チーム作りのリソース

 オフシーズンに入ったところで、Over The Capに早速このオフに関する記事が載っていた。Ranking NFL Offseason Resources for 2022では、来シーズンのキャップスペース、ドラフト資源、FAで出て行く選手のスナップカウントという3種類のデータを基に、どのチームが来シーズンに向けて最も余力があり、逆にどのチームに余力がないかをまとめている。
 最下位になっているのはBuccaneers。といってもこのデータにはBradyの引退はまだ反映されておらず、彼が戻ってこない場合チームはさらに多くのスナップカウントを穴埋めしなければならなくなる一方、キャップスペースへの貢献は限定的だという。FitzgeraldはRamsでなくBucsこそ2021シーズンに最もall inしたチームだと記している。
 次に低いのはCowboys。もちろんPrescottのサラリーをリストラすれば少し余裕が出てくるのだが、それにしてもこちらも厳しいことは間違いない。Bucsは昨シーズン、Ramsは今シーズンに優勝することでall inの元を取ることができたが、Cowboysは残念ながらそうした恩恵もなかった。同じく30位のBearsもなかなかに厳しい。チーム力という点ではCowboysよりさらに低いだけに、来シーズンに向けての戦力強化余力がないのはさらに悩ましいところだ。
 Rams、Chiefs、Cardinalsあたりはチーム力がついてきている分だけ、このランキングで下位に沈んでいてもまだ我慢できるかもしれない。これから強化するのではなく、今の戦力を落とさない方法を追求すればいいからだ。Titansや49ersあたりも同じ路線で臨むことができる。一方、24位のFalconsや27位のPanthersはそうは行かない。Falconsについては今になって始まった問題ではないので時間をかけて解消するしかないと思うが、Panthersは昨年のトレードがマイナスに影響しているという。
 逆に上位陣を見るとどこよりも見通しが明るそうなのはEagles。Wentzの処理を強いられた時にはどうなることかと思われたが、むしろ期待以上のリターンを得てこのランキングでは2位に顔を出している。プレイオフ出場チームでここまで余力のあるところは他にはない。さすがにキャップの柔軟性については(過去にリストラをやりまくったせいで)あまりないようだが、これだけ余裕があれば気にしなくていいだろう。プレイオフには届かなかったが勝ち越したDolphins(5位)、得失点だけならプラスのBroncos(6位)あたりも恵まれた状況と言える。
 ただ大半のチームはこれから再建に向かう形だ。1位のJets、3位のJaguarsは当然。どちらも昨年のドラフト1巡でQBを指名したチームだが、彼の周囲を実力ある選手で固める作業はまだこれからであることが明確になった1年だった。Browns(4位)もプレイオフにたどり着けず、Mayfieldの先行きが明確でないなど弱点がある。7位のLionsもQBよりドラフト権を重視したトレードを行った結果が、そのまま数字に出ていると言える。
 現時点でのチームの実力に比べて非常に恵まれたポジションにいるのはBills。ドライブ指数でトップだった彼らは、Football Outsidersが出しているWay Too Early 2022 DVOA Projectionsでも2番手に顔を出しており、それに加えてFAやドラフトでの強化もしやすいとなれば、かなり強力なチームを作れる可能性もある。1990年前後に強力オフェンスを誇ったK-Gun以来のBillsの天下がしばらく続く可能性はある。
 同じAFC東のPatriotsも12位と悪くないポジションにいるが、こちらは既存ロースターの実力がBillsほど高いとは思われていない分だけ評価は低め。11位のRaidersはCarrがどうなるかといった問題を抱えているし、9位のChargersはむしろこのオフに本当にいいチームを作れるかどうかが課題だろう。Commandersも8位となかなか良さそうに見えるが、実はキャップスペースとドラフト資源はそれほど多いわけではないところが懸念材料だ。
 ちなみにOver The Capのランキングは「平均順位」で見ているが、各指標の標準偏差でランキングし直すと順番がいくつか入れ替わる。特に大きく順位が変わるのは12ものランキング低下に見舞われるSaints、8つ低下するPackers、6つ低下するTexansと、6つ上昇するGiantsあたりが目立っている。ただし、どちらのランキングがより実態を反映しているかは何とも判断しかねるが。

 チーム作りのためのリソースがどのくらいあるかも重要だが、それをどう使うかもチームにとっては課題になる。特に重要になるのがQBであるのは言うまでもない。既に安心できるQBを抱えているところはともかく、そうでないチームや、今シーズンの先発QBがいなくなるチームなどは、リソースの使い道として新たなQBの入手もテーマになる。例えばESPNはProjecting 2022 NFL quarterback trade marketという記事でRodgers、Russell Wilson、Watson、Garoppolo、Cousins、Wentz、Carr、Mayfieldらのオフの動きについて色々と言及している。
 ベテラン以外でQBを補強するのならドラフトだ。ドラフトについて言えばQB指名は数が勝負、という話は前にも書いている。もちろん実際には単純な数だけではなく、指名順位を含めたリソーストータルを見る必要があるのは確かだが、数撃ちゃ当たる、というか当たりを引くには数を増やすのが正攻法なのは間違いない。というわけで2000年以降にQBを指名した数をチームごとにまとめてみると、10人以上を指名したのは以下の7チームであった。

13人 Jets
12人 49ers、Broncos、Patriots
11人 Ravens、Redskins(現Commanders)
10人 Browns

 これらのチームについて、2000年から2021年までのDropback EPAを見ると以下のようになる。

Patriots 0.169(1位)
Broncos 0.065(11位)
49ers 0.029(18位)
Ravens 0.022(20位)
Redskins 0.008(22位)
Jets -0.031(30位)
Browns -0.057(32位)

 大半が下位のチームであるが、その中で例外的なのがBroncosと、そして何よりPatriotsだ。彼らはそれほどQBに苦労していない状態にもかかわらず、それだけのドラフト資源をQBに投入していたことになる。特にBroncosは12人中2巡以上が5人と、かなり力を入れた投資をしている。Patriotsの場合は順位は少な目だが、大半の期間でBradyというGOATを抱えていながらなおQB指名を続けていた点は興味深い。
 逆にパス成績で低迷しているわりにQB指名が少ないのはBears(指名数8人、Dropback EPAは31位)、Cardinals(8人、29位)、Lions(7人、27位)など。パス成績が良ければ無理にQBを指名しなくてもいい、と判断するのは不思議ではないが、パス成績で低迷しているのにあまりQBを指名していないのは問題のような気もする。BearsはCutlerとTrubiskyという平凡QBで計11年を費やしたのがQB指名の少ない理由か。CardinalsはWarnerやPalmerといったFAでのQB獲得がこの期間は多かった。
 ただしこの3チームは少ない指名数の中で1~2巡の指名数が多い(いずれも3人)という特徴もある。分散投資ではなく個別銘柄への集中投資とでも言えばいいだろうか。残念ながら、彼らのうち先発として長続きしたのはStaffordくらいで、外れた場合のプランBがなかったことが分かる。今後の各チームの動向を見るうえでは、チーム作りのリソースをどう使うかといった点にも注目した方がよさそうだ。
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