Super Bowl LVI

 たまっていたネタが少し減ってきたので、更新ペースを戻す。

 Super Bowl LVIが終了。アップセット続きのプレイオフだったが、最後はfavoriteの勝利で終わった。といっても残り2分を切ってからの逆転TDというなかなか際どい展開だったので、このプレイオフを特徴づける「盛り上がる試合」は最後まで続いたことになる。特にディヴィジョナル以降の7試合は全て1ドライブ以内の点差で終わっており、加えて全て4Q以降に決勝点が入る展開だった。昨シーズンは最後に一方的な試合で終わったのだが、それに比べると面白いシーズンエンドといえる。
 QBレーティングで見るとStaffordが89.9だったのに対し、Burrowは101.0と負けた後者の方が高い数値になっており、ANY/Aでも前者が5.71に対して後者が6.00と上だ。一方、QBRを見るとStaffordの60.8に対してBurrowが39.7と前者の方がいい数字を残している。EPA/Pはもっと一方的で、前者が+0.18となっているのに対しBurrowは-0.23と、明らかに足を引っ張っている。なぜ各種のスタッツでここまで差が出てきてしまったのだろうか。
 レーティングは説明しやすい。サックが含まれていないのが理由だ。Staffordはサック2回で13ヤードの喪失しかしていないのに対し、Burrowは7回43ヤードものロスを記録している。NY/Aで見ればStaffordが6.43なのに対してBurrowは5.50となっており、明らかにStaffordの方がいい成績だ。これがANY/Aだと逆転してしまうのは、Staffordが記録した2回のインターセプトの影響。ANY/Aの計算だとインターセプトは1回につき45ヤードの喪失と同じ扱いになることが響いている。
 だがEPA/PやEPAに基づいて計算しているQBRは、インターセプトに対して同じだけのペナルティを課すことはない。Staffordのインターセプトについて言うなら、第3Qの冒頭に自陣で喫したインターセプトは-4.9と大きなEPAの損失につながったが、前半の残り2分で敵陣43ヤードからエンドゾーンに投げ込んだインターセプトの方は-1.9の損失にとどまっている。第1QにBurrowが4th and 1で失敗したショートパスの方が、-3.7と倍近いマイナスを記録したプレイだった。
 Staffordがインターセプトで失ったEPAはトータル6.8。一方、サックで失ったEPAはStaffordが-4.0に対してBurrowは-12.3に達しており、両者の差(8.3)はStaffordのインターセプト関連のマイナスより大きい。ハイライトリールで流れるような場面だけならStaffordのやらかしの方が大きく見えるかもしれないが、実はもう少し地味な場面でBurrowの方が大きくやらかしていた、という状況が見えてくる。
 サックがBengalsの弱点であるということは、試合前に色々なところで指摘されていた。一例がFootball Outsidersの記事で、RamsのDL陣の強力なラッシュに対し、BengalsのOL陣のPBWRがいかに残念な数字であるかが説明されている。Burrowのラッシュ回避能力についても同じで、レギュラーシーズン中のBurrowのスクランブルのうち6割は失敗扱いされる数値だったそうだ。サックの多寡はOLの質よりQBのプレイ傾向に左右されると前に書いたことがあるが、Bengalsの場合はQBのプレイ傾向に加えてOLの質も悪い、という問題点を抱えていたそうだ。
 そしてその問題点はRamsにとって実に相性のいい組み合わせだった。Aaron Donaldという別次元の選手がいるうえに、シーズン中にはVon Miller(こちらもPRWRはそこそこ高い)をトレードで手に入れていた彼らは、この2人で4つのサックを積み上げた。さらにこの2年間にFAやドラフトで手に入れた選手たちが残る3つのサックを記録したことで、Bengalsのパスオフェンスにとって最大の弱点と思われる部分をきちんと突くことができたわけだ。
 一方、RamsのオフェンスはKuppの独り舞台だったと言える。彼はレシーブとランで合わせて12.7のEPA、つまり全得点の半分以上を生み出す貢献をしており、そりゃゲームMVPに選ばれても不思議はない。レギュラーシーズンに2000ヤード近い距離を稼ぎ出したうえに、プレイオフの4試合でも478ヤードと6つのTDを稼いだわけで、両方トータルのEPAは144.2と2番手であるVikingsのJefferson(86.7)をぶっちぎりで引き離しての圧倒的トップだ。すくなくともレシーブで見る限り今シーズンは最後までKuppのシーズンだった。一方、プレイオフに限れば絶好調(Kuppに次ぐEPA24.5)だったBeckhamはACLを断裂。色々と不幸な結果となった。
 Ramsにしてみれば未来がないかのような選手集めも、Staffordへの2つのドラ1投資もすべて報われ、3年前にあと一歩で取り逃したロンバルディトロフィ―が手に入ったのだから、見事なハッピーエンドということになりそう。NFLにとっても2チームを送り込んで何とか市場を開拓しようと試みているLAでのSuper Bowlで地元チームが勝てたのだから、文句はあるまい。Bengalsにとっては「3度目の正直でfavoriteのRams相手に2年目のQBで勝つ」というPatriotsと同じ道筋をたどれなかったことになるが、Burrowの将来自体は今のところは明るいと言える。

