方法を取るのが望ましいという。それからプレートの動きを決め、当初想定した「今にも分裂しようとしている」大陸にうまく適合する場所を探し出す。そして大陸を書き、プレートの境界で何が起きているかについてこれまでの知識を生かして設定する。プレートによっては一方向への動きだけでなく、旋回するような事例もあるそうだ。
 次に島嶼の設定をしてもっともらしさを出す。その際にはホットスポットと呼ばれるプレートと無関係にマグマが地表近くまで上昇している地点を設定し、そこからハワイ諸島のような火山性の島を作る。ちなみに大陸上のホットスポットはカルデラを形成するそうだ。こうやってGPlates上で大雑把な大陸と島の位置を定めたら、その画像を再び通常の画像ソフトに移し、ありそうな山地を描いていく。その際には大陸周辺にある浅い海も一緒に描いているし、またプレートの境界も記している。最後にG.Projectorというソフトを使って様々な種類の地図を作ったところで動画は終わっている。
 プレートテクトニクスは以前にも書いた通り、生物相に影響を及ぼす各種の地形、そして火薬というイノベーションを持ち込む場合の硫黄の山地の偏りを決めるうえで、結構重要な影響を及ぼす。その意味ではプレートテクトニクスをきちんと考えてから大陸を配置する方が、こだわりの設定っぽく見えるのは間違いない。ただし、世界各地を見ると、足元のプレートテクトニクスが機能するより古い時代から存在していた山地もあり、プレートの境界以外がすべて平野というわけでもない。プレートテクトニクスだけに頼るのも決してよくはないようだ。

 主にプレートテクトニクスに基づいて大陸の配置が終われば、次は気候に影響を及ぼす大気や海洋の循環を考える順番だ。大気循環についてはこちらの動画で説明がされており、偏西風や貿易風、亜熱帯高圧帯などについてそのメカニズムが紹介されているし、前回の動画で作った架空世界での大気循環についても描いている。
 しかし最も重要なのは自転速度の違いが大気循環に及ぼす影響について描いている部分だろう。地球のように24時間で1回自転している場合は、これまでも述べたように半球に3つの「セル」(空気の循環)が出来上がる。しかし回転速度が遅い場合セルは1つになる。つまり極から赤道への1つの流れのみになる。逆に回転速度が速い場合、具体的には6時間で1回転する場合は7つのセルが、3時間で1回転なら5つのセルが出来上がる。さらに自転と公転が一緒の場合の大気循環や気候についても言及している。
 大気循環の重要性については動画の後半で指摘している。基本的にダイアモンドの銃・病原菌・鉄でも書かれていたのと同じ話だ。また赤道収束帯や亜熱帯高圧帯、亜寒帯低圧帯などは帆船が乗り越えるのに苦労した地域であることも言及されているし、他に気候に影響する逸話がいくつか紹介されている。さすがに地軸の傾きに関する話は載っていないが、1日の長さが違う世界を考える場合、それが生物相にどう影響するかについて考えるヒントになるだろう。
 海洋循環の動画はこちらだ。海洋循環は大気の流れに影響を受けるため、まずは大気について考えてから海洋の流れを把握するのがよさそう。自転と公転が一緒の場合の海洋循環についても少し触れている。後半はポリネシア人がハワイより後にならないとニュージーランドに到達できなかった理由とか、ラニーニャ、エルニーニョをもたらす要因などをこぼれ話風に紹介している。
 以上を確認したうえで、最後はケッペンの気候区分を決める方法を示したいくつかの動画(こちらこちら)に移れば、どのようにリアリスティックな気候を設定できるか決められる。あとはそこから生物相を想定し、ダイアモンドやTurchinらの議論に沿って複雑な社会を構成するために必要な要件がどのあたりに整っているかを調べればもっともらしい歴史作りが進むわけだ。
 ダイアモンドやTurchinの議論を見ても、環境はそれだけで歴史の流れを決めるわけではないが、環境が決めた枠組みから外れた歴史は簡単には生まれないことが分かる。単に大陸の形状や各種資源の存在位置だけでなく、分断された土地が国家形成の在り方に影響するという研究もある。環境条件を決めたうえで「架空の世界史」を考えれば、ただのフィクションにそれらしさを与えることができるかもしれない。
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