 Super Bowlの前にはいくつかの表彰も行われた。まずは2021シーズンのMVPだが、大方の予想通りRodgersがゲット。これで2年連続のMVPである。同じ選手が2年連続で受賞するのは2008~2009シーズンのPeyton Manning以来であり、これでRodgersはBradyらの3回受賞を抜き、Manningの5回に次ぐ4回目の受賞となった。30代後半になっての連続受賞は立派の一言だ。
 Rodgersといえばシーズン中にはCovid-19感染とワクチン非接種バレで試合に出られない場面もあったりしたし、おかげで色々と毀誉褒貶を呼んでもいたが、最後は成績でねじ伏せた格好。それにしてもMVPに何度も選ばれつつ、なかなか2度目の優勝に(どころかSuper Bowlにも)届かないあたりもPeyton Manningを思い起こさせる。MVP4回中3回はプレイオフでシード1位(残る1回は2位)になっているのに、それでも届かないのだから呪われているようにも見える
 Super Bowlの前にはHoFの選出もあった。正直、今年は文句なしというほどのインパクトには欠ける、微妙な選出が多い印象がある。特にHCとしてのキャリアで126勝114敗のVermeilが選ばれたのは、80勝64敗のJimmy Johnsonよりはマシとはいえ、例えばMarty Schottenheimer(200勝126敗1分)がまだ選ばれていない状態でVermeilがHoFerになるのはさすがにいかがなものだろうか。
 それでもここまではめでたい話であるだけマシ。次に紹介するのは残念なオフシーズン恒例イベントだ。KamaraがPro Bowlの後に逮捕された。有名RBのフィールド外トラブルなんてものは別に珍しくもないのだが、せめてSuper Bowlが終わるまで待てなかったものか。
 Floresによる訴訟関連の波紋もまだ収まっていない。特にDolphinsによるtanking疑惑は場合によってはかなり深刻になり得るようで、大本営には「他のオーナーたちの投票によってRossオーナーがチームを失う可能性もある」との記事まで載っている。実際にそこまで進む可能性は低いと思うが、自ら売却を強いられるという形で詰め腹を切らされるところまで考えればあり得なくはなさそうだ。
 tankingといえば以前にNBAで何度か聞いたことがあるが、最近は減りつつあるらしい。ドラフトの抽選方法を微妙に変えたほか、「プレーイン・トーナメント」という手法の導入によってシーズン終盤になっても緊張感のある試合が増えたそうだ。個人的にNFLのドラフトは上位指名でも外れが珍しくないため、そもそもtankingにあまりメリットがないと思っているのだが、オーナー側がメリットがあると考えているのなら、何らかの対処は必要かもしれない。
 一方、Floresの就職活動は予想通り実を結ばずに終わった。候補に残っていると言われていたTexansは、結局Lovie SmithをHCに採用。Paytonの辞任で席が空いていたSaintsも、DCのDennis Allenの昇格を決定。もちろん優勝が決まったRamsのO'Connellもこれで正式にVikingsのHCになるわけで、予想した通りFloresは職を失うことになりそうだ。
 なおFloresは今回のTexansの決定を受け、訴訟の相手にTexansも含めたとの報道も出てきている。正直言ってTexansの場合、代わりに雇ったSmithも黒人のため、Floresの主張がどこまで成立するかは不明。個人的にはHCは無理でもどこかDCとして彼を雇ってみてもいいような気がするが、Watson同様に彼も法的問題が解決するまで手を触れてはいけない存在になりつつあるのかもしれない。実に残念な流れになっている。
